13話目 園田の新星
よろしくお願いします。
秋風がそよぐ中、園田競馬場は朝から熱気に包まれていた。
10月第2週木曜16時15分。ダート1400m戦、第3回ネクストスター園田。
2歳馬の重賞タイトルを懸けた一戦に、リトルボスが挑もうとしていた。
馬体重は422kg(-1)。小柄だが締まった馬体には疲れを感じさせない。
9頭立て4番人気。
鞍上に伊藤騎手、斤量55kg(減量特典なし)。
この日はエネルタイガーの姿はないが、各地で勝ち上がってきた実力馬が揃う。
パドックでは馬たちの張り詰めた気迫に、いつもとは違う緊張感が漂っていた。
リトルボスの小さな体はやや軽視され、専門紙でも扱いは大きくなかった。
(はぁ……。今日は早そうな馬ばっかだな、威嚇し返してもそこまでカッカしてないし。うーん、まだ俺は2歳だし今日はチャンスがあればでいいかな。)
「……面構えが違う、か。さすがに今までより強い馬ばかりだ。」
鈴木調教師の目が光る。
伊藤ひろみ騎手は、経験の少ない2歳重賞の大舞台に、緊張の面持ちを隠しきれない。
「ひろみ。今日は“前目”で勝負しよう。馬の力に甘えるな、君の手で前に出すんだ。」
「……はい。やってみます。」
そして本馬場入場。観客の拍手と歓声に包まれながら、リトルボスは小さな蹄で重賞の舞台へ歩み出す。
ゲートイン完了……スタート!
「第3回ネクストスター園田、今ゲートが開いた!好スタートは内の2番、外からは5番も前へ!」
「4番人気のリトルボス、やや控えめのスタートだが、騎手が促して前へ出していく!」
伊藤ひろみは腕に力を込め、リトルボスを中団のやや前へ押し上げていく。
(え?今日は最初から前に行くの?勝負をかける気か。おい、鞭早いって。分かったから、行くから。)
普段は控えるこの馬が加速、今日はいつもと違う前方へ。
「リトルボス、中団5番手あたり!小さな体で懸命に食らいつく!前はハイペースだ!」
3コーナーから4コーナーへ――
「さあ、馬群が一団となって第4コーナーを回る!前は3番、1番、外から4番が並びかける!」
「そして外から一気に来た!リトルボスだ!内を突かず、大外を回して直線に向いた!」
「直線残り200!先頭はまだ3番だが、外からリトルボスが差を詰める!差が縮まる!」
「残り100メートル!並んだ!抜いた!リトルボス先頭だ!」
ゴールイン!
「勝ったのは……リトルボス!小柄な2歳馬が、堂々の重賞制覇です!」
レース後、スタンドにいる者たちは興奮を隠せなかった。
関係者席で鈴木調教師がうなずく。
「よく走ったな。ひょっとしたら、“持ってる馬”かもな。」
(うーん、重賞レースだと思って少し諦めてたがあいつと比べるとそこまで強い馬はいなかったな。真面目に走ってよかったぜ。)
「確かにあの小ささで2歳重賞を勝ちましたから強い馬なのでしょう。それに賢さもありますし2歳馬と思えないくらい冷静にレース運びをしてますが、これからはそう上手くはいかないかと。」
「ん?……まぁ言いたいことも分かる。今はまだ周りの馬も幼い分助かってはいるが、年齢が上がってくるとこういうレースはし辛くなってくる。今の評価としてはこれから園田で重賞戦線で賞金を稼ぐには持ってこいの馬程度だろうな。」
(おいおい、……妥当な評価ではあるが俺に対してする評価ではないって事をこれから見せてやる!)
そうつぶやく鈴木調教師と岡田調教助手。岡田もリトルボスがこのレースを勝てるとは思ってなかったし、今後もそれなりにしか勝てるとは思っていなかった。
それでもこの勝利でリトルボスは地方競馬の初の重賞タイトルを手にし、
その名は、園田の新星としてそれなりの注目を浴びることとなる。
そして兵庫三冠レースへ、関係者のみならずコアな園田の競馬ファンも期待を寄せるのであった。
次走は未定ながら、今回のレースでの疲労の度合いと体の成長に期待する関係者の間では「少し休ませよう」との声が上がっていた。
2歳の秋。リトルボスは確かに“園田の希望”となった。
なお、馬主の新城はプロ野球の解説のためこの日は北海道に。
仕事の後、リトルボスのレースを動画で見、1着をとったのでそのお祝いの動画をyoutubeにあげるのであった。
「中央ではなく園田の2歳重賞ですが、なんとリトルボスが制覇しました!残念ながら私は今日、北海道で仕事でしたので園田に行けなくてレースを見てません。結果だけ鈴木調教師から連絡あったのみです。ですので、今からリトルボスの今日のレースを一緒に見てみましょう。……いけ、差せ、差せ!……いよおおおおっしゃぁぁぁ~!1着でゴール!……はい、すいません。少しはしゃぎすぎましたね。やはりリトルボスが1着でゴールすると思わず叫んじゃいます。今日は結構前目の競馬でした。多分あれは作戦かな?……えー、たくさんコメントありがとうございます。次走は?という質問が多いなぁ。まだ鈴木調教師とは話出来てませんが、年内にもう1レース走るかと思います。詳細は次回、では今日はここまで。」




