ナナも師匠になる(1)
8月15日、ロックとナナとジルとコウは、役所のノットさんの元を訪れていた。
今日でお試し同居の期間が終わり、ロックとナナは正式に2人の育て親になる。
「こんにちは、ノットさん、よろしくお願いします」
「こんにちは、どうぞこちらにお掛け下さい」
「ありがとうございます」
「さて、それでは、早速確認させていただきます。ジル君、育て親希望のロックさんとナナさんの元で暮らすかい?」
「暮らします」
「はい、わかりました。それでは、育て親の手続きをいたします」
「お願いします」
「これで、ロックさんとナナさんは、ジル君とコウ君の育て親になります。2人をよろしくお願いします」
「はい、ありがとうございます」
「育成補助金は、毎月15日にロックさんの口座へ、2人分で銀貨2枚入金されます。もし入金されていない場合はご連絡下さい」
「わかりました」
「ジル君、コウ君、君達はこれから、ロックさんとナナさんの家族として暮らします。ロックさんとナナさんの言う事をよく聞いて、仲良く暮らして下さい。体に気を付けて、稽古もがんばって下さい」
「はい!今までありがとうございました!」「はいっ!ありがとうございました!」
「まあ、孤児院でまた会えますのでね。何かあったら言いなさい。ロックさん、ナナさん、2人を引き取って下さり、ありがとうございました。2人をよろしくお願いします」
「こちらこそ、ご尽力いただき、ありがとうございました」
「色々とありがとうございました」
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役所から戻りお昼ご飯を食べた後、ロックが大きなテーブル横のラグに皆を集めて言った。
「これから、依頼があったら遠征を受けようと思う。ジルとコウに色々な戦い方を見せてやりたいし、もう少し大きくなったら野営のしかたも教えたい」
「うん、いいと思う。前回の遠征で、かなり成長したもんね」
「依頼は厳選して、遠征の回数は年に2回くらいを考えてる。距離は拠点のマリンナから200ケメス(Km)以内だな」
「私、ベン親方のところで売り出した結婚指輪の特殊効果付加がけっこう忙しくて、マリンナを離れられない場合があると思うのだけど、どうしよう」
「依頼を受ける前に事前に相談するから大丈夫だ。ナナを置いていけるわけないだろう。予定が合わなければ、今まで通り断ればいいだけだ」
相変わらず、ロックの最優先はナナだ。ジルとコウは、そんなロックをほんわか温かい目で見る。
「それで、行ってみたい場所はあるか?具体的じゃなくていい」
「僕、大きな湖があるところ!パン屋のコルテスさんが、大きな湖のある村で育ったっていってた!すごくきれいな所なんだって!」
「俺は海が見てみたい!すっげー広くて、水がしょっぱいんだって!でっかい魚もいるらしいぜ!」
「そうか、遠征の依頼があったら行こう。地形や魔物の種類によって戦い方が違う。作戦を立てるところから参加すれば、かなり勉強になるだろう」
「「やったー!」」
コウとジルは、モチベーション爆上がりだ。2人とも、今すぐ行きたいです!と顔に書いてある。
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夕飯を食べ終え、後片付けを済ませたところで、コウに呼び止められた。
「ナナちゃん、ロック、話したい事があるんだ」
「いいよ、じゃあお茶飲みながら聞こうか」
「ナナちゃん、俺ホットミルク飲んでいい?」
「ジル、モモも」
「僕もホットミルクがいい」
「それなら、全員ホットミルクでいい」
「ジル、私が淹れてくるよ。魔法で温めるからすぐだよ」
全員分のホットミルクが行きわたって、コウが緊張した面持ちで話し始めた。
「僕、魔法も使える剣士になろうと思うんだ」
ロックとナナは、少しだけ驚いたものの、コウに話の続きを待つ。
「僕とジルが『67』に加入したら、剣士3人、魔法使い1人、使い魔1匹になるでしょう?」
「そうだな。まあ、12才までは荷運びだけどな」
「剣士3人って、バランスが悪すぎると思うんだ。僕が魔法を使えればさ、討伐によっては剣士2人と魔法使い2人っていう戦い方もできるでしょう?」
「確かに、コウが土魔法を使えるのはわかってるんだから、それを鍛えれば作戦の幅はだいぶ広がるな」
「あとさ、僕の土魔法でナナちゃんみたいに足止めができれば、ナナちゃんの負担も減ると思うんだよね」
「土魔法なら、足止めは可能だろうな。上位の地魔法まで行けば地面への縫い留めもできるかもしれないな」
「だから僕、土魔法の訓練をしたいんだ。ナナちゃんに協力してほしい」
「わかった。コウ、お前、なんか凄いな」
「ロック、僕はロックの弟子だよ。常に自分の役割を考えろって教わってるでしょう?」
ちょっと、コウさん、6才ですよね?ナナは、自分のぼんやり過ごしていた子供時代を思い出す。うちのコウは、天才?天才なの?
「わかった、ナナちゃんコウの成長に感動したっ!だから、とりあえず、今からコウを生ゴミ埋め係に任命します。毎日魔法で丁度いいサイズの穴を掘って、きれいに埋める。明日からよろしく」
「ナナ、いきなり穴は無理じゃないか?」
「無理なら手で掘ったらいいんだよ。無理はしない事。毎日少しでも魔法で掘ってるうちに、全部掘れるようになるよ」
「生ごみ埋め係やります!」
「もちろん訓練も付き合うよ」
「ロック、コウがナナちゃんと魔法の訓練をする時に、俺も身体強化の訓練をしたいんだ」
「やってもいいが、無理はするな」
「無理はしません!やったー!」
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ナナがお風呂に入って自室に戻ると、ロックが討伐日記を見ていた。
討伐日記は、ロックが冒険者として討伐に出るようになってからずっとつけている記録だ。
「ナナ、相談がある」
「うん、なあに?」
「俺は、今後の為にジルとコウのステータスを把握しておいた方がいいと思うんだ」
「そうだね。この成長の勢いだと、早めに方向性を決めておきたいよね」
「ナナのスマホで、あの2人のマイステータスを表示できるようにして欲しいんだ」
「もちろんいいよ。そうしよう」
ナナとロックは、寝るにはまだ早い時間だったので、ジルとコウの部屋に向かう。
ジルとコウの部屋からは、じゃれ合う楽し気な声が漏れていた。
ナナとロックは顔をほころばせて頷き合うと、ジルとコウの部屋のドアをノックした。




