誕生日がわからないってどういう事なの
ナナとロックは、夕飯にローストビッグラズを頬張っていた。
先日の討伐でゲットしたお肉である。
自分が生きるために他の命を奪ってしまうジレンマに襲われることもなく、ラズベリーソースで美味しくいただく。
モモは、ローストと生と両方食べてみて「焼かないほうが好き」というので、生肉だ。
「そういえば、ロックには、マイステみたいなものは無いの?」
「ある。ギルドで見れる。有料だけどな」
「そうなの?どうやって見るの?」
「触れるとステータスを表示できる板があるんだよ」
「なんか、スマホっぽいね。触れたら見れるなんて」
「そういえばそうだな」
「ロックのマイステって、私のスマホで見れるようにならないのかな」
「ちょっと、ここ触ってみて。撫でる感じで。まだまだ。角度を変えて。そうそう。あ、終わった」
スマホの指紋認証に、ロックの指紋を追加する。
「良く見えない指の皺を認識させるなんてすごいな。どうなってるんだ?」
「ごめん、知らない。なんかスゴイ人達が作ったスゴイ技術?」
「なるほど」
「マイステータスを表示って言ってみて」
「マイステータスを表示」
名前:ロック(17才)
職業:剣士
レベル:46
体力:422
魔力:211
攻撃力:263
防御力:114
素早さ:202
特技:発掘・剣技・体術・魔物鑑定・威嚇
得意魔法:身体強化・隠密
称号:冒険者
現在位置
「出た!」
「おお、出た」
「ちょっと待って、ロック」
「うん?」
「17才になってるじゃん!」
「ああ、そうだな」
「そうだなじゃないよ。誕生日いつだったの?」
「知らん」
「知らん?」
「だいたいこの季節の、このあたりくらいしか分からない」
「それって、一般的に?」
「そうだな、一般的に」
「そういえば、暦ってどうなってるの?時計とか」
「暦はあるが、役所や農家じゃなければあまり気にしない。時間は鐘が鳴るからだいたいわかる」
「冒険者は、暦は気にしないの?」
「依頼書には期限が書いてあるから、そこは気にする。依頼を受ける時に暦を見て、日数を数えながら達成を目指す」
現代日本でスケジュールに追われながら生きていたナナには、なかなかの衝撃だった。
「季節って、どうなってるの?四季はある?」
「四季はある。夏と冬でかなり気温が違う国もあるらしいが、この国にはあまり寒暖差はないな」
「そうなんだ。ちなみに今は?」
「秋だな」
「じゃあ、私が来た時期は夏?」
地球と季節がずれてる。ナナが渡って来た時、地球は春だった。
「そうだ」
「体感温度じゃ違いがわからない・・・」
「そんなもんだ」
「そんなもんなんだ」
そういえば、こちらに来てからもナナは、普通にスマホで時刻を確認していた。
時間の感覚に違和感はなかったから、スマホの時計はへーリオス仕様になってるのかもしれないと思い至る。
あれ?そう考えるとスマホのカレンダーも、もしかしてヘーリオス仕様?
ナナは、慌ててスマホを確認する。
「1か月30日固定なんだ。12か月の他に年末に”年またぎ”っていう期間が5日ほどあるのか。」
今日は9月24日だった。
「年またぎは、その年によって違う」
「そうなんだ。閏年みたいな感じかな?もしかして6日の年もある?」
「あるな。ウルードシはわからないが、4日の年もある。日数は国が決めてる」
「・・・なるほど」
良くわからないけど、わかった。了解した。
この世界でのナナの基本姿勢は『大きな決まり事は理解してなくても、そういうものだと受け入れる』だ。
よく見ると、スマホのカレンダーに、ロックの誕生日が記載されていた。
ロックのマイステータスを見れるようにしたせいなのかもしれない。
ロックの誕生日は、8月12日。ん?これ出会う直前くらいじゃない?
「ロック、出会った時には17才だったかも」
「そうか」
「来年からは8月12日、絶対お祝いするよ!」
「来年。そうか来年か」
「そうだよ!来年からずーっとだよ!この辺の日でみたいな感じじゃなくきっちり8月12日に!」
「そうか」
「それまでに、竈でケーキ焼けるようになる!絶対!」
「・・・楽しみだな。ナナの誕生日はわかるのか?」
「私の誕生日は7月20日だよ」
「その日もお祝いしよう」
ロックとナナは、来年の夏に思いを馳せる。
シーズンが変わってから、やっと暦を気にするナナ・・・。
誕生日をあまり気にしないのはへーリオス全体の話です。その季節に生まれた子をまとめて祝います。
子沢山だった影響で、ロックの家では更にざっくりと春夏まとめて祝ったりしていました。




