王子様と私(3)
ベン彫金工房のはじっこで、男3人とナナがコソコソ話していた。
「今ユーリを実戦訓練してるんだ。春にはジルにも剣を持たす。悪いが無理だ」
「そこを何とか!次の夏には遠征から帰ってくるから!それまでたのむよ、この通り」
顔の前で手を合わせてロックを拝むマリウスさん。この人本当に気苦労が多い。
「1年後じゃないか。ユーリは特に大事な時期なんだよ」
「頼むよ。他の知り合いは上昇志向が強くてな、そういう奴には頼めないんだよ。ロックならセド様を利用しようとは思わないだろ?」
「ナナ、どう思う?」
「ユーリやジルと同じように扱ってもいいなら、いいんじゃないかな」
「同じでかまわない!ロック殿のパーティで学ばせてほしい!」
隠れて話してたのにご本人が聞いてた。気まずい。
「本当に同じに扱いますし、『67』のルールに従って頂きますが、大丈夫ですか?」
ロックが、王子とミランさんの顔を見て確認する。
「セド様は冒険者を目指しておいでです。冒険者として通用するように鍛えて差し上げてください」
「かまわない。むしろ、その方がありがたい」
「わかりました。訓練中は不知火の拠点に住まわれるのですか?」
「セド様、不知火の拠点は安全対策もしてあるので、お好きなだけ滞在して下さい」
「マリウス、ありがたくそうさせてもらうよ」
こうして、1年だけ『67』にセドリック第8王子殿下とミランさんが臨時加入する事が、なし崩しに決まった。
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セド様とミランさんを不知火の拠点に送りがてら話をする。
不知火のみんなは、口を挟まず聞いてくれている。
「セド様、王子様って1年もお城に帰らなくて大丈夫なんですか?」
「ナナ殿、王籍離脱間近の第12子の第8王子だ、公務なんて無い。暇なんだ」
「なんか、すみません。失礼な事聞きました」
ナナは、スッと目をそらす。
「ナナ殿、なぜ目をそらす。それでな、予算もあまり潤沢ではないんだ。何しろ王籍離脱間近の第12子の第8王子なのでな」
「パーティで訓練する費用は必要ありませんよ。弟子と同じ扱いですし」
「ロック殿、それではさすがに申し訳ない。あまり出せないが、いくらかお支払いしたい」
「いや、結構ですよ。お客さんとして扱わなきゃならなくなるのでいりません」
「それは助かります。セド様、よかったですね」
「ミラン、おまえ・・・図々しいな」
「いや、本当にいりません!うちの子達と同じように頑張ってもらいますので!」
「セド様はおいくつでいらっしゃいますか?ミラン殿も」
「私は15才だ。ミランは冬に17才になった」
「それなら、弟子の中ではミラン殿が一番年長になりますね」
「私も訓練して下さるのですか?」
「ミランさんも、セド様と一緒に冒険者になるのでしょう?せっかくだし、一緒に訓練しましょう!」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「ミランは、私と一緒に冒険者になってくれるのか?」
「もちろんでございます。最初からそのつもりでございますよ。ミランはセド様の従者ですから」
「・・・ありがとう。よろしく頼む」
セド様ひとりで頑張る気だったのか。セド様うれしそう。よかったね。
「『67』は敬語なしというルールなんです。チビ達も仲間として話しかけると思います。そこは了承して下さい」
「もちろんだ。そうするよ。・・・こんな感じでよろしいですか?」
ミランさん切り替え早い。さすがだ。
「ああ、十分だ。セド様も」
「わかった、よろしくな」
セド様は、照れてるような、くすぐったそうな顔をした。
「明日仲間を紹介する。セドとミランと紹介するがいいか?俺たちの事はロックとナナと呼んでくれ」
「もちろんだ、ロック。ミラン、楽しみだな!」
「馴染んでるようで安心しました。セド様、拠点に着きましたよ」
マリウスさんが、セド様に告げる。
「では、また明日!」
ナナが手を振ると、セド様も楽しそうに手を振っていた。
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家に戻って、ロックが皆に説明する。
「第8王子を『67』で預かる事になった。明日から一緒に稽古する」
「「「・・・・」」」
全員、ぽかーんとしてる。そりゃそうだろう。訳が分からないよね。
「セドとミランって呼んであげてね!」
「どっちが・・・おうじさまなの?」
「コウ、セドが王子様」
「セドって、呼んでも怒られないのか?」
「ジル、怒られないよ。仲間になるんだから」
「王子、ずっといるんですか?」
「ユーリ、セドだ。すっとはいない多分1年くらいだ」
「孤児院の仲間に言ってもいいの?」
「仲間が増えた事は言ってもいいが、セドの身分は他言無用だ」
「「「わかった」」」
「大丈夫。冒険者を目指す15才と17才の普通のお兄さんだよ」
「ユーリ、一緒に魔物を倒す訓練をする事になるが、遠慮するなよ」
「わかった、グイグイ行く!」
「ハハハ、そうしてくれ」
「ヤッベーな、俺達王子さまと一緒に稽古すんのかよ!うっわー、ドキドキしてきた!」
「スゴイね!どんな人だろうね!楽しみだね!」
すごい、うちの子達、もう受け入れて現状を楽しみだした。
「モモ、しばらくおしゃべりムリ?」
「モモちゃんのタイミングでカミングアウトして」
「わかった」
明日、セドとミランが『67』にやってくる。




