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王子様と私(5)

「だたのウサギに、こんなに苦労するなんて・・・!」


セドは『ワイルドチンチラウサギ』に翻弄されていた。剣が下がってしまって肩で息をしている。


ミランはナイフ投げで足止めし、早々にトドメを刺していた。


「セド、やみくもに切りかかるな。まずは足を狙うんだ。どうすればいいか考えろ」


力が無く一撃で薙ぎ払えない場合、足の速い魔物は、まず足を潰すのが確実だ。

何か投げるか魔法を放つか蹴るか、方法は何でもいい。


セドの剣は、騎士団で習った人対人の剣だ。人対魔物の剣は違う。綺麗に戦う必要はない。


「足元のウサギを、いつまで剣で追う気だ。何のために体術の稽古をしてるんだ、蹴れ」


セドは、ウサギに走り寄り蹴りを入れる。転んだウサギに剣を突き刺した。


「剣を向けたら向かってくる、人対人と同じ戦い方ではダメだ。相手は魔物だ」


「はいっ!」


「よし、ナナと俺で、討伐対象のビッグブルバッファローを狩る。モモ、水辺の偵察を頼む」


「はーい、いってきまーす」


「猫がしゃべった・・・!」「なっ・・・!」


セドとミランが口を『お』の形にして目を見開いている。モモがしゃべると皆がするあの顔だ。


モモが、ふふん!という得意顔で後ろを振り向く。


「モモちゃんは、私の従魔ファミリアなの」


「他言無用でたのむ」



ナナが、ロックの剣に炎を付与する。


水辺の『ビッグブルバッファロー』を、ロックが『威嚇』で引き寄せる。


ナナが、氷魔法で脚止めし、雷ショックで麻痺させる。


ロックが一撃で頭を落とす。


ユーリが小さな鋸で、討伐証拠の右角を手際よく切り落とし麻袋に入れる。


水辺にあと2頭いるので、続けて2頭同じように倒す。



ビッグブルバッファローの肉は美味しいので、全て持ち帰って解体してもらう。頭はいらないのでギルドに渡す。左角も素材になるらしい。


「終わった。帰るぞ」



「15分くらいで3頭倒してましたね」


「氷魔法からが一瞬で、何がなんだか分からなかったな」


「ユーリも、流れ作業のように角を切り落としてたな」


「一連が、まさに、”作業”って感じでしたね」


セドとミランは興奮気味だ。



「3人とも、『ワイルドチンチラウサギ』いるよ。出来るだけ毛皮傷つけないようによろしく。毛皮高いからね」


「無茶言う!」「ナイフ穴は諦めて下さい」「蹴り殺すか」


3人が、音を立てないようにウサギに近付いて行く。


ロックが、ゆっくり3人の後をついていった。



「ナナちゃん、あそこにブルーベリーある」モモは通常運転だ。


「モモちゃん、ちょっとあの3人待ってあげて」



「お、ユーリ綺麗に狩れてる!ミランも、いいね傷が小さい。セドは、もうちょっとがんばろう。魔物の素材を買い取ってもらうお金も、冒険者の大事な収入だからね」


「一度で狩れた事を褒めてくれ」


「そうだね、すごく手際が良かった。学習が早いね」


「次はもっと上手くやるさ」


「その意気だ。さあ、モモが見つけたブルーベリーを採ったら帰ろう」


いつも3人で採るブルーベリーも、5人ならあっという間だ。みるみるうちに麻袋1袋分がいっぱいになった。




▽△▽△▽△▽△▽△




「ナナ、剣の特殊効果付加、少し待って欲しいんだ」


「そうですね。どうせなら、自分達に合った剣を作りたい」


「うん、いいよ。でも、王籍離脱の時期に間に合う?」


「間に合わないかもしれないが、急いで作りたくないんだ」


「わかった、前金で纏まった金額を預かっておけないか、親方に聞いてみるね」


「それは助かる」


「どう?冒険者。甘くないけど、楽しいでしょう?」


「そうだな」「楽しいです」


「セドもミランも、初めて魔物を倒す時に手が震えていなかった。きっと2人とも大丈夫だ」


セドもミランも、顔をポッと赤くして喜色が浮かぶ。師匠のロックに褒められたらうれしいよね。


「そうだ、ナナ、私に魔法の手ほどきをしてくれないか?コウに教えているんだろう?」


「いいよ。魔法は何を使えるの?」


「水魔法だけだ」


「そっか、なら氷魔法を目指そう。氷魔法の足止めあると剣士は便利だよ」


「あっさり言うな」


「大丈夫。いけるよ。魔法を伸ばすコツはね、普段から惜しまず使う事」


「そうか、頑張ってみよう」


「ロックの身体強化がものすごいと不知火のニールに聞いたのですが、教えてもらえますか?」


「ああ、いいぞ。稽古の時に教えよう。ジルもユーリも訓練中だ」



セドとミランは、城を飛び出して冒険者を目指す。

一緒に行動してみて、『不知火』がなぜあれ程彼らに肩入れしているのかが分かった気がした。

彼らは、すごく誠実でまっすぐだ。自分が今持っているものでがんばる覚悟は、ついつい応援したくなる。


お坊ちゃんのはずなのに、何度失敗しても負けずにトライして、泥臭く頑張れる彼らの未来はきっと明るい。


セドとミランは、何の飾りもない鋼の剣を誇らしく腰に差し、冒険者としての一歩を踏み出した。

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