バッソの呪縛とユーリの遠征(1)
無事ギルドでの手続きが済み、ユーリが『67』の荷運びとして働くことになった。
ユーリのお給料は、1回の討伐につき銅貨3枚に決まった。この金額は荷運びの相場だけど、部屋住みで稽古をつけるという条件では破格らしい。
ユーリの初仕事は、カタッラクテース領のリアナトリへの遠征だ。
ロックもナナもがっつり稼ぐつもりなので、ユーリに倒した魔物から証拠品を集めてもらえるのは正直助かる。
ユーリには安全のために、コウやジルと同じ効果(防御と守護)を付けた守り石を渡した。
ユーリは、守り石にグリーンオニキスを選んだ。オニキスは信念の石で、成功の象徴でもある。独立を目指すユーリにはピッタリだ。
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カタッラクテース領のリアナトリへ出立の日は曇りだった。
時々晴れ間は見えるものの直射日光が当たらないから、御者台に座るロックとナナは快適だ。
キャビンからは、ジルとコウとユーリの笑い声が聞こえる。モモは御者台の真後ろでお昼寝中だ。
「もうすぐ昼だから一休みするぞ」
ロックがサコッシュからサンドイッチを取り出す横で、ナナが魔法でミルクを温めてホットミルクを作る。
「すごい!魔法で温めるんですか?」
「そうだよ。火を熾すの面倒臭いもん」
「ナナは、家事に魔法を使うんだ」
「そうなんですね、初めて見ました」
「ユーリ、敬語になってるよ。他所はしらないけど『67』にいる間は敬語なしで。『67』のルールね」
「ユーリ、独立するんだろ?独立したら自分が責任者だ。その時は好きにするといい」
「わかりまし、わかった」
「はい、じゃあ、食べよう。モモはこれね。お肉だよ」
「お肉、やったー」
「食ったら、トイレも済ませておけ」
「「「はい!」」」
「飲み終わったコップは私に頂戴。水魔法で濯いでからしまうから」
「ゴミはコウに渡してくれ。コウ、トイレのついでに埋めてくれ」
「はーい!」
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カタッラクテース領のリアナトリに着いた頃には18時を回っていて、すっかり日が沈んでいた。ナナの火魔法で照らしながら町へと進む。
ギルドに到着の報告を入れて、家族用コテージの場所を確認して鍵を預かる。
「今回も部屋は2つか。トイレの右側の部屋が大きいな、そっちを3人で使え。俺とナナは左側を使う」
「お風呂の用意するね。ロックは夕飯の支度おねがい」
「俺も手伝いま、手伝う!」
「そうか、悪いな。ユーリ、このスープを器に注いでくれ」
「わかった!肉団子は1人2個でいい?」
「ああ、それでいい」
「僕達荷物を部屋に運ぶね。ロック、サコッシュから出して!ユーリのも持って行くよ」
「俺も手伝う!」
「わかった、ここに出すぞ。これがジルの、これがユーリの、これがコウのだな」
「ありがとう!持って行くね」
「お風呂の用意できたー、ご飯食べたら順番に入ってね!あー、お腹すいた!いい匂い」
「飯食ったら、風呂入ってここに集合だ。明日の作戦を立てよう」
「「「はい!」」」「はーい」「モモも?」
「モモもだ」
「はぁーい」
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「マウンテンマンドリルは群れで行動する。今大暴れしている群れは12。通常は4つくらいの群れでテリトリーを分けて行動するから、明らかに増えすぎて飽和状態だ」
「だから森から町や村に下りてくるんだね」
「今回は、町の門前広場で襲ってきた群れを討伐するパターンと、町付近の森で討伐するパターンがある。『67』は、主に森での討伐に参加する予定だ」
「森のどの辺にいるかは分かってるの?」
「飽和状態だからな。マウンテンマンドリルの群れは60~80匹くらいの規模だから、おそらくすぐに遭遇する。デュシス森林より小規模な森だからな」
「ロック、いつも通り雷ショックに炎付与で大丈夫?」
「ああ、それでいい。肉も食えないし、毛皮もイマイチだ。手あたり次第、威力を気にせず雷ショックでいい」
「威力を気にしなくていいのは楽でいいね!」
「ユーリ、俺達はどんどん倒していくから、後から証拠の右耳を集めてくれ。麻袋を渡すからそこに入れておいて欲しい」
「わかった」
「ユーリ、大丈夫?耳、切り取れる?」
「証拠の回収、やってたから慣れてる。大丈夫」
「良かった。よろしくね!コウとジルは、モモと一緒にいてね」
「受付は森に入る前だから、そこからじゃ戦闘が見えない。シルクヘアミンクの時と同じように安全な位置から見学しててくれ」
「「はい!」」
「モモ、頼んだぞ」
「はーい」
「それから、モモには偵察を頼むかもしれない。その時は、戦闘前だから3人とも俺達の近くにいるように」
「「「はい!」」」
「それじゃ、解散。明日に備えて早く寝ろよ」
「「「はい!」」」「はーい」「モモ、コウのラグで寝る」
さあ、明日は討伐初日だ!稼ぐぞー!
ナナは、わくわくしながら眠りにつくのだった。




