なんか呼ばれた気がして
ナナとモモとロックをよろしくお願いします。
ナナは、ひとしきり威嚇の練習をしたあと、椅子に座ってスマホに表示された『マイステータス』の色々な項目を、ひたすらタップしていた。
名前:ナナ(14才)
職業:未定
レベル:1
体力:20
魔力:502
攻撃力:8
防御力:22
素早さ:19
特技:金属加工・石加工・アクセサリー作成・魔力付与・鑑定・言語翻訳・充電・威嚇
得意魔法:水(氷)・火(炎)・風・金属
ファミリア:モモ(黒猫・メス)
称号:光と共に渡りし者
現在位置
マイステータス、表示されている項目全部がタップできる。
タップした先の項目もタップできる。
更にその先の項目もタップできる。
うん、これ、際限ないやつだ。
結論、必要になった時にそれっぽい項目をタップしよう。
今すぐ必要じゃないなら、ひとまず先送りだ。
「モモちゃん、お水のむ?」
「のむー」
ナナは、モモちゃんにかわいく手のひらからお水を飲んでもらって、癒される事にした。
お水を飲むモモちゃんに癒されたあと、ナナはモモちゃんを膝にのせて、椅子の背もたれに寄りかかってウトウトしていた。
こんな場所で寝るのは危機感も抵抗感もあったけれど、何しろ色々なことがありすぎて、体力も気力も尽きていた。
こっくりこっくりと舟を漕ぎ始めたころ、突然トントンと外側から、風車のドアを叩く音がした。
ナナは咄嗟に、内側の閂ってかけたっけ?と、飛び起きた。
閂はかかっていた。いつかけたか忘れたけど、自分が無意識に鍵をかけるタイプでよかったと、ナナはホッとした。
「誰かいるのか?小雨が降っているんだ。寒いから入れてほしい」
小窓から光が入ってくる。ランタンか何か持っているのかもしれない。
ナナは、メッセージの人からメッセージが来ていたことを思い出した。
メッセージ:『そこで待っていれば人が来ます』
メッセージ通りなら大丈夫だと思うけど、どうしても最悪の事態を考えてしまう。
そうだ、モモちゃんの野生の勘に頼ろう。
ナナは、モモちゃんに丸投げする事に決めた。
「モモちゃん、モモちゃん、この人入れても大丈夫かな?」
「わからない」
「モモちゃんは、嫌?嫌じゃない?」
「嫌じゃない」
「じゃあ、まずは話してみるね」
ナナは、ドアに向かって話しかける。
「どちら様でしょう?」
「冒険者だ。危険はない」
「なぜここへ?」
「デュシス森林へ魔物を倒しに行った帰りなんだけど」
「帰りなんだけど?」
「わからない。なんか呼ばれた気がして」
ナナはドアを少しだけ開けて、覗いてみた。
白っぽい髪色の高校生くらいの男子が立っていた。
高校生男子のランタンが室内を照らす。
現在スマホの時計は20時10分。滞在2時間でやっと部屋の全貌が把握できた。
明るいって素敵。
さっきまで見えなかったから気付かなかったけれど、壁には大き目の掲示板みたいな物があった。
小麦の粉ひき予約表らしい。
椅子だけじゃなくて、寝ずの番用らしい毛布も置いてあった。
「私はナナ。この子はモモ」
「俺はロック。冒険者だ」
ひとまず挨拶を済ませたナナとロックは、個人面談のように椅子を対面に置いて座っている。
「呼ばれた気がするって言ってたけど、詳しく教えてもらってもいい?」
「詳しくもなにも、良く分からないんだけど。呼ばれた気がして立ち寄った」
「呼ばれた気がして?」
「呼ばれた気がして」
「なるほど・・?」
「呼んだのはナナ?」
「呼んではないけど、ロックが来てくれてありがたいかも」
「呼んではないんだ」
「うん。でもランタン持ってたし」
「暗かったもんな」
「うん。それに聞きたいことも色々あったから」
「俺に?」
「うん。ロックにっていうか、誰かに?」
「そっか、それで聞きたいことってなに?」
ナナは、手をぎゅっと握る。
「この世界の色々を」
ナナは、ロックにこれまでの事を話すことにした。
ナナ、この世界で初めて人間に出会った!
白っぽい髪色の高校生ロックの髪色は、シルバーアッシュです。