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出会いと人生の分かれ目 遠征(3)

「ユーリ、セド、ミラン、今回の報酬は、お前達にも分ける。パーティ維持費に1割もらうが、後は頭割りで等分だ」


「「「等分?!」」」


「ナナちゃんとロックの負担が大きいのに、等分はダメだよ!」


「そうだ、私はトドメを刺しただけだ、そんなにもらえない」


「ありがとうございます。セド、よかったですね」


「ミラン、お前・・・それはダメだろう」


「ダメだ。パーティメンバーは等分だ。金で揉めるのが一番面倒くさいから、『67』では分配は等分一択だ。それ以外は認めん」


「そうだよ、みんな独立するんでしょう?お金は大事だよ。ちゃんと貯めておきなよ」


「それから、明日から行方不明者の捜索にウエイトを置く。各パーティ低く見積もっても4~6頭くらい倒してるだろうから、今日で『クレイロックドラゴン』は50頭以下になってるはずだ」


「「「はい!」」」


「基本は今日と同じだが、意識して地図のチェックをして、行方不明者の捜索をしながら移動する」


「「「はい!」」」


「明日あらかた殲滅できたら、ジルの観察眼とナナの地図で捜索する。モモも協力してくれ」


「わかった!」「了解」「はーい」



魔法をぶっ放しまくったナナは、今日はもうヘトヘトだ。お風呂に入ったら耐え難い眠気が襲う。

ラグで転寝していたナナは、ロックに抱えられながらベッドに向かうのだった。




▽△▽△▽△▽△▽△



セドとミランは、ベッドに横になりながら小声で話す。


「セド、私達、すごい出会いをしたのかもしれません」


「ミラン、早めに王籍離脱の手続きを終わらせて、このまま修行させてもらおう。1年じゃ全部学べない」


「そうですね。すぐ書類を送ってもらいます。『不知火』にも王都へは帰りませんと伝えておきます」


「ロックとナナに許可を得なければな」


「事後報告にしましょう。断る隙を与えてはダメです」


「ミラン、お前・・・」


「私はセドの幸せが第一なので」


「ふふっ、全くしょうのないやつだ・・・」



言葉とは裏腹にセドは笑顔だ。

2人はクスクスと笑い合った後、眠りに落ちるのだった。




▽△▽△▽△▽△▽△




遠征2日目、戦闘の見学と行方不明者捜索のために今日はジルとコウも同行する。ナナのスマホはジルとコウに預けナビを頼む。


岩に隠れている『クレイロックドラゴン』を見つけ、昨日と同じ手順で倒していく。


2回目の戦闘を終えた所で「岩の裏に緑の点が3つある!」「あの岩だ!」コウとジルが慌てて告げる。


「こういうルートで逃げてくるとすると、ここが危ないな。ここを叩こう。ユーリ、昨日と同じ手順だ。行けそうか?」

ロックが地図を見ながら赤い点を示して指示を出す。


「行けます!」


「無理するな。危ない時は全力で戻れよ」


「はい!」


問題の岩の前で、ナナがユーリ以外全員の武器に炎を付与し直す。

「いっくよー」モモが走り出す。

「シャーッ!ンナァァァゴォ!」

モモが『クレイロックドラゴン』を7頭連れて戻ってくる。

ナナは、氷魔法をピッキーン、水魔法をバッシャーン、雷ショックをバリッと放つ。

ロックが正面から大きく薙ぎ払った。


ユーリが、緑の点があった場所に走る。人が居るのは岩の裏だ。


「生存者はいますか?」


「いますっ!」「ここだ!」「助けて!」


ユーリが岩の裏にまわると、身を寄せ合って座る魔法使いらしき男性2人と剣士がいた。


「あそこまで走れますか?あそこに俺たちのパーティがいます。道は確保してあります」


「走れます!」「立てない・・・!」「肩を貸す、急ごう」


ユーリは3人に気を配りながら戻る。


