4.城下町の祭り―10
オオトカゲはエミの方を見上げている。けれど突然呼び出された為か、眼球をギョロギョロと動かした。
「ガブ、これ引っ張って!」エミはオオトカゲの落ち着くのを待つことなく言う。すると、指示を出されたオオトカゲはその口をばくりと大きく開けた。そのままエミの右側のハーネスに噛みついた。
「ガブ、ゆっくりだよ、ゆぅっくり」
エミの声に合わせるように、オオトカゲはハーネスに噛みついたまま徐に頭を下げた。それに合わせてエミの視界も低くなる。
そして無事、地面に両足がついた。
「よしよし、いい子だね、ガブっ」エミはオオトカゲの下がった鼻先を撫でてやる。するとオオトカゲは嬉しそうに、ふんふんと鼻息を出した。
いてて、と後ろから聞こえ、エミは慌てて振り返った。リュウとノジマは頭を、老婆は腰を思い思いに擦っていた。
「ごめんなさいっ」エミはすぐさま頭を下げた。
すぐにでも拳が飛んでくるかもしれない。蹴り飛ばされ踏みつけられるかもしれない。エミの脳内には523番のことが浮かんでいた。
ササキはすぐ彼のことを殴り付けた。コンドウもエミが間違いを犯すと、ササキ程では無いものの手を上げた。その度に彼は、お前はこうしないと分からんらしい、と言うのだった。
だから、ノジマ達を怖い目に遭わせてしまったから、エミは身を固くした。殴られても仕方がない、といつものように自分を納得させる。
「いや、大事にならなくて良かったよ」そんな、ノジマののんびりとした声がした。
え、とエミは思わず顔を上げる。するとそこには怒り心頭の顔も、呆れ顔もなく、ただ薄い苦笑いが並んでいるだけだった。
「びっくりしたぁ。何がどうなったのか」リュウが後頭部を擦りながら呟く。
「びっくりしたねぇ。わたしゃ引っくり返ってしまったよ」と老婆が笑う。
「アイクラさん、大丈夫ですか」とノジマが老婆を気に掛ける。
これは、これは何だろう。エミには訳が分からなかった。




