出会いと人生の分かれ目 遠征(4)
「よし、もう行方不明者はいない。今日は休みだ、ケントロンの町にでも行こう」
「「やったー!」」「「「「「稽古つけて下さい!」」」」」
「えー、なんでよー、いいじゃん今日は遊ぼうよー」
ナナが、駄々をこねる。モモも同意だ。
「セド、ミラン、せっかく遠征に来てるんだぞ。旅をしたかったんだろう?」
「モモ、町でおいしいもの食べたい」
「そうですね、セド、せっかくですので行きましょう」
「わかった、町の散策は旅の醍醐味だな」
「ロック、夕方の稽古は付けてくれる?」
「ああ、いいぞ」
「それなら行く!」「僕も!」「俺も!」
「よし、露店では口座カードは使えないから小遣いを渡すぞ。1人銅貨3枚だ」
「「「やったー、ありがとう!」」」
「ありがとう!セド、楽しみましょう」
「おい、ミラン・・・いや、ありがとう!」
『67』一行は、クログレモス領ケントロンの町に繰り出しいた。
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『冒険者ありがとうセール』『今だけ限定!冒険者パンケーキ』
町はクレイロックドラゴンの数が激減した事と、行方不明者が救出されたという話題で持ち切りで、それを色々な店が商魂たくましく商売に生かしていた。
めずらしい露店も沢山出ている。
「人出が多いからな、はぐれた時の集合場所を決めよう」
「ロック!あそこはどう?あの時計台!」
「そうだな、コウ。あそこにしよう。はぐれたらあの時計台の前の広場に集合だ」
「「「「「はい!」」」」」
「ロック、ナナちゃん、俺達、孤児院の仲間にお土産買いたい」
「わかった、まず露店を見るか。端から順に見ていくか」
「モモ、お肉の屋台に行きたい(小声)」
「順番に回ろう。みんな寄りたい所は遠慮せず言ってね!」
皆で1店ずつ露店を見て回る。
ユーリが、貝細工を使った髪飾りの店で足を止めた。
ユーリは、コンク貝と白蝶貝でステンドグラスのように薔薇を模った髪留めを手に取る。
「マリーちゃんに似合いそうだね(小声)」
「突然プレゼントしたら変かな(小声)」
「変じゃないよ。喜ぶよ(小声)」ナナが背中を押す。
「すっ、すみません!これ下さい!プ、プレゼントなので包んで下さい」
「お!彼女へのプレゼントかい?」
「ま、まだ彼女じゃ」
「初々しいねぇ、はいよ!まいどあり!」
「ユーリには、思い合う女性がいるのか?」
歩きながら、セドがさらりと突っ込んだことを聞く。
「セドっ、お、思いあって、る、かどうかは・・・」
ユーリの顔が真っ赤だ。
「良いな。私にもいつか出会いがあるかな」
セドは遠い目をする。王子様は色々大変なのかもしれない。
『67』一行は、時々店を覗きながら露店が長く並ぶ道をそぞろ歩く。
「ロックさん!ナナさん!」
呼びかけられた方向を見ると、ダナさんとフォックスさんが手を振っていた。
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ロックとナナは、ダナさんとフォックスさんと一緒にカフェに入っていた。
弟子ブラザーズとモモは露店を楽しむために別行動だ。
「ジョンとリチャードが一度マリンナに戻りたいと言うから、全員の傷が癒えたら俺達マリンナに向かう事になったんだ」
「私は、一度『アマリリス』の拠点に戻って、『竜山の頂』に合流しようと思うの」
「わあ!それならマリンナで会えるかもしれませんね!」
「マリンナに着いたら、ナナさんに連絡をしてもいいかしら」
「もちろんですよ!ぜひ連絡ください」
「それでな、マリンナに『竜山の頂』の拠点を持とうと思うんだ」
「『竜山の頂』は王都とケントロンが拠点だろ?マリンナにも拠点を置くのか?」
「ケントロンは俺とメルビンの故郷なんだ。ジョンとリチャードの故郷にも拠点を置こうと思ってさ」
「維持が大変なんじゃないか?」
「王都の拠点は維持に金がかかるけど、他は誰かの身内の空き家なんだ。ケントロンはメルビンの亡くなった爺ちゃん家だし、マリンナの拠点候補はリチャードの実家に引き取られた婆ちゃん家だ」
「それは、家賃がいらなくていいな。町の雰囲気も分かってるし、情報も集めやすそうだ」
「それに、マリンナにはベン彫金工房があるしな」
「ベン親方のお知り合いなんですか?」
「知り合いと言うか、無理言って顧客の一人にしてもらったんだ」
『竜山の頂』は、ベン親方のお客様だった。世間って狭い。
「それなら、そのうち私のお客さんにもなるかもしれないですね」
「ナナさんのお客に?」
「俺達、アトリエ・ロクナナっていう工房をやってるんだ。ベン彫金工房の専属工房なんですよ」
「アトリエ・ロクナナ?!今話題の工房じゃないか!・・・あ、そうか『67』か!」
「ふふふ、そうです」
「今、王都の若手冒険者にマリンナは人気なんだよ。マリンナで修行して武器を仕立てて王都に戻って来ようと考えてる奴も多い」
「へー、そうなんですね。最近ギルドに人が増えたなって思ってたんですよねー」
「ハハハ、そうなってる原因が呑気なもんだな」
「直接関係ないですもん。私達は自分たちの周りの事で手一杯ですし」
「ナナさんって、肩の力が抜けてて、自由で、ゆるーい雰囲気がいいですね」
「ちょっとー、ダナさん、それって褒めてます?」
「褒めてますよ。うらやましい。私も自由になりたいわ」
「あはは、ありがとう。自由になれますよ。自分次第です」
「そうね、自分次第、よね」
「そうですよ」
「自分次第」そう言ったダナさんの顔は、とても晴れやかだった。
そんなダナさんを、フォックスさんがやさしく見つめていた。




