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第2話 騎士見習い、くノ一ガチャで召喚する

第3話は12時頃投稿予定です。

 僕の足取りは重かった。

 僕は二軍騎士たちが住むという宿舎へ向かって、木が生い茂る森の奥へ進んでいた。


「ここ、だよな……?」


 僕はようやく、森の中にある宿舎を見つける。

 しかしその建物は外から見ても老朽化が進んでいる事が分かるほどだった。しかも宿舎と呼ぶには小さい物置小屋のようなもので、二軍騎士というのが普段どんな扱いをされているのかが目に見えて分かるようだ。


「くそ……けど、ためらってもしょうがないよな。……入るか」


 予想以上の汚さにあ然としていた僕だけど、気を取り直さなきゃいけない。

 二軍からでもがんばれるはずなんだ。立派な騎士だって目指せるはずなんだ。

 そう自分に言い聞かせて、僕は宿舎の扉を開けていった。


「ごめんくださ……」

「おい、踏んでるぞ」

「え!」


 僕が最初に目にしたのは、僕の足元で横になっている太った男。

 一応鎧を着ているので騎士のようだが、どうもこの人のマントを踏んでしまったらしい。


「あっ! す、すみません! 気づかなくて!」

「いいよ。久しぶりの来客だもん。そういう事もあるって」


 騎士の宿舎でそういうの、あるのかなぁ……?

 疑問に思っていた僕は、のっそりと立ち上がる男に注目した。


「オレはオータクマ。二軍騎士の隊長やってんだ。で、ここには何の用?」

「あ、あの、今日からここに配属になったので来たんですけど」

「ああ、アンタがヤークトか。よろしくな!」


 オータクマと名乗る隊長と握手をかわす。

 かわした隊長の腕は、騎士とは思えないほどに太っている。

 いや、腕だけじゃない。顔も体もブクブクに肥えている。まさにデブだ。


「じゃあせっかくだし、みんなの事も紹介してやるよ」


 何がせっかくなのか分からないけど、僕は隊長のあとについていく。

 数歩歩いた先に見えたのは、居間のように見えた。

 見えたと言ったのは、小汚く散らかった大部屋で三人くつろいでいたからだ。


「紹介するよ。キャルキャル。魔法担当な」


 最初に紹介されたのは、金髪で髪が長い女の人。

 こちらをチラリとも見ず、鏡の前で髪を整えている。


「新人入ってきたから。ヤークトっていうの」

「あっそう、よろしく。今忙しいから後にして」

「……まあコイツ、魔法騎士で魔法そこそこ使えるから」


 軽くあしらわれてしまう隊長。そのせいか適当な紹介で終わってしまった。

 身だしなみに忙しいんだろうか。タイミングが悪かったんだと僕は思う事にした。


「んで、二人目な。……おいカリメロ! こっち来て挨拶しろ!」


 隊長の呼びかけに応じて、小さな騎士がこっちに向かってくる。

 その騎士は兜をかぶったままだった。


「こいつはカリメロ。体はちっこくて歳は14歳。こう見えて騎士の盾担当だから」

「ん……」


 見た目通り幼い子だ。

 つぶらな瞳で、表情は少ない。おとなしそうな子だ。

 僕の肩くらいしか背丈がない子に、盾役なんて務まるんだろうか……?


「ちなみにコイツ、女だから」

「えっ」

「えっ……って何? 男だと思ってた?」


 確かに、髪が兜で隠れて性別不明だった。重い盾を持つくらいだから一応男かと……。

 それを見抜かれたのか、カリメロと名乗る子にえらく睨まれているのだ。


「コイツ男に間違われるの、すげぇ嫌がるから」

「そ、そうなんだ……よろしくね、カリメロ……ちゃん」

「カリメロでいい」


 僕は取り繕った態度で握手をかわす。小さな手を握っている間にカリメロは無表情に戻っていく。

 とりあえずやり過ごせたようだった。


「んで最後に、小間使いのデイタナだ。ヒョロくて体力ないからちょっと動くとすぐバテちまうんだ」

「じゃあ、イスに座ってくつろいでるのも、休憩って事?」

「ああ。井戸から水を一杯くんできただけでもうヘロヘロなんだとよ」


 たった一杯……。大丈夫なんだろうか。小間使いって、他にも料理や掃除や装備の荷物持ちとか色々やる事が多いと思うんだけど……。

 大丈夫だろうか、この宿舎。小屋といい人といい色々と不安なんだけど……。


「ちなみに、普段の訓練は……」

「ああそれ、自由」

「自由?」


 自由と言われて、僕は思わず聞き返してしまう。


「そ、自由。訓練メニューとか特にないから。自主連って事で好きにやっといて」


 さも当然という口調で答えられてしまった。

 どういう事だろう。二軍とはいえ騎士のはず。有事の時は戦うはず。なのに自主連って……。

 いやそもそもおかしい。僕が見た限り、誰も訓練しているように見えないぞ?


