ひまわり祭り1日目
ひまわり祭り当日は、雲ひとつない晴天だった。
ナナとロックが商品を並べる横で、モモとコウが椅子にちょこんと座っている。
コウが自由にペンキを塗ってモモの肉球スタンプがペタンと付いたカラフルな板に、黒とチャコールグレーで『67 アトリエ・ロクナナ』と書かれた看板が目を引く。(チョークが無かったので黒板は諦めた)
テントの横で『特殊効果が付加アクセサリーあります』の布が揺れる。
テーブルに白い布をかけ、レースで縁取ったクリーム色の薄手の布を重ねてかける。
ロックが『毒耐性の特殊効果が付加してあります 銀貨1枚』『麻痺耐性の特殊効果が付加してあります 銀貨1枚』『体力回復の特殊効果が付加してあります 銀貨1枚』と書いてある30cmくらいの布にそれぞれ数個ずつ、小さなドロップ型の天然石が揺れる片耳用スタッドピアスを並べていく。
ナナは『体力回復&魔力回復 複数付加のブレスレット 金貨1枚』『体力回復&毒耐性 複数付加のネックレス 金貨1枚』と書いた板のフックに、ブレスレットやネックレスをかけていく。ナナとロックの守り石のようなネックレスだ。
ロックは「特殊効果2種類付加で、この値段はだいぶ安い」と言うけれど、露店で金貨の商品を出すのは勇気がいる。
革ひもに大穴の天然石ビーズを通したブレスレットと髪紐は、それぞれ銅貨1枚。若いカップルがお揃いで付けられるようにプチプライスだ。
地球で作っていたような各種ビーズを連ねたネックレスは、今日は2本だけ銀貨3枚で出した。苦労した割に特殊効果付加のピアス3個分だと思うと複雑だ。
ナナが作ったガラスビーズは、制作に時間がかかるので今回は出さない事にした。
パンパンパンと花火のような音がして、ひまわり祭りが始まる。噴水付近には『ひまわり娘コンテスト』の投票所が設置されて、候補の娘達が微笑みながら手を振る。
噴水広場から伸びる東側の道から、人の波がやってくる。
「こんにちは、ロクナナのナナさん!噂通りきれいな黒髪ですね!」
オレンジ色のワンピースが似合う可愛らしいお姉さんが1番目のお客さんだ。
「いらっしゃいませ!髪を褒めてくれてありがとう」「いらっしゃい、自由に見ていってくれ」ナナとロックがテントに迎え入れる。
「いらしゃいませっ」コウが張り切って挨拶する。モモも尻尾をパタパタさせる。
コウとモモに、お姉さんがホワンとした微笑みを向ける。
お姉さんは特殊効果を付加したピアスが欲しいようで、1つ1つ吟味するように眺める。
「なにこれなにこれ、綺麗なオレンジの石を細いワイヤーで留めてるぅ、このピアスかわいー!・・・えっ?弱毒耐性じゃなく毒耐性じゃん!」女性が目を丸くする。鑑定ができるようだ。
「そこのは全て毒耐性付きですよ、鏡があるので合わせてみますか?」ロックが手鏡を出す。
「買う!これ買う!ああ、でも、こっちの麻痺耐性の赤いのも捨てがたい・・・うーん、どっちも買う!お金足らないからギルドに取りに行ってくるから、ちょっと待ってて」
「はーい、お取り置きしますね」ナナが、小さい木皿にカーネリアンと赤い瑪瑙のピアスを乗せて取り置く。
「またきてねっ」コウが手を振る。お姉さんは手を振り返して走って行った。
ロックの強さとナナの魔法で『67』は、マリンナでは有名パーティだ。それだけで露店を覗きに来る冒険者も多い。
「付加2種類?!・・・本当に2種類ついてるな・・・これ毒耐性と麻痺耐性の組み合わせはない?あったら高くても絶対買う」ナナは、出そうとしたけれど、ロックが反対した組み合わせだ。
「すみません、今回は無いんです」
「無い物はオーダーしてくれ。オーダーなら石とデザインも選べるぞ。ただ、露店の値段よりは多少高くなる」
「オーダーできるのか?ならオーダーしたい。仲間の分も頼むかもしれないから後でモリスの名でギルドに伝言を入れておく。今回は体力回復&魔力回復のコレを買ってくよ」
「はいっ、こちらがしょうひんです」ナナが包んだ商品をコウが小さな手で渡す。
「坊主、お手伝いえらいな」モリスさんがコウに微笑む。
「ありがとございますっ」コウがほわわと微笑む。モモがコウの頬を肉球でポフポフとたたく。
モリスさん、目尻を下げてニッコニコだ。
「「ありがとうございます!ご連絡お待ちしています」」
「お金持ってきましたっ!」オレンジのワンピースが勢いよく目に飛び込んでくる。
さっきのお姉さんが戻ってきて、ピアスを2つ買って帰った。
この後もお客さんは次々とやってきて、ナナもロックもてんてこ舞い。ご飯を食べる暇もない。コウとモモには持ってきたサンドイッチを食べさせたけど、ロックとナナは腹ペコだった。
ひまわり祭り1日目、持ってきたアクセサリーは、たった5時間で完売した。
テントの中を片付けた後、ナナのサコッシュに荷物をしまい、腹ペコを満たすべくナナ達は美味しい物の屋台を巡る。ナナがモモを抱き、ロックがコウと手を繋いで歩く。
ナナ達は、あちこち見ながらゆるゆると歩く。でっかい腸詰を挟んだパンを齧りつつ、甘いパイやしょっぱいパイを選んだり、蜂蜜飴の量り売りをたくさん買ったりしながらお祭りを楽しむ。
今日はベン親方の工房近くの川の下流で、少しだけ花火があがる。方向的に家の庭から見えるから、ナナ達は帰ってから見る事にした。
順番にお風呂に入って着替えた後、冷たいお茶を持ってみんなで庭に出る。
へーリオスの花火は、チカチカと弾けるような花火だった。ナナは、日本の花火が少し懐かしい。花火はすぐ終わってしまった。
家に入って、大きなテーブルの横のラグにみんなで座る。コウとモモは眠そうだ。
ナナがロックに、日本のお祭りの食べ物の話をする。カキ氷、お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、りんご飴、鈴カステラ。
「綿あめの説明って難しい・・・」
そのうち、魔法で綿あめを再現したい。新たな野望を抱いたナナだった。