「ロック!生存者3人です!」


「よしっ!ユーリ、よくやった!受付に戻るぞ!」


「俺はメルビン、ジョンに、リチャードだ。助けてくれてありがとう!」


「ロックだ。みんな歩けるか?」


「大丈夫だ。ジョン、俺の肩につかまれ」


「なら行こう。早く手当した方がいい」


「ロック、はぐれた仲間がいるんだ。フォックスという拳闘士を見なかったか?」


「フォックスなら、昨日助けた。ダナも一緒だ」


「本当か?!」「よかった!」「ああ、神様!」



ギルドの受付に戻ると、フォックスとダナが仲間を心配して待機していた。


「メルビン!ジョン!リチャード!」「フォックス!ダナさん!」

「無事でよかった!よかったよーっ」

「諦めなくてよかった・・・!」


泣きながら抱き合う5人の顔に安堵が広がる。5人は座り込んでしまった。



「他にも行方不明者はいますか?」

ロックがギルドの受付職員に確認する。


「いえ、これで全員が確認できました。他に自力で帰って来た人が4人、残念ながら死亡者が2人いました」


ロックが受付でメルビン、ジョン、リチャードの無事を報告し、証拠の尻尾を提出する。尻尾の数は19個なので、昨日の1個を足して20個提出する。


「20個ですね!今回も沢山討伐ありがとうございます」

笑顔で処理するギルドの受付職員。2日目だから慣れたものだ。討伐証明書を発行して記録を付ける。


『クレイロックドラゴン』を1日で24頭倒した昨日のヤバいパーティが今日は20頭倒したらしい。

今日もまた他パーティからざわめきが起こる。

「20?いくら稼ぐ気だ」「すげぇな、おい?」


ロック達は受付を終えて、ざわめきの中を抜けてフォックス達に歩み寄る。


フォックスの仲間、ジョンとリチャードは、マリンナ出身の冒険者だった。

ロックの知り合いでは無かったが、ロックの兄を知っていた。


フォックスたちのパーティは、戦闘中に20頭近いクレイロックドラゴンに囲まれて散り散りに逃げたそうだ。

何とか逃げ延びたが、走った方向が悪く大量のクレイロックドラゴンに阻まれ戻れなくなってしまった。

隠れてはいたが、このままでは見つかって襲われるのは時間の問題だった。


「フェルが亡くなった疫病の時、俺達はマリンナに居なかったんだ。それなのに、俺達はフェルの弟に命を助けられた」


「それはフェルの剣だな。立派になって、フェルも誇らしいだろうな。ロック、本当にありがとう」


「兄さんが世話になった人達が無事でよかった」


ロックが、嬉しそうに笑う。ナナは、そっとロックと手を繋ぐ。

ジルとコウがロックを憧れの籠った目で見上げる。

ユーリとセドとミランは、今回一緒に戦えた事を誇らしく思いながら、ロックの背中を見つめるのだった。


他パーティの『67』を見る目が温かいものに変わる。


さっきまで討伐数のうわさをしていた年嵩の冒険者達は、勇敢で心優しい若い冒険者達を、眩しいものを見るような目で眺めていた。



20頭討伐なので金貨10枚+ボーナス金貨9枚+行方不明者発見の報酬が金貨6枚。討伐2日目『67』の報酬は金貨25枚だった。




▽△▽△▽△▽△▽△



コウとモモと一緒にラグに寝転んだジルは、少し落ち込んでいた。


「コウ、俺今日も全然活躍できなかった。せっかく観察眼があるのにさ」


「ジル、僕達ナビを頑張ったよ。ジルは、地図の岩だってすぐ見つけた。すごいよ」


「そうだよ。焦らなくても、ジルはすぐに活躍するようになる」


「ユーリ、ありがと・・・」


「ジル、コウ、もう寝るぞ。明日もがんばろうぜ。おやすみ」


「おやすみ」「おやすみなさい」


モモは、しっぽでジルの背中を撫でながら「おやすみ」と呟いた。


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