第3話
「つ、ついに生まれた…。」
子竜はもぞもぞと動いている。
「あれ?確か卵の動物って1番最初に見たモノを親と思うんだっけ?」
あいまいな記憶だったが、だとしたら俺は親だ。
「竜でもそうなのかなぁ…?」
ま、いいや。
「よし、生まれて来たってことはやることはただ1つ。」
そう、名前決めだ。
「どうしようかなぁ~?」
俺は頭を悩ませる。
「なにかカッコいい名前…。クーと鳴いたからなぁ~。ク~…ケ~…コ~…。」
ネーミングセンスもないのか俺は…。
「ク、は固定か?だとしたら…。」
俺の頭には1つの案が浮かんだ。
「クオン。お前の名前はクオンだ。長生きできるようにな。」
我ながら渋い理由だったが、まぁよしとしよう。
「よし、次は…。」
そうだ、エサだ。
「こいつ何食うんだぁ~?まったく分からん。どうしよう。」
最初っから固形は食えないだろうし…。かといって牛乳もよしなのか分からん。
「まさか魔力とか言わないでくれよぉ~…。」
とりあえず、イチかバチかで俺は牛乳をあげてみることにした。
テキトーに皿を見繕ってきてそれに牛乳をあけた。
「さて、飲むかな?」
しばらく皿をクオンの前に置いてみたところ、どうやら興味を示したようだ。
「さ~、飲め~。それは飲み物だぞ~。」
言葉がわかるか知らんが、俺は牛乳を飲むようにしむける。すると
ぺろっ
クオンが牛乳に舌を付けた。
「おぉ~…。で?どうなんだ?うまいのか?」
どうやら気に入ったようだ。その後もクオンは牛乳を飲み続けた。
そしてしばらくして、皿は空になった。
「大丈夫かな…。お腹壊さんだろうか…。」
その後も経過をよく観察してみた。
2,3時間たったが具合が悪くなった様子は見えない。
「よかったぁ~。」
さすが竜、お腹も強い。
そういえば竜って、ある程度大きくなったら人間に擬態できるんじゃなかったっけ?
どんな感じになるのかなぁ~?
「フフフ…。」
期待が高まる。
さて、俺も何か食うかな。
俺はまたしてもテキトーにパンやなんかを持ってきて食べた。
俺はパンをきぎって食べる。
するとクオンが羽をバサッと広げて俺の方に飛んできた。子竜と言っても羽を広げると結構デカい。
「うわー!」
俺はびっくりして目を閉じ身をかがめる。
俺が目を開けるとそこにはパンを食うクオンの姿があった。
「嘘だろ…、もう固形食えるのかい?ていうか飛べるんかいっ!?」
竜の成長というものはとても速いんだなぁ…。俺はしみじみ思った。
「お前、このままいくと明日にはどうなっているんだ?ひょっとして、しゃべりだしてるんじゃないか?」
まさかな、と思いつつパンをむさぼるクオンを眺めていたのだった。
あと、とりあえずいつしゃべってもいいように名前だけは教えておいた。