ナナの誕生日(1)
今日、ロックは1人で討伐に出ていた。ナナが、炎くるくるの件でベン親方の工房に呼ばれたからだ。ナナはアドバイスをもらってくると、張り切って出かけて行った。
コウはジルと約束があるらしく孤児院へ行ったので、モモは家で留守番。今日は、家族みんなが別行動という珍しい日だ。
ロックは、討伐対象のワイルドオールドカウを1頭倒す。
普段はナナの炎付与と氷魔法の足止めがあるから楽だが、1人で戦うと角をよけながら剣を振るうので討伐に少し時間がかかった。
討伐証拠の右角を鋸で落としてから、ワイルドオールドカウの巨体をサコッシュにしまう。
以前は倒した魔物を持ち帰るのは大変だった。背負子で背負うか板に乗せて引きずるかなので、大きな魔物は解体して持てる分だけ持ち帰っていた。
帰りにブルーベリーとサンザシを採る。ロックは、ナナが作ったジャムが好物だ。甘味があっさりしていて美味しい。ナナがジャムを作り始めるとキッチンから甘い香りが家中に漂って、何ともいえない幸せな気持ちになる。
森から出て帰路につきながら、ロックはナナの誕生日の事を考えていた。
今日は7月11日。あと3日でナナの誕生日だ。
チキュウの誕生日の祝い方は分からない。それならロックのやりかたでナナを祝いたいと思った。
へーリオスでは、誕生した季節毎にお祝いをする。季節の終わりに家族や恋人と祝うのが一般的だ。
だから、ロックは生まれた日をあまり気にした事がなかったし祝ったことも無かった。
そもそも、ロックは4年前から1人だったので、誰かを祝うのは5年ぶりだ。懐かしい記憶を呼び起こす。
家族で祝っていた時は、家族で御馳走を食べていた。家族全員同じように祝っていたが、妹の時だけは兄弟で花冠を作って渡していた。満面の笑みで花冠をかぶる妹を思い出す。
ナナの好物を作って、ナナに似合う花で作った花冠を渡そう。ロックは、ナナに内緒で、コウとモモとロックだけで花冠を作りに行くための作戦を練るのだった。
ロックは、ギルドに討伐報告をした後、急いで孤児院にコウを迎えに行く。いつもは町中をゆっくり歩きながら帰宅するが、今日はコウを抱っこして急ぎ足だ。
帰宅したら、モモを探す。モモは窓際で丸まって寝ていた。
「コウ、モモ、話がある。ラグに集合だ」コウとモモがトコトコ歩いてきて、ラグにちょこんと座る。
さあ、作戦会議の始まりだ。




