4.城下町の祭り―19
「順番に行こうか。先にアイクラさん達が行きますか?」
馬車を空き地に停め、馬車の中に入りながらノジマが言った。
「わたしゃ構わないけど、エミちゃんはどう?」
「順番て?みんなで行けないの?」エミはどういうこと、と口を開いた。それにノジマが答える。
「全員では行けないな。馬車を空には出来ないし、それに男湯と女湯で別れてるし。エミは湯殿は初めてだろうからアイクラさんと一緒の方がいいだろ」
すると老婆も難色を示した。「でも私もここは初めてでね。城下町はあれだろ?何処もかしこも入り組んでいて迷子になるじゃないか。ここもややこしそうだし、エミちゃん連れて行くのは少し不安でね」
「なるほど、それもそうですね」ノジマは少し思案するように顎の無精髭を触わり、リュウの方を振り返った。「じゃあリュウ、道案内がてら一緒に行ってくれ」
「へいへい、だと思ったよ」リュウは後頭部をぽりぽりと引っ掻いた。
「じゃあ行くぞ」
リュウは馬車の奥から引っ張り出してきた洗濯済みの着物を抱えたまま馬車から降りた。何も持たない老婆とエミが続く。
「今日はこんな予定ではなかったからね」とは老婆。エミはそもそも替えの服を持っていないらしかった。
「だったら中で買えばいいか」見かねたノジマは提案する。馬車の中から百円玉を三枚渡してくる。
「こんなに持ってくのか?」渡されたリュウは思わず聞いた。
「そりゃな。ここに売っているのは多分浴衣だし、明日の祭りも兼ねて少しいいのを買うといいと思ってさ。無駄遣いはするなよ」
「分かってるよ」信用ねぇのかよ、と笑いながら言ってやる。
「よし、じゃあ行くぞ」音頭を取るようにリュウは、百円玉を握り締めた手を上に突き上げて湯殿へ踏み入れた。




