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名作に成れなかった物語  作者: 翠野 奏
1/8

未来切符

「痛.....」

何も無いところでつまずくなんて実に何年ぶりだろうか。

しかも何も無いところでだったら初めてかもしれない。正直恥ずかしい。

目撃者がいないのが唯一の救いと考えよう。

「なんだこれ?」

ここで私は私が転んだついその後ろに落ちていた切符の存在に気づき、それを拾った。

ここまで自然に不自然なものが落ちていると、誰かが私の為に落としたものではないかとも思ってしまう。

だってそうそうないじゃないか。

行き先が『未来』って書いてある切符なんて。

駅でも村でも場所でさえない。時間を表している『未来』。

いや、きっと『未来駅』とか『未来村』とかそういう地域があるのだろう。

誰かがうっかりこの切符を落としてしまって、そのまま気づかず去ってしまった。

これで話は十分理解できる。

なら落としてしまった人がまたここに来る可能性が高い。

そのままそっとしておくのが吉だろう。

そうして私は『未来』と行き先に書かれた切符をあとにし、学校へ向かった。


また転んだ。

「痛....」

何も無いところでつまずくなんて実に何分ぶりだろうか。

いや2分前のことだから感激することは無いが。

またもや目撃者はいなかった。運が良いのか悪いのか。

だが今回は何かが変だ。

何も無い筈なのに、何かに足を掴まれたような気がして、それによって転んだような気がした。

意思のある石にでも遭遇したのだろうか。

因みに『意思』と『石』でかけてみたけどどうだろう?

どうにもならないか。

ここで私は私の足元を見た。切符が落ちていた。

行き先は『未来』。

このことをデジャヴュと私たち人類は言っている。

やはり誰かが私のために落としているのだろうか?

けど誰が?どうやって私の通学路に?

考えれば考えるほどわからないことが増えていく。

とりあえず、さっきと同じように誰かの落とし物ということにしてその切符をそのままそっとして、再度学校へ向かった。


またまた転んだ。

「痛...」

何も無いところでつまずくなんて実に何秒ぶりだろうか。

そろそろ私の足も限界を迎え始めている。

やはり目撃者はいなかった。もはや必然である。

ここで私は下を向いた。そこにはやはり切符が落ちてあった。

行き先は『未来』だ。

さっきより近いところに落ちている気がする。

おかしい。

一日に同じことが三回も、そして原因も同じ。

エンドレス・ザ・切符。開放されるにはどうすれば良い?

私は切符を拾った。

そしてそれをビリビリに破ろうとした。失敗した。

いや破ることはできたんだ。

切符を車掌さんが切るように、綺麗に。

二分割することができた。

その瞬間、あたりが真っ白になった。

近くにあった自販機も、動こうとしない電柱も全て消え、残ったのは目の前に現れたデジタルテレビだけだった。

デジタルテレビが勝手に点灯し始めた。

そこに映ったのはーーーーーー切符を拾った私だった。

切符をそこに置いて、三歩歩いた先で転んで動かなくなった。


そこからの記憶は正直曖昧。

変わったことがあるならば、二つ。

行き先が『未来』の切符が消えたということ。

そして行き先が『過去』の切符に出会ったことだ。



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