「ちなみに、隊長は何を……?」

「オレ? オレは昼寝」

「昼寝……」

「今日もぐっすり寝るつもりだったんだよ。お前来たからそれもパーになったけど」

「す、すみません……」

「いいよ。訓練したかったらあそこに剣用のサンドバッグ置いてるから」


 隊長が指差した方向に視線をうつすと、いかにも長いあいだ使われていないような太い丸太が横たわっている。


「ああそれとな、お前のベッド、あっちだから」

「あ、あっちって、……大部屋の隅の方なんですけど……」

「オレたち二軍騎士に個室とかねーんだわ。まあ最初だけだ。すぐ慣れるだろ」


 よく見ると、僕用に指定されたベッドと同じものが等間隔で置かれている。

 本当にプライベートはないようだ。女の子もいるのに……そんな扱いに不満はないんだろうか。


「じゃあ、あとはゆっくりしてってくれ。じゃ、オレもう一眠りしてくるから」

「あ、ちょ……」

「ちなみに、オレの事オータクマでいいよ。隊長って柄でもねーし。……んじゃ」


 隊長……オータクマはその場から立ち去ってしまった。こちらに質問する機会を与えずに。

 何だろう……この見捨てられた感は。僕はとにかく、呆然としていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「はぁ……」


 僕はため息をはいていた。

 二軍騎士へと降格。適当な紹介。劣悪な宿舎といい加減な二軍騎士たち。

 いい事など一つもなかった。


 とりあえず自主連しよう。そう思って僕は宿舎から外に出た。

 まずは周囲の探索をと思い、鎧を装備し剣を腰に携え出発する。

 いくらか森の中を進んだところで、広場にたどり着いた。

 木々に覆われておらず、問題なく剣をふるえる。適度に草がなく土が見えている分ふんばりがききそうだ。


「当面はここで……訓練かな」


 追放された虚無感を忘れようと、僕は気持ちを切り替えようとする。

 そうだ。僕は騎士見習いからがんばってきたんだ。誰がなんと言おうと僕は努力してきた。

 レアスキル継承の儀式だって確かに終わらせて……。


「ん? レアスキル……」


 ここで僕は思い出した。

 そうだ、クノーガチャとかいうよく分からんアレのせいで僕は追い出されたんだ。

 星がゼロだなんとかって笑われたんだ。

 このレアスキルがそもそもの原因なんだ!


「この際だ。どんなハズレ効果になるか使ってやろう……」


 僕は内心、ムシャクシャしていた。

 どうせ得たレアスキルだ。使ってみて損はない。

 本当にくだらない効果しかうまないんなら、それはそれで笑い話になる。

 二軍騎士たち相手にみやげばなしにしてやろう。


「ステータスオープン! スキル選択!」


 僕は自身のステータスを開き、レアスキルを見つける。初めて使うスキルはこうやって自分で探さないといけないから面倒だ。


「えーと何……クノー……じゃなくて、くのいち……と読む……どうでもいいけど」


 レアスキルに読みがなが振られていたので目を通しておく。正式名称で呼ばないとレアスキルが発動しないからね。


「それじゃあ……レアスキル発動! レアスキル★0【口寄せ:くノ一ガチャ】!」


 僕は手をかざし、スキル名を声高に叫んだ。

 すると――



 ――ドロン!

 ――ドロロロロロロロロロロロロロ……!



「えっ……!」


 どこからともなく聞こえる太鼓の音。

 そして――



 ――パンッ! パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン……。



 ――パン!

 ――ブワワワワワワ……!



「うわっ! け、煙……!」


 僕の眼前で湧き上がる、白い煙。

 木製の棒か何かで強く叩いた時に出る高い音を何回も鳴らしてそれから、煙が僕の周囲を覆ってしまったのだ。

 あまりの煙たさに、思わず咳き込んでしまった。


「くノ一とは、主に仕え忍ぶもの」


 その煙の先から、女の子の声が聞こえてくる。


「忍びとは、闇に生き闇に死すもの」

「あ……え……?」


 煙が晴れていく。

 人の形をした輪郭がぼんやりと、少しずつはっきりと見えてきた。


「くノ一ガチャの召喚に応じSR(スーパーレア)、くノ一あやめ。闇夜から喚ばれ馳せ参じました」

「え……ええっ!」

「これよりアナタを主様(あるじさま)とみなし、以後この身を捧げくノ一として貢献する所存にござる。どうぞ、お見知りおきを」



 レアスキルを使ってみた結果。

 黒い装束を着た女の子が突然、姿を見せてきたのだ。

 しかも僕を、主様だと認定するとか言ってきて。

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