第1話
「何だって?魔力がない?」
「本当にあの人の子供か?」
そんなことばかり言われて育ってきた。
俺の名前はショウ。
「あぁ~あ…、なんか面白いことないかなぁ~。」
俺は今日も散歩に出る。
俺の父親は勇者だ。なんでも転生っていうのをしてきたらしい。ものすごく強いんだ。
それに引き替え俺は、全然強くない。ていうかそれ以前の問題だ。
俺には、魔力がない。
そんな俺は戦いからは早々に手を引いた。そして今日も散歩をしている。そんな怠惰な毎日だ。
「さて、今日も何もなし。…帰るか。」
俺はいつものように空しく帰路に着こうとした。
バサッ…バサッ…
どこからか大きな羽音のような音が聞こえてきた。
「…な、なんだ…?」
俺は辺りを見回す。すると頭上に大きな影を発見した。
「なんだ…あれ!?」
その影は俺めがけて落ちてくる。そして
ズシャーーーー…!!!
それは俺の前に振ってきた。
「う、うわー!!…これは…?」
俺の目の前に落ちてきたのは、紛れもない。竜だった。俺の目の前に1体の大きなドラゴンが現れた。
「あれ…?この竜…」
よく見たら、傷だらけだった。それは今にも息絶えそうな様子だった。
そして次の瞬間。竜は炎を上げて燃えて消えていった。
竜の最期とはこういうものなのか…。俺は今日、人生で初めてのレアな体験をした。
こんなこともあるのか…、俺はしばらく呆然としていた。
しばらくして、炎が弱まってきた。
さて、そろそろ帰るか。何か終わりを感じて踵を返そうとしたとき、俺は焼け焦げた竜の墓場の中心に何かを感じた。
「ん…?」
そこには、1つの卵があった。
「卵…?ど、どうしよう、これ。持って帰る…のか?」
でもここに置いて行ってもこの卵は孵ることはないだろう。
「し、しょうがない…か。」
俺はその卵を持って帰ることにした。
「結構重いな…。大きいし。でも何とか持ってけるか。」
俺は卵を落とさないように慎重に両手で抱えて持って歩く。
しばらく歩いて、俺は家にたどり着いた。
「はぁ~…母さんになんて言おうか…。こんなでっかい卵…。とりあえず、正直に言うか。」
それが生き物を拾ってきた子供のさだめだ。
俺は意を決して家に入る。
「ただいま~…。帰ったよ~…。」
「あら、おかえりなさい。って、どうしたのそれ!?」
案の定の反応だった。
「こ、これには色々と訳が…」
「お父さんに話します。」
俺が言い終わる前にさえぎられてしまった。
しばらくして父が帰ってきた。
かくかくしかじか、と母が父に伝える。しばらく考えた父は
「いいだろう。最後まで面倒見るんだぞ。」
はっはっは、と父は笑って言った。
いいんですか?と母。しかし父が言った以上、それは決定のようだった。
こうして、俺と卵の生活が始まった。