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名作に成れなかった物語  作者: 翠野 奏
6/8

暗殺者の心得

ーーーーこの国は最高に汚い。


この俺が綺麗に見えてしまう程に。


韓国の明洞。観光客が年中無休で殺到しており韓国一の繁華街と言っても申し分ないほどの都会である。


ブクブク太りそうな程に美味しい食べ物、無駄に明るくて吐き気さえおぼえる照明、多様性を完全無視したかのように並んでいる同じデザインの服。


初めてきた時にはつい地獄と勘違いしてしまったもんだ。


ま、本当の地獄とは比べ物にならなかったけどな。


つまり何がいいたいかと言うと、


こんな街中で俺みたいなクソ野郎に手を差し伸べる奴なんかいないというわけだ。


どんなことにも興味深いお前を除けば、の話だが。


あの日、明洞をふらふらと一人で歩いていた日、俺は一つのポスターが目に入った。


『暗殺者募集中』


初めて見た時は誰かのいたずらだと思ったさ。


年中無休の繁華街、それだけですぐに理由がつく。


だがどうしてか、当時の俺はそれを信じてしまったんだ。


すぐさまポスターに書いてあった電話番号に電話をかけた。


…..え?どうしてそんな物騒なところに自分から入ったかって?


そりゃあ.....今の俺を見りゃわかるだろ。


全て失ったんだよ。なにもかも。


そして運が良かったのか悪かったのか、電話が繋がっちまって、まずは面接だとかいって何個かの質問を迫られた。


最初は自分の名前だとか、この仕事を希望した理由とか、そんな普通のことばっかり聞いてきたが、異変に気付いたのはその後だったな。


秘密をちゃんと守れるか、万が一秘密を少しでも晒してしまったら消される覚悟はあるか、それ以前に死ぬ覚悟はあるか。


命ってのは相当重かったそうだな。


そこで俺は思っちまったんだ。ここで一般回答をしてしまったらもう希望がなくなってしまうと。


ほら、サイコパス診断だっけな?あれも診断と言うよりかはサイコパスの回答当てましょうねクイズって言う方がなんだかしっくりこねえか?......こねえか。


話を戻して、俺はできるだけ頭のイカれた回答を目指したんだ。


多分、そこで間違えてしまったのだろうな。


さっき言った「死ぬ覚悟はあるか」とか言う質問に対して俺は、


「死ぬ覚悟?悪いがもう死んでるんだ。覚悟もクソもないね」


と回答したんだ。本当に馬鹿だったよ。


だが、面接には合格した。それと共に早速コードネームまで言い渡されたよ。


コードネームは『テキーラ』。どうして下戸な俺にそんなコードネームがつくかは甚だ疑問だが。


それで満を持しての初任務がこの有様だ。まさか支給された武器が全然使い物にならなかったとはな。


え?ちゃんと機能はしていた?単なる相性の問題?ははっ、本当にそうだとしたら俺の運はもう使い切ってなくなっていたんだな。


そーいやアンタ、タバコは持っていたりするか?最後に一服を最大限に味わいたいんだ。


おっ、あるそうだな。お気に入りの銘柄ではないがまあ贅沢はできないか。


んじゃ、俺という尊くもない命の旅立ちに、


乾杯。


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