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王子様と私(3)

ベン彫金工房のはじっこで、男3人とナナがコソコソ話していた。


「今ユーリを実戦訓練してるんだ。春にはジルにも剣を持たす。悪いが無理だ」


「そこを何とか!次の夏には遠征から帰ってくるから!それまでたのむよ、この通り」

顔の前で手を合わせてロックを拝むマリウスさん。この人本当に気苦労が多い。


「1年後じゃないか。ユーリは特に大事な時期なんだよ」


「頼むよ。他の知り合いは上昇志向が強くてな、そういう奴には頼めないんだよ。ロックならセド様を利用しようとは思わないだろ?」


「ナナ、どう思う?」


「ユーリやジルと同じように扱ってもいいなら、いいんじゃないかな」


「同じでかまわない!ロック殿のパーティで学ばせてほしい!」

隠れて話してたのにご本人が聞いてた。気まずい。


「本当に同じに扱いますし、『67』のルールに従って頂きますが、大丈夫ですか?」

ロックが、王子とミランさんの顔を見て確認する。


「セド様は冒険者を目指しておいでです。冒険者として通用するように鍛えて差し上げてください」

「かまわない。むしろ、その方がありがたい」


「わかりました。訓練中は不知火の拠点に住まわれるのですか?」


「セド様、不知火の拠点は安全対策もしてあるので、お好きなだけ滞在して下さい」


「マリウス、ありがたくそうさせてもらうよ」



こうして、1年だけ『67』にセドリック第8王子殿下とミランさんが臨時加入する事が、なし崩しに決まった。




▽△▽△▽△▽△▽△




セド様とミランさんを不知火の拠点に送りがてら話をする。

不知火のみんなは、口を挟まず聞いてくれている。


「セド様、王子様って1年もお城に帰らなくて大丈夫なんですか?」


「ナナ殿、王籍離脱間近の第12子の第8王子だ、公務なんて無い。暇なんだ」


「なんか、すみません。失礼な事聞きました」

ナナは、スッと目をそらす。


「ナナ殿、なぜ目をそらす。それでな、予算もあまり潤沢ではないんだ。何しろ王籍離脱間近の第12子の第8王子なのでな」


「パーティで訓練する費用は必要ありませんよ。弟子と同じ扱いですし」


「ロック殿、それではさすがに申し訳ない。あまり出せないが、いくらかお支払いしたい」


「いや、結構ですよ。お客さんとして扱わなきゃならなくなるのでいりません」


「それは助かります。セド様、よかったですね」


「ミラン、おまえ・・・図々しいな」


「いや、本当にいりません!うちの子達と同じように頑張ってもらいますので!」


「セド様はおいくつでいらっしゃいますか?ミラン殿も」


「私は15才だ。ミランは冬に17才になった」


「それなら、弟子の中ではミラン殿が一番年長になりますね」


「私も訓練して下さるのですか?」


「ミランさんも、セド様と一緒に冒険者になるのでしょう?せっかくだし、一緒に訓練しましょう!」


「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」


「ミランは、私と一緒に冒険者になってくれるのか?」


「もちろんでございます。最初からそのつもりでございますよ。ミランはセド様の従者ですから」


「・・・ありがとう。よろしく頼む」

セド様ひとりで頑張る気だったのか。セド様うれしそう。よかったね。


「『67』は敬語なしというルールなんです。チビ達も仲間として話しかけると思います。そこは了承して下さい」


「もちろんだ。そうするよ。・・・こんな感じでよろしいですか?」

ミランさん切り替え早い。さすがだ。


「ああ、十分だ。セド様も」


「わかった、よろしくな」

セド様は、照れてるような、くすぐったそうな顔をした。


「明日仲間を紹介する。セドとミランと紹介するがいいか?俺たちの事はロックとナナと呼んでくれ」


「もちろんだ、ロック。ミラン、楽しみだな!」


「馴染んでるようで安心しました。セド様、拠点に着きましたよ」

マリウスさんが、セド様に告げる。


「では、また明日!」


ナナが手を振ると、セド様も楽しそうに手を振っていた。




▽△▽△▽△▽△▽△




家に戻って、ロックが皆に説明する。


「第8王子を『67』で預かる事になった。明日から一緒に稽古する」


「「「・・・・」」」

全員、ぽかーんとしてる。そりゃそうだろう。訳が分からないよね。


「セドとミランって呼んであげてね!」


「どっちが・・・おうじさまなの?」


「コウ、セドが王子様」


「セドって、呼んでも怒られないのか?」


「ジル、怒られないよ。仲間になるんだから」


「王子、ずっといるんですか?」


「ユーリ、セドだ。すっとはいない多分1年くらいだ」


「孤児院の仲間に言ってもいいの?」


「仲間が増えた事は言ってもいいが、セドの身分は他言無用だ」


「「「わかった」」」


「大丈夫。冒険者を目指す15才と17才の普通のお兄さんだよ」


「ユーリ、一緒に魔物を倒す訓練をする事になるが、遠慮するなよ」


「わかった、グイグイ行く!」


「ハハハ、そうしてくれ」


「ヤッベーな、俺達王子さまと一緒に稽古すんのかよ!うっわー、ドキドキしてきた!」


「スゴイね!どんな人だろうね!楽しみだね!」


すごい、うちの子達、もう受け入れて現状を楽しみだした。


「モモ、しばらくおしゃべりムリ?」


「モモちゃんのタイミングでカミングアウトして」


「わかった」



明日、セドとミランが『67』にやってくる。


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