その声の真実は誰に聞こえるのか…
始めて掲載させていただきます
よろしくお願いします。
1章 彼女の声
あなたは、素敵な人です。
あなたは、カッコいい人です。
あなたは、優しい人です。
あなたは完璧な人です。
そう、あなたは完璧でなければならない…
私は、高校2年になる女子高生。部活は吹奏楽に入っていて、トランペットを担当している。始めて半年になるが、少しづつではあるが、音が出せるようになるのは楽しい。
成績は普通位で、友達もそこそこにいる平凡な少女である。
そんな私が、あなたと出会ったのは、入学式の日だった。
その日は、朝から遅刻をしてしまい焦ってた。
急いで制服に袖を通して、朝ごはんを食べる事なく、学校に駆け出した
校舎に着いた頃には入学式は始まっていた。
しかし、校舎の中は複雑で迷子になってしまった。
朝からのバタバタに続いて学校内で迷子とは、自分が情けなくて涙がでてくる。
そこで迷っているとあなたは現れた。
背が高く、すらっとした人だった。
「こんにちは、新入生の子かな?式は始まっているよ。」
「さぁ涙をふいて。」あなたは、きれいなハンカチで私の涙を拭った。
「そうかい、大丈夫だよ。」
「場所はわかるかな。体育館はここから階段で下に降りて、まっすぐ行った突き当りを曲がると見えてくるよ。」
焦っていた私は、ろくにお礼も言わず、立ち去ってしまった。ハンカチも預かったままであった。
素敵な人であった。
また会いたいと思っているとその機会はすぐに訪れた。
二回目は部活動の紹介のために新入生が集められた日であった。
野球部をはじめ、サッカー部などの運動系、続いて文化系などの紹介を終えて
私には、ピンと来るものはなかった。
正直に言ってしまえば、このキラキラした人たちの中に自分が入っていける自信がなかっただけだった。それをやりたい部活はないなどと言い訳をしていただけである。
そんな暗い気持ちで校舎を歩いていると、どこからか、きれいな音色が聞こえてきた。この学校は迷路みたいな作りをしている。創成者の意図があったらしく、学生に常に思考させるのが方針らしい。
校舎の奥から響く音色をたどっていくと、小さな庭を見つけた。
そこに、あなたはいた。バイオリンを奏でて優雅に庭に立っていた。
さながら、一筋の日の光が射す先に咲く誰も見たことのない花のように。
私に気が付いてあなたはほほえみながら近づき
「やぁまた会ったね。」
「君はいつも泣いているね。」そこで初めて自分が泣いているのが分かった。
感動して、歓喜が極まった涙である。
「君に渡すハンカチはこれで二つ目だね」
あなたに、借りたハンカチを返そうと思い洗って部屋にあるが、今日は持ち合わせていない。
「そんな事、大丈夫だよ。女性にハンカチを渡せるのは男の特権みたいなものだからね。」あなたは笑って私に語り掛けてくれた。
それから、色々な話しを聞いてもらった。部活の事や将来の話など、あなたは黙って私の話を聞いてくれた。始めての感情だった。男性にこんなに話をした事はない。ドキドキしすぎて、心臓が爆発するのではないかと思った。こんなに鼓動が激しくなるのは初めてだった。
優しい人であった。
それから、私は吹奏楽部に入部した。
楽器を奏でた事はなかったから、なんとなくトランペットを選んだ。
少しでもあなたに近づけると思って入部した。
しかし、どの先輩に聞いてもあなたの事を知っている人はいない。
誰に話してもそんなにすごい腕前なら知ってるはずだよ言われた。
あの感動やこの気持ちは本物である。
あなたは、一体誰なのでしょうか?
そんなあなたの正体を知るようになるのは、その年の夏の事であった。
あなたは素敵な人
あなたは優しい人
あなたは完璧な人
そう、あなたは完璧な人だった…