コウとジル、初めての通常討伐依頼(2)
帰り道、森を歩きながら、アケビやローズマリー、スグリなどを採る。
モモの『幸運』は、相変わらず美味しい物に敏感だ。
「ナナちゃん、魔力結界って魔法とは違うの?」
「うんとね、魔法っていうより、魔力を固めて結界にする感じ。私は、防弾ガラスのシリコンがけをイメージしてるかな」
「ぼうだんがらす?」
「私の出身国の凄い人が発明した固いガラス。それをプニッとしたシリコンで覆った素材を使う感じ」
「しりこん?」
「そう、シリコン。プニプニしてて衝撃を吸収するんだよ」
「僕、ナナちゃんの結界、今度外から触ってみたい」
「きっと気持ちいいよ、なんなら中もプニッとさせようか?」
「ナナちゃん、僕、興味本位で触ってみたいだけだから、そこまでしなくてもいいよ」
「そう?遠慮しなくていいのに」
「ナナ、硬さの違う結界を重ねてるのか?」
「うーん、元々そういう素材みたいなイメージだから、重ねてはいないかな」
「ナナちゃん、中は固いガラスで外は柔らかいんだろ?重ねなきゃむりじゃねぇ?」
「例えばさ、栗って、栗の美味しいところの上に、渋皮と鬼皮とイガがあるじゃない?栗みたいなイメージの結界って思うと、渋皮と鬼皮とイガが一体になった結界が生まれる感じ」
「ごめん、ナナちゃん、わかんねぇ」
「ココナッツで例えるとね」
「ナナちゃん、食べ物以外で」モモから遮るようにツッコミが。
「えー、あ、卵の殻って、薄い膜と硬い殻があるじゃない?卵の殻をイメージして結界を張ると、薄い膜と殻で覆われる感じ。私の卵の殻のイメージが、薄い膜と殻だから」
「卵も食べ物だけどな。なるほど、なんとなく分かった。ナナが今日張った結界は、中が硬くて周りが柔らかい素材で包むイメージか」
「そう!そんな感じ!私の頭の中で防弾ガラスとシリコンを合わせた新素材を誕生させて、それを使って結界を張るイメージ」
「魔力結界って、奥が深いんだね」
「俺が以前見た結界は、光る透明の薄い膜だったけど、攻撃を1回か2回防いだら消えてたな」
「ナナちゃんのは、跳ね返しそうだよね。ポヨンって」
「ふふっ、ポヨンって跳ね返したら面白いな」
「ハハハ、矢を打っても、ポヨンポヨンって」
「モモが爪で引っ搔いてもポヨンってなるかな」
「フフフ、モモがポヨンって、アハハ」
「ナナちゃんが中をプニッとさせたら、みんなポヨンポヨンできるね!」
「ブハッ、みんなで中で、ハハハ」
「ポヨンポヨン、フフッ、アハハハ」
「アハハ、ちょっとモモ、アハハハハ、やめてよ、腹痛ぇ」
ナナの結界が、男3人に大ウケだ。ナナのかんがえたさいきょうの結界なのに。解せぬ。
でも、楽しそうだからいいかと、笑う3人と煽る1匹を眺めるナナだった。
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ギルドで狩ってきたシルクヘアミンクを6匹出す。
討伐依頼は2匹だったので2匹分だけ皮を買い取ってもらい、残りの4匹分の皮はロックが引き取りに来る事になった。
「ロック、皮全部買い取ってもらわなくて良かったの?受付のローラさん残念がってたよ」
「あれは、北に遠征に行くときの外套を4着作るために使う」
「シルクヘアミンクの外套!手触り良さそうだね!」
「シルクヘアミンクの皮は、トッタラッタ領で獲れる数少ない防寒着になる素材だ。マリンナで防寒着を買うと高価だからな」
「なるほど!節約だいじだよねー」
「ロック、4枚って事は俺達の分もあるの?」
「当たり前だろ。薄着で北になんか行かせられるか」
「僕達の外套!ロックとナナちゃんが獲ったシルクヘアミンク!スゴイ!」
「スッゲー!シルクヘアミンクの外套!コウ、北に行くの楽しみだな!」
「モモのは?モモのはないの?」
「モモちゃん、黒い毛皮があるじゃない。でも、モモちゃん用に端切れをもらって毛皮のマフラー作ろうか」
「毛皮のマフラー!楽しみー」
ロックとナナとジルとコウとモモは、お揃いの外套を着た4人と1匹で、北に遠征に向かう様子を思い浮かべながら家路を急ぐ。
次の遠征は、ずっと家族一緒だ。ジルも前泊じゃないし、帰宅の翌日に孤児院に戻る事もない。
家族みんな、同じ家から出て同じ家に帰って、同じ家で休む。
そんな遠征を思うと、心が浮き立つ4人と1匹だった。




