4.城下町の祭り―2
ササキは自分の手を見ると、こびりついている少年の千切れた髪を忌々しそうに振い落した。
少年は地面に倒れたまま頭を抱えている。
「糞が。どいつもこいつも使えない愚図ばかり。お前らが能無しの愚図なのはどうでもいいんだ。それで私に迷惑をかけてくるのが心底腹立たしいんだよ」ササキはそう言うと不意に右足を振った。その爪先が倒れる少年の脇腹に入る。
少年が息を詰まらせたように喘いだ。その瞬間、ササキの顔が不細工に歪む。何が楽しいのかコンドウには分からない。召喚者はキタノクニの最高戦力だ。それを痛め付けて何とするのか。戦時に役に立たなかったら一体どうするのか。
「ああ、そうか。そうすればいいのか」ササキがふと独り言のように言葉を溢した。そしてコンドウの方へと向き直る。「私の有能さを示すのにはちょうどいい」
コンドウはその言葉に返事をするのも億劫だった。そのまま黙っていると、ササキが気色の悪い笑顔を浮かべてコンドウを見据えてくる。
「お前がミスしてくれてよかったよ。これで私の力が際立たされると云うものだ」
それからササキは、いつまで寝ているんだ、と少年の細い首筋を鷲掴みにして引き上げる。息が出来ないと藻掻く少年に、唾飛ばすんじゃねぇよ汚ぇだろ、と口汚く唾を飛ばす。
生温く、べたつくような風が吹く。樹海の中は清涼な空気で満ちているはずなのだが。コンドウはその原因を目の前の男のせいにする。
こいつがいるだけで、澄んだ森の空気さえも澱んだものになるに違いない。




