表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/17

5話:鼻風船なタコ

 暗い。視界に映るは深黒、ただただ黒一色。


「これがサリアの【影 空 間(シャドウ・ルーム)】か」


「そーそー! 眠るにはぴったりでしょっ?」


 ふむ。確かにこれなら安全は確保できるが、投獄された当初を思い出すな。それに、


『きゅぅぅぅ。 きゅぅっ、きゅぅっ』


 丸っこが鼻をすんすん鳴らしてワシを探しとる。


「すまんサリア、いったん地上に戻してくれるか?」


「おっけー!」


 ワシが足元にすり寄ってきた丸っこを手のひらですくいあげると同時、日光きらめく泉のほとりに景色が戻った。



 冷たい。



 頬をふくらましたミルフィーネの尻尾だ。しぶきを飛ばしてきた。


「どこいってたのよ! もう! びっくりしたじゃないの!」


「ごめんごめんっ、そりまちさんをびっくりさせよーと思って」


「むっ? それはすまんかったな、たいしてリアクションもとれんかったわい」


 ぶるるるるっ、と針についた水を飛ばす丸っこを見ながら、ワシがから返事で謝罪すると、


「うん、とゆーかぶっちゃけね、あたしら吸血人族の魔法は水の中だと効果ないの忘れてたっ!」


「それならしょーがないわね」


 頬をかいたあと、たいして悪びれた様子もなく告白するサリアを、なでるミルフィーネ。


 しょーがないのか?いやいいけどよ。


「それで、そこは暮らせそうだったの?そりまちさん」


「サリアには悪いが厳しいな。 あれほどの暗所では丸っこが耐えきれぬだろう。 そもそも魔力は持つのか?」


 ワシがちらっと視線を向けると、ギクッ、サリアの骨が鳴る。さっきまで顔を見ていたとはいえ、表情豊かなガイコツだ。無理を通すつもりだったのが丸わかりだ。


「よ、夜のあいだくらいなら問題ないよっ! 大きな影を探せば仲間が増えてもだいじょーぶだし!」


「それじゃお前が休まる暇がないだろうが」


 まったく、ワシに恩を感じてくれとるのだろうが無理して倒れたら元も子もないだろう。


「拠点についてはワシも地下牢から輸送される馬車の中で考えとった案がある」


「手作りログハウス?」


「いや、魔物の巣をいただこうと思う」


 ログハウスとかよく知っとるなサリア。


「のっとるのね?」


 わくわくした顔を向けるなミルフィーネ。


「あくまで自我意識に目覚めさせたうえで、了承を得てだ。 人魔の森は樹海のように広い。 探せばワシらの住みよい形の巣もあるだろうからな」


「なーんだ。 のっとらないのね」


 思考が凶暴な人魚だ。何を求めとるのだよ刺激か?


「あっ! それならあたし近くでいいの見たかもっ!」


「いいの?」


「地面にね、ぐるぐる渦が巻いてるような穴があったよっ! あれって魔物の巣穴じゃないかな?」


「ほう。 それは幸先がいいな」

 

 作者は覚えてないが、地下牢で読んだ冒険譚に一致する特徴があった。

 ちょーど干し肉もまだあるし、拠点探しは楽に済みそうだ。


「ナイスだサリア、やるじゃないか」


「えへへっ、あたしもちょっとは役に立たないとねっ!」


 気にするな、といいたいが余計気を揉むだろうからワシはにこり。「うさんくさいよその顔?」「うっせい」


 シャバに出たその日に美女のガイコツをフォローするワシの身にもなってみろ、これでも精一杯の笑顔なんだよッ。


「もう、すぐにいくの?」


 ワシとサリアが盛り上がるなか、ミルフィーネの顔が曇った。陸と水中、仲間はずれは好かんが、種族の壁だけはどーにもならん。


「日が高い、夜が来るのはあっというまだ。 それまでに寝床を確保せんとな。 すまん」


「すぐ近くだから! すぐ戻ってくるよっ!」


「いえ、ごめんなさい、いいの。 あなたたちはあなたたちのやるべきことがあるものね」


 挙手するサリアにミルフィーネはまぶたを細めて首をふる。


「いってらっしゃいなさいな。 気をつけるのよ」


「明日! 明日も必ず来るから! あたし、明日も会いたいよっ!」


「私もよ。 そうね。 明日の朝、私が美味しいものいっぱいもってくるから、楽しみにしてなさい!」


「わかった! 待ってるねっ」


「そりまちさん、サリアをよろしくね。 じゃ、バイバーイ」


 どぼんっ、ワシが返事をするまもなく宙で体を反転させ、七色のウロコをきらめかせながら泉の奥に帰って行くミルフィーネ。

 

 よろしくか、この短時間で姉妹のように懐いたもんだ。


「それじゃサリア、案内してくれるか?」


「うん! こっちこっち!」


 ワシは皮袋と直刀を腰にたずさえ、丸っこを肩に乗せてサリアと歩く。むっ?そういえば。

 皮袋をのぞく。ゆらゆらと鼻風船を膨らますフライオクトのフラフラ。



 どんだけ寝ぼすけだよこいつッ。




【後書き】


 おもしろそう、続きが気になると思っていただけましたら、

 ブックマークへの追加、下部の星マークより評価、

 をどうかよろしくお願いします。活力をいただけます。


 なにとぞよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