第1話「乙女座神アストレイアが邑を興す訳」
時は紀元前…
は遥かに越えた神話の時代…
その星ではいよいよ生命が生まれ、
過ごしやすい気候も生まれつつあった。
神々は和気藹々とそこまでは暮らしていたが、
何時からか神々は誰の実績でここまでこの星を快適空間にしたのか、日々一番を巡って争っていた。
特にガネーシャは
「ワイが一番やないと嫌や!!」と鼻から息吹いた。
「だいたいワイがおらんかったら、この星は周らんでー!!ワイがおるからこの星は周るし、この星が周るからワイがおるんや」と、よくわからない十分必要条件を大きな声でドヤっていた。
「誰が一番でもいいです…」
女神・アストレイアは神々の醜いマウント合戦に飽き飽きし、神界から別の世界へ赴こうとしていた。
「もういいや、面倒くさい…。誰が一番か決まるぐらいの久遠の未来へ行ってネタバレしとこ。え-っと、時を渡るには…」
そして、時は西暦20XX年、
女神アストレイアは無事・時渡りには成功した…
「ここはどこ?あれ?めっちゃ荒れてるなぁ…この土地…ってか寒…何ここ?」
アストレイアが居た頃のこの星では働かなくても、適当にそこらからちぎってきた果物が潤沢にあり、神も人もなんの心配もせず生きていた。(自分が一番じゃないと嫌という心配を除いて)、アストレイアが居なくなってからは神様も人間も食べ物は働かないと手に入らなくなり、ジメジメとした蒸し暑い日が続いたり、あるいは、雪というものがどっしり降ってくるようになっていた。
その女神にちょこちょこと駆け寄って来る影が見えた。
「…っ!!誰なのよ。アンタ?」との女神の問いかけに、
「忘れたのですか?ボクですよ。ボク。天秤です。」と名乗った。
「あぁ…天秤ね。私が居ない間、元気にしてたかしら?すっかり大きくなって~!!」
「なに言ってるんですかっ!!あなたが他の神々を見捨てて時渡りなんてするからこの世界は滅茶苦茶になっちゃったんですよ。ちゃんと責任とってください。」
「はぁ~…?だいたい私が何をしたって言う訳?」とため息交じりに聞く。
「その逆ですよ。何もしてないからこんな世界になっちゃったんでしょうが…もうとっくに他の神様たちもアストレイア様を認められていて、田畑を耕されていますよ!!」
「あら、そう。で、田畑??えっと・・・田畑って何??」
「アストレイア様が勝手に時渡りなさってから、食べ物がだんだん自然には取れなくなってきて、神様たちがエッサエッサと食べ物を産み出すために作った土地のことです。植物を育てる土地を田畑とか、あるいは単に田圃とか畑とか言ってます。動物を育てる土地は牧場とか色々、命名神がつけましたっ!」
「それは大変だったわね。」
「大変なんてものじゃありませんよ。だいたいアストレイア様の出奔で季節が生まれて、風は轟々と吹き始め、嵐も幾たびも襲ってきたんです。今からでも遅くはありません。もとに戻してください。」
「そうは言われてもね…神通力が時渡りに入ったときから、なんか使えなくなってて…」
「はぁ・・・なるほど…時渡りの代償でアストレイア様の能力は封じられてしまわれたのですね。」とがっかりそうな顔で言う。
「では、神通力をもとに戻すために邑造りをやってください。時渡りの悪因以上の善行を行えば多分、元に戻りますよ。僕は天秤ですからね。それぐらいのことはわかります。」
「わかったわ。それぐらいお茶の子さいさいよ。」
「そのギャグは今の時代では通じませんよ。いつのネタですか?言っておきますけどあなたが時を超えた年数の数だけ邑造りを行ってくださいね。」
「って、どれくらいよ。それぐらいのことはちゃんと言いなさいよ。」
「ざっと、1万年なので、1万邑元気にしてください。そうしないと元の環境には戻せません。」
「えーっ!1万邑~!?」と絶叫する女神。まるでその声は大地が揺れるが如くの鳴動だった。
かくしてアストレイアの"神邑創乱記"は始まるのであった。