王子様と私(2)
セドリック第8王子殿下はマリンナに到着した後、そのままベン彫金工房に訪れていた。
「タマス国第8王子セドリックだ。ベン殿に剣への特殊効果付与をお願いしたい」
「ベンと申します。第8王子殿下のお役に立てる栄誉を賜り、恐悦至極に存じます」
「私は近々王籍を抜けて冒険者となる。王子としてではなく、普通の顧客と同じように扱ってほしい」
「私、従者のミランと申します。殿下はこちらに滞在中はお忍びでございます。セド様とお呼び下さい」
「わかりました。セド様、それでは早速ですが、剣を見せてくだせぇ」
「これだ。よろしく頼む」
ベン親方が渡された剣を確認する。
「嬢ちゃん、ロック、来てくれ」
「セド様、この2人はベン彫金工房の専属工房の者です」
「ベン彫金工房の専属工房アトリエ・ロクナナのロックと申します」
「ナナと申します」
「この剣を確認してもらえるか?」
ロックが剣を手に取り、眺めてからナナに渡す。
ナナは見ても分からないので、鑑定をかけてみる。
『褒美として下賜するために作られた銅製の宝剣。ルビー・金製・銅製』
うーん、これは実戦で使えないやつだ。言いずらいな、なんて言おう。
『不知火』の人達、ずっと一緒だったんだから王子に教えてあげればいいのに!
ナナは王子の後ろに立つリッカルドをチラリと見るが、リッカルドは素知らぬフリだ。
「恐れながら、剣は鋼の物をご用意いただいた方がよろしいかと」
ロックが言ってくれた。ありがとうロック。
「ロック殿、ではこの剣は何製なのですか?」
ミランの問いに、ロックはナナを見て頷く。
「銅製です。褒美として下賜するために作られた銅製の宝剣で、飾りは金とルビーです」
「ナナ殿は鑑定ができるのか?」
「できます。私がロクナナの職人なので」
「持主専用の特殊効果付加は、ナナにしかできません。これは他言無用でお願いします」
セド様とミランさんが、軽く目を見開く。
「承知した」「かしこまりました」
「マリウス、とりあえず、武器屋でセド様とミラン殿に剣を選んで差し上げろ」
「マリンナの武器屋の良し悪しを知ってるロックも同行して欲しい。その方がいいですよね?セド様」
「そうだな、ロック殿よろしく頼む」
「わかりました。だいたいのご予算は?」
「ロック、鋼製の剣なら予算を気にせず選べるはずだ」
「では、ドナルドの店に行きましょう」
「私達はナナちゃんとお留守番してますぅ」
ロリーナさんがナナと腕を組む。
マリウスさんとロックが、王子とミランさんを連れて武器屋に向かった。
▽△▽△▽△▽△▽△
「っはーっ、緊張したー」
「ナナちゃん、お疲れ様ぁ」
ロリーナさんが肩をモミモミしてくれる。
「不知火のみんなはすごいね!ずっと王子様と一緒だったんでしょう?」
「セド様は、冒険者になるし、気さくな方だからね。あまり緊張はしなかったな」
「不知火ってすごいんだねー。王子様と知り合うって、どんな活動してたらそうなるの?」
「王城のパーティに呼ばれて行ったとき、お話する機会があっただけだよ」
「すっごーい!ロリーナさんもダンス踊ったりするの?」
「あはは、今どきのパーティは、ダンスなんて踊らないよぅ。楽団がいるから音楽は流れてるけど」
「まあ、知り合いを増やすために行く感じかなー」
「へー、有名冒険者は大変なんですねー」
「お茶どうぞ~」
トムさんの淹れてくれるお茶は美味しい。あの大きな手で小さなポットから淹れてくれる様は、目にも美味しい光景だ。
「わー、ありがとう!トムさん!」
ナナは、トムさんが淹れてくれたお茶をいただく。温かいお茶でホッと一息つく。
「そういえば、セド様は、冒険者登録したらソロで頑張るの?」
「それなんだけどな、ロックに頼めないか?」
「リッカルドさん、ごめん、どういう意味?」
「セド様は、幼い頃から騎士団で訓練はされていたようだが、魔物とは戦った事がないそうだ。だから魔物と戦う訓練が必要だ」
「不知火で面倒見てあげたらいいじゃない」
「そうして差し上げたいんだがな、秋から立て続けに他国の遠征があるんだよ。セド様を他国へはお連れできないだろう?」
「王都の別の有名パーティに頼んだらいいじゃない」
「生き馬の目を抜く王都の有名パーティになんか頼んだら、すぐに良からぬことに利用されそうだ」
なにそれ王都怖い。ナナは、やっぱり王都へは絶対行かないようにしようと心に刻む。
「マリンナは、魔物も比較的狩りやすいものが多い。セド様の訓練には最適だと思うんだよ」
「不知火のマリンナの拠点に滞在していただくから、頼めないかな」
「うー、私じゃなくてロックに言って!リーダーだから!」
ナナは、ロックに丸投げする事にした。




