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ロックゥ!衆目の中で爆弾発言!

討伐の報告をしにギルドに寄った帰り道のこと。ロックがものすごく嫌そうにナナに告げた。


「『67』に、ジャイアントキラービーの一斉討伐と巣の撤去依頼の声がかかった」


ロックの眉間にしわが寄る。ナナが、手を伸ばしてロックの眉間をすりすりしながら聞く。


「ビーって事は、蜂?」


「そうだな。正直この前の事もあるし、俺はだいぶ気が進まない」


「気が進まなくても、誰かが困ってるから一斉討伐になっているんでしょう?」


「そうだな。蜂に刺された人達がいたのかもしれない。巣を何個叩くのかしらないが、おそらく数が多いから本気でやらなければケガするし、本気でやればおそらくまた目を付けられる」


「それは、前回と同じって事だよね」


「ナナを狙う輩が前回以上になる可能性だってある」


ロックが、他のパーティの冒険者を『輩』呼ばわりしている。ギルドでもピリピリしてるもんね。ナナは、ロックの手を握る。


「それは、ギルドで声をかけられるのと対応変わらないよね。ただただ断るだけ」


「ナナは、平気なのか?」


「平気かどうかは、うーん、わからない。でも彼らのために行動を制限されるのは、何だか嫌」


ロックは、顎に手を当てて考え込む。ロックは、いつだって自分の立場よりもナナを優先しようとする。

でも、ここで冒険者として暮らすのだから、義理を果たすのはだいじ。


「あ、これって、蜂蜜採れたりする?」


「採れるな。巣を撤去したパーティは、巣の中の蜂蜜の権利がある」


「よし、じゃあ、蜂蜜のために頑張ろうよ!高価な蜂蜜がしばらく食べ放題だよ!コウもよろこぶよ!」


「・・・わかった。でも、ナナが嫌な思いをしたら離脱だ」



ここからは、作戦会議だ。


「討伐数は何匹?」


「達成がジャイアントキラービー10匹、目標20匹。ジャイアントクィーンビーなら1匹で目標達成だ。ジャイアントクィーンビーを倒したら巣を撤去だ」


「キングクロコダイルの倍かー」


「大きさが半分だからな」


「ちょっと待って、蜂でキングクロコダイルの半分って、だいぶ大きいよね?地球では、蜂の駆除に煙を使うんだけど効くかな?」


「分からないが、次から次に来るから危なくて試せないな」


「炎で燃やす?」


「巣に火が付いたら蜂蜜採れないぞ」


「あー、それはダメ」


「蜂が前方から押し寄せるから、剣を振るだけで倒せると思う。針に毒があるが、ナナの守り石で何とかなる」


「それなら、針を丸い氷で包もうか?蜂のお腹ごと。例えば私が複数同時に氷でお腹を包んだら、ロックは時間内に全部とどめを刺せる?」


「複数って、どれくらい?数によるな」


「うーん、最低でも3匹ってところかな。氷魔法の効きが良かったら5匹くらいかな」


「それくらいなら時間内にいけるな。この剣、すげー切れるし」


「じゃあ、それでサクッと倒そう。私、見える範囲の蜂のお腹をガンガン凍らすから、ロックはそれをスパスパッとやっちゃって」


「ふふっ、目立つ事この上ない作戦だな」


「目立とうがどうしようが、そんなに変わんないよ。多分、こっちの様子伺ってるし」ナナが嫌そうに鼻にしわを寄せる。


「そうだな。断る相手が数人増えるくらいか」ロックが、ナナの鼻の皺を人差し指でなでながらニヤリと笑う。


ロックとナナは顔を見合わせると、クスクスと笑った。夕焼けの中、手を繋いで笑う影が長く伸びていた。




ジャイアントキラービーの一斉討伐当日は小雨だった。天気が悪いせいか、参加パーティは前回より少ない。


各パーティのリーダーが、受付で依頼を受ける。ロックも受付に並ぶ。ナナは、ロックを眺めながら列から離れて待っている。


「あなた、付与できる魔法使いよね?ロックと組んでる」背の高い美人が、ナナの目の前を遮る。


「はい、そうですよ」ナナが、少し警戒心を強める。美人の剣呑な目、怖い。


「うちのパーティの誘い、断ったって聞いたけど?ちゃんと考えて決めたのかしら、パーティの誘いはね、あなたの為でもあったのよ?」


咎めるような言い方に、ナナはカチンとくる。


「えっと、あなたはどちら様?」


「光の刃のビアンカよ」


「ごめんなさい、存じ上げません。それでは失礼します」


「まだ話は終わってない!」ビアンカの目が更に剣呑になる。


「私と、個人的なお付き合いが一切無いあなた方が、ずっとそばに居てくれるロック以上に私の為になる事を考えてくれると、そう言ってますか?」ナナは、ビアンカの目を見据えてゆっくりと問う。


「・・・冒険者なら、上を目指すべきでしょう?」


「目指す、べき?そんなの人それぞれでしょう。私はお断り」


ピリッとした空気が流れる中、ロックがナナとビアンカの間にスッと入り、ナナを背に庇う。

よかったロックが来てくれた。ナナは、ホッして肩の力を抜く。


「ビアンカ、俺たちのパーティはマリンナを出ない。ナナと話し合ってそう決めてるし、結婚する予定だからパーティの解消もしない」


周囲がシーンと静まりかえる。


ロックゥ!衆目の中で爆弾発言!目を見開いたまま「けっこん」と呟くとナナはポッと赤くなり、ロックを見上げる。


「ナナ、行くぞ」「あ、はい(真っ赤)」


ロックがナナの手を引いて討伐場所に歩き去るのを、受付前のパーティは呆然と見送るのだった。



「あれはムリだな」誰かがポツリと呟いた。




討伐が終わり、皆が帰路につく。


結局『67』は、ジャイアントキラービー40匹とジャイアントクィーンビー2匹、巣を2個撤去した。報酬は2人でなんと金貨2枚だ。


ナナの氷魔法は一度に蜂7匹を凍らせた。ロックは剣の一振りで、一列にスパッと凍った蜂を片付けた。


ロックの剣はただでさえ無双なのに、ナナが念のためと言って炎付与を乗せていたので、過剰戦力もいいところだった。


ジャイアントキラービーの蜂蜜は、ナナの好きなさらっとしたタイプだ。撤去した巣の蜂蜜引換券を持って、ロックとナナはホクホク顔で家路を歩く。





翌日から、ギルドでナナを勧誘するパーティが激減した。ロックにとって、それが一斉討伐の一番の成果だった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 「・・・冒険者なら、上を目指すべきでしょう?」 冒険者の目指す上って、何を指してるのかな。
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