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名作に成れなかった物語  作者: 翠野 奏
8/8

八万年に一度の告白

「好きだ」

今まで生きてきて17年にして初めて俺に送られた愛の言葉は、まさに純愛を示す魔法だった。

○○○

階段を駆け上がり、科学室の教室へと向かう。そこは科学部の活動教室だ。だが、今は部員はたったの二人ということで廃部が決まっており、それなら好きなことをしようということで無法地帯なのが現状である。

そして今日は廃部の1日前、最後の活動日である。そんなことはどうでも良いが、廃部したあとは何をしようかとか考えながら扉を開ける。中に1人だけ、小柄な女子生徒が机の上に座っていた。

こう見えて俺の先輩である。

「やぁ、遅かったね。では、いこうか」

○○○

そう言われて早2時間、俺達二人は山奥にいる。めっちゃ寒い。

「君、今日は何月の何日だね?」

先輩が俺に尋ねた。俺は咄嗟にスマホを開き、今日が9月28日であることを伝えた。

「では、今日は何の日かね?」

そう言われると言葉が出てこない。今日は祝日でも2人の誕生日でも世界最後の日でもない。謎だけが頭の中を駆け巡る。

「まあいいか。もう少し待てばそれもわかるさ」

先輩がそういうと、夜空が少しだけ明るくなった。いや、何かが空の中を駆けていた。光だ。一つだけ、流星群から情けなく迷子になってしまったような、それでも力強いような、とても綺麗な光。

「アトラス星雲」

先輩はそれを眺めながら言った。

「星雲と太陽が近くなることで星雲が地球からでも見える時があるんだ。アトラス星雲もその中の一つ。だが、こいつらは短所がある。地球から見える期間が少ないことだ。アトラス星雲の場合は、」

先輩はいつの間にか俺を見つめていた。目と目が合って少し恥ずかしい。

「アトラス星雲の場合は、八万年に一度だ。八万年に一度だから、私はこの日をなにか特別なものにしたくてね。わざわざ君を連れてまでここに来たわけだ」

なるほど。この綺麗さだと確かに八万年の価値はある。

「というわけで後輩の助手君」

先輩は頬を少し赤らめさせ、笑顔で言った。

「好きだ」

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