ロックの誕生日(2)
8月12日、ロックの誕生日。今日は、冒険者をお休みして三人と一匹で過ごす。
お弁当を持って、ナナの花冠を作った草原へピクニックに行こうと計画していたのに、雨が降ってきてしまった。
「ロックとピクニック行きたかったね」
「家だって楽しいぞ」
「あめ、すごく、ふってるね」
「雨に濡れるのきらい」
「でも、でも、なんかたのしい」
ピクニック中止はすごく残念だけど、雨音が外と家とを切り離しているようで、家族だけの時間という感じがして少しだけわくわくする。
ピクニックのお弁当を、いつものラグに皆で座って食べる。ハムサンドとロックの好きなふわふわスクランブルエッグサンド。ナナが、りんごを剥いてひとりひとりに手渡す。この国のリンゴは小さいので、1人1個ペロリだ。
お弁当を食べ終わったところで、コウがモジモジしだす。こっそりナナが「どうしたの?」と聞くと、「おめでとう、したい」と小さな声で言った。夕食の時にお祝いする予定だったけど、コウは待ちきれなかったみたいだ。
ナナがモモに目配せして、せーので一斉に「「「お誕生日おめでとう!」」」と言って、ロックに抱き着く。ロックは目がまん丸になったけど、恥ずかしそうに「ありがとう」と言った。
「はい、お誕生日のプレゼント!」どうせならと、プレゼントも渡してしまう。だって、みんなでラグに寝転がってアルバムを見たかったんだもの。
ロックは、さっきよりもっと目をまん丸にして「ありがとう」と言って、アルバムを受け取った。
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みんなでラグに寝転んで、ロックのアルバムを見る。
「これはねっ、ナナちゃんの、お花まるく、あの、はなかんむり、つくってる、ロック」
「あん時は、花冠なんて4年ぶりに編んだから心配だったけど、上手くできたな」
「花冠、本当に素敵だった!箱に大事にしまってあるよ」
「ナナちゃん、時々箱から出してニヤニヤしてるよね」モモにはバレてた。
1枚1枚、絵を見ながらコウが一生懸命説明する。ロックがそれをうれしそうに聞いている。1枚毎に思い出が溢れてみんな話しがつきない。
「コウも、ここにいるの、モモのよこにいるの」
「ナナの髪を切った時か。あのハサミ、小さいけどよく切れたなぁ」
「私は、ロックが持ってたハサミが、キングクロコダイルの尻尾切ったハサミでビックリした!」
「ナナちゃん、すごく嫌そうな顔してた」またモモにはバレてた。
「ふふっ。ナナ、これ、炎盛りすぎだろう。顔の近くでこんなに燃えたら髪が焦げる。くくっ」
ロックさん、あえて盛ってるんですよ、あえて。ちょっと、そんなにウケなくても。
「コウ、ロックの剣、火がもえる剣、みてみたいっ」
「こんなに燃えないぞ。ふふっ」
「お肉が焼けそう」
「あははは、そうだなモモ、焼けそうだ!」この炎は、ロックの笑いのツボだったらしい。
最後の2枚は4人一緒の絵だ。ロックが、優しく目を細める。
「あの日、風車に行ってよかった」
ロックが、ポツリと言った。ロックの目が赤い。
「ロック、あの時来てくれてありがとう。来てくれなかったらネズミの住んでる風車で、きっとモモと2人で途方にくれてた」
「なんでか分からないけど呼ばれた気がして、帰ろうかと迷ったけど行ってみてよかった」
「モモも、ナナちゃんの近くによばれたよ。一緒だね」(呼ばれたというよりは、モモはナナの近くに飛ばされたのだけど)
「コウもっ、そうげんに、ひとりで、さびしかったっ。きてくれて、ありがとう」
「コウを草原で見つけてよかった。おかげで毎日楽しい。ありがとうな」
「私も毎日楽しい」「モモも」
「俺は、ナナと会えてよかった。モモが一緒に来てくれてよかった。コウを草原に迎えにいってよかった。みんなありがとう」
「ロック、私達をここに連れてきてくれて、ありがとう」「ありがとう、ロック!」「ありがとう、ロック、だいすきっ」
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ナナは、夕飯にロックの大好物フレンチトーストを作る。今日は、蜂蜜とジャムかけ放題だ。太い腸詰をオーブンでじっくり焼いて、フレンチトーストにドドンと添える。
ご飯が終わってお風呂に順番に入ったら、今日はコウの部屋のラグで川の字+1匹で眠る。寝るまでずっと、ゴロゴロしながらおしゃべりする予定だ。
ロックは、アルバムの最初のページを開く。
『ナナとコウとモモより愛を込めて』
ロックは、18才になった。初めて誕生日を祝った今日の事は、たぶん一生忘れない。




