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小さき蹄、大きな約束  作者: sakura540
第2章 新たな蹄音
21/62

21話目 優駿

よろしくお願いします。

西日本クラシックのレース後、リトルボスは一度、園田近郊へ短期放牧に出された。


園田三冠を目指す上で、西日本クラシックから兵庫優駿までの約二ヶ月は空きすぎる。そこで関係者は、この若駒に無理をさせず、成長を促す調整期間を設けたのだった。


(またここに来たな。…今はキングアサゴのおっさんはいないな、あとはシケた馬しかいないか。前回はまだちょっかいかけてきた馬はいたが今回はなし、か。てか避けられてるのかな?妙な距離感を感じるぞ。)


放牧中も話し相手もなく、1人で走ったり立ち上がったりして日々を過ごした。



そして6月になり園田へ戻ってきた。


「お、今回は戻ってきた時の目が違うな。体もちょうど絞れるくらいな感じだし。いい感じだな。」


厩務員の中村は、リトルボスの鬣を撫でながらぼそりと呟いた。


「もうただの挑戦じゃないって事をコロの奴は分かってるんだろな。これは絶対に三冠を獲りにきてる目だ。」


調教も順調。飼い葉も食べる。脚元も問題なし。



迎えた7月1週目木曜、ついに決戦の時がやってきた。


「夏の日差しが照りつける園田競馬場! 本日は兵庫優駿!ダート1870m、 園田三冠・最終戦でございます!」


関西ローカルの競馬中継が、夕暮れに差しかかる競馬場を映し出す。


「実況は私、林健一。そして解説は…競馬YouTuberでもお馴染み、リトルボスの馬主で元プロ野球の阪神の選手で野球解説者の新城高志さん!」


「どーも! いやあ緊張しますね今日は。うちのボスが勝てば、ついに三冠なんですよ」


「単勝1.1倍! 圧倒的支持を集めております、リトルボス!」


「ええ、リトルボスに100万円賭けましたし、ここで負けたら馬主も競馬も引退ですわ、ほんま(笑)」



リトルボスは、返し馬でも軽快だった。猛暑の中でも馬体重430キロを維持し、皮膚はピカピカに張っている。


パドックでは「三冠確定」と書かれた手作りうちわを振るファンの姿もあった。



出走馬(12頭立て)

1番リトルボス(兵庫)…三冠が懸かる主役。1番人気(単勝1.1倍)


2番サイレンスパルク(高知)…高知No.1スピード。3番人気(20.1倍)


3番オオサガダイオー(佐賀)…パワー全開の巨漢馬。4番人気(22.4倍)


4番ウィンドターボ(兵庫)…逃げ脚冴える姫路の風。8番人気(60.6倍)


5番キンモクセイ(名古屋)…地味ながら堅実な末脚。5番人気(37.9倍)


6番アドラステイア(船橋)…南関からの刺客。2番人気(13.1倍)


7番マジェスティーン(金沢)…北陸の大器。7番人気(42.5倍)


8番タガノメビウス(兵庫)…菊水賞6着、復活狙う。9番人気(63.7倍)


9番ブルーバロン(兵庫)…デビュー後連敗続きだが2連勝でのし上がった新星。6番人気(38.3倍)


10番メイショウヒエン(兵庫)…地元一筋の玄人好み。10番人気(65.4倍)


11番サザンランナー(佐賀)…再挑戦。成長見せたい。11番人気(81.0倍)


12番ゴールデンセント(名古屋)…遠征巧者。12番人気(96.1倍)



「ゲート入り順調、全馬枠入り完了…スタートしました!」


リトルボスはやや後手を踏んだ。


ダートに足をとられたのか一瞬滑ったようにも見えた。


(菊水賞の時ほどではないがまた出鼻をくじかれたか、ひろみのバランスもそこまで崩してない、か。これならなんとかなる、かな?)



「4番ウィンドターボ、素晴らしいスタート!そのままハナをとります。おっと!1番 リトルボス、少し出遅れたぁー!」


だが、慌てる様子もなく体勢をすぐ立て直し、中団よりやや後方に位置を取る。


伊藤ひろみ騎手も慌てていなかった。


前ではウィンドターボが大逃げを敢行。


サイレンスパルクとオオサガダイオーがぴったり追走。アドラステイアはその直後。


「前が飛ばす中、1番リトルボスは最後方から2番手…! だが手応えは抜群!」



4コーナー手前、リトルボスが外に持ち出された時、観客席がざわめいた。


「うそ…あの位置から届くのか?」


「いや、ボスならいける…!」


「先頭は4番ウィンドターボ、外から2番サイレンスパルク、6番アドラステイア!


いや来たぁー! 一気に1番リトルボスが襲いかかるぅ!」


全身がバネの塊のように弾けた。前の馬たちが止まって見える。


「残り100! まとめて差し切ったぁー!!1番 リトルボス! 三冠達成ぃぃ!」



「1着、1番リトルボス!


2着、6番アドラステイア!アタマ差で惜しくも2着。


少し離れて3着からは団子状態。


3着、3番オオサガダイオー!


4着、2番サイレンスパルク!


5着、5番キンモクセイ!」


スタンドから大きな拍手と歓声が湧き上がる。



「ボスーっ!!」「ありがとう!」「三冠だああああ!」


伊藤騎手は静かに、リトルボスの首筋を叩いた。


「やったね。君こそ、最高のパートナーだよ」


(おう、こちらこそ最高のパートナーだと思うぞ。…園田三冠か。前世で長年騎手やっててもそんな成績出したことないぞ?なんかしっくりこないがまぁいいか。)



夕陽が、三冠馬の馬体を黄金色に染めていた。

次話から第3章です。6/14 0時投稿予定。

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