ロックの誕生日(1)
今日は8月8日。4日後はロックの誕生日だ。
ロックには、「アクセサリー作りで試したい事があるから」と言って、今日は1人で討伐に出てもらっている。
昨年の無念を晴らすため、ナナは今年こそ、絶対に、絶っっ対にロックの誕生日を祝おうと決意していた。
ロックは、ナナの誕生日に、家族みんなで作った花冠をくれた。
ナナもコウとモモと一緒にプレゼントを作ってロックに贈りたい。ナナは、手作りアルバムを作ろうと思った。
アルバムとは言っても、写真のプリントはできない。
だから、手書きの絵だ。ナナとコウが楽しい思い出を絵を描いて、モモには肉球スタンプを押してもらう。
「コウ、モモ、アトリエに集まって!」
ドアを開けて叫ぶと、パタパタとコウの足音がする。モモは、コウの後ろからついてきていた。
みんなでラグに座って、コホンとナナがかしこまった咳をする。
「ロックの誕生日プレゼントを作ります!思い出を小さな絵に描いて、アルバムを作ります」
「あるばむ?」モモが首を傾げる。かわいい。
「いんすた?」コウが不安そうな目をする。コウはやっぱり地球から来たのかも。
「コウは、インスタ知ってるの?」
「コウが、じゃま、あっち、いってろって、おかあさんが、オツを」
コウの下唇が前に出てきた、涙が浮かんでる。
「私のスマホの写真は、コウとモモでいっぱいだよ。ベランダには絶対帰さないよ」
ナナは、コウを軽く抱き寄せる。モモが、すかさずコウの膝に頭を乗せる。コウが、モモの頭をなでなでする。
「我が家のアルバムは、絵です!ロックとの楽しい思い出の絵を描きましょう!モモは、肉球スタンプおねがい!」
「「はーい!」」
ナナは、地球から持ってきたA4サイズのスケッチブック2枚を1/4サイズにカットして、8枚の画用紙を作る。
ナナとコウは、鉛筆と色鉛筆で描いていく。
コウは、鉛筆を使った事がなかった。おかあさんの”メイク”にあったけど、触るとベランダだからと言っていた。
それは多分、鉛筆ではなくアイライナーかアイブロウだと思う。子供が使える筆記用具が、家に無かったのかな。
だからコウは、絵の描き方を知らなかったらしい。
孤児院に行くようになって、描けるようになったんだって。みんなに絵も字も教えてもらってるし、みんなで地面に色々描いて遊んでるんだって。
ナナは、のびのびとコウが色を塗ったひまわり祭りの看板を思い出す。
筆圧が高くてちょっと線がガジガジだけど、コウは一生懸命絵を描く。1枚目は、ナナの花冠を作っているロックなんだって。花冠なら、色も綺麗でいいね。
ナナは、サンザシの実を採っているロックを描く。ナナが討伐に行かない時でも、ロックはサンザシを採ってきてくれる。ナナの煮るジャムを楽しみにしてくれるのがうれしい。
コウは、2枚目を描くようだ。早いな。完成品をちょっと覗いたら、ロックの笑顔がニッコニコだった。ロック、そんな満面の笑みで花冠を作ってたのか。
モモに、肉球スタンプを頼んだけど「あとでね」と断られた。もー、モモったらフリーダムなんだから。
コウの2枚目は、ご飯を食べているロックだった。コウに、ベーコンを分けてくれたロックらしい。ロックのお皿には、小さなベーコンが乗っていた。
ナナの2枚目は、ひまわり祭りの敏腕販売員ロックを描く。お高い特殊効果2種類付加のネックレスを指さしてる。モモが「ここに無いのはオーダーしてくれって言ってそう」と言った。
コウの3枚目は、ナナの髪を切ってるロックだった。ナナもロックも、口がへの字になってる。黒い塊はモモかな?ナナは「コウもこの辺にいたよ」とモモの隣を指さした。コウは自分も書き足していた。
ナナの3枚目は、剣を構えるロックだ。炎付与した剣から炎が上がっている。戦闘中のロックは、動きは激しいのにいつも冷静な顔だ。シルバーアッシュの髪と炎の対比がカッコいい絵になった。炎付与は、こんなに炎は上がらないけれど、かっこいいからちょっと炎を盛った。
コウの4枚目は、皆でラグに寝転んでいる時のロックだった。赤茶のラグに三人川の字+1匹がニコニコ顔で寝ている。モモがすごく長い。そういえば、たまにモモはこんな風に、のびーんってなってるかも。
ナナの4枚目は、家までの帰り道、モモをナナが抱っこして、コウがナナの服の裾をゆるく握って、コウとロックが手を繋いでる絵だ。夕焼け空をバックに影が1つに繋がっている。
コウとナナの4枚目が完成したので、モモに肉球スタンプを再度頼む。ポンポンポンポンポンポンポンポンと押してくれて、今日はここで終わりにする。
丁度片付けたところでロックが帰って来た。セーフ。ロックの帰宅がもう少し早かったら危なかった。
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翌日の夜、ナナは自室でB4サイズのスケッチブック3枚を半分に折って糸で閉じる。糸を隠すように藍色のマスキングテープを貼る。
白い表紙に細いサインペンで「ロックへ」と書いた後、表紙全体にレトロでかわいい鳥の羽のスタンプを、バランスよく押していく。
裏表紙に「ナナとコウとモモより愛を込めて」と書き、ナナとコウが書いてモモが肉球スタンプを押した絵を、1ページに1枚ずつ両面テープで貼り付けていく。
絵の下には「ナナの花冠を作るロック」「サンザシの実を採るロック」と、タイトルを書き込んだ。
最後の裏表紙にサインペンでハートマークを描き、色鉛筆で赤く塗った。
ロックへのプレゼント「ロックの思い出アルバム」が完成した。
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8月11日の夜、コウとモモに、完成したアルバムを見せる。
コウは、パァァァっと目を輝かせて「わあ、すごい、ロック、よろこぶ!」と言ってナナに抱き着いた。モモも「モモのスタンプいいかんじ!」と自画自賛で胸を張る。
明日はロックの好きなサンドイッチを持ってピクニックに行って、ロックのお誕生日用の夕飯は、満場一致で「フレンチトースト!」で決まりだ。ロックの好物のナナのジャムと、蜂蜜と、太い腸詰も添える予定だ。
さあ、準備は万端!




