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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

お嬢様……

お嬢様の中の人は…… if 男でした。

作者: あかね

 ああ、やだな、気持ち悪い。

 と思ったら意識がなくなった。


 ぱちりと目を開ければ知らない天井だった。

 客間、だろうなとあたりをつける。


 頭痛が続くがこのまま寝ているわけにもいかない。


「ありえぬ。なぁにが、良い縁談だ」


 ロマンス小説のヒロインに生まれ変わるとかなんの冗談だ。しかも前世で担当していた作家の作品とかひどくないか?

 ないなー。この男ないな-と駄目出しをしまくったのに、なぜかベストセラーになったヤツじゃないか。


 やっぱり顔なのか、顔なのか。


 次回作を見ることもなく、ぽっくりと逝って、今ロマンス小説の世界にいるの。現代日本をベースにした世界なので、まだ適応可能なんが。


 ありえない。


 尚、私の趣味は時代小説である。盛り上がりすぎる作家に冷や水を浴びせるのが仕事だった。


 起き上がって、部屋に他にも人がいたことに気がついた。

 ああ、いたなぁ。

 次回作の主人公にしようかと言っていたメイド。


「良いところにいたわ。聞け」


 秘密の女装メイドとか誰得なのだろう。

 まあ、秘密を握って仲良くするなら問題ないだろう。


 黒髪をひっつめて眼鏡の委員長とでも言いたくなるような見た目だ。今は専属ではないけれど、これからおねだりすればよい。


 ……あれ、おねだりってどうするんだ?


 まあ、そのうち思い出すか。ここまでの十二年間無事に大企業の社長の娘をやっていたわけだし。



 ……と思っていた頃がありました。

 あれから3年。

 中等部を黙りを決め込みながら卒業し、自宅を離れ寄宿舎に入れられました。女子と二人部屋とかもうムリ。

 自室では隠しきれないおっさんくささが滲み出ていて、白い目で見られていたのに。

 同室になれば安息の地は失われる。


 いまではお付きになった女装メイド、改め、リンに泣きつきましたとも。

 今では、彼女、いや、彼がいないと女性の生活ができません。何が悲しくて、外見的には異性、中身的には同性に世話を焼かれるのかと思っていたけど、ムリなもんはムリ。


「仕方ないお嬢様ですねぇ」


 にょきにょきと背が伸びて今は175を越える大女になっているけど、今も女装の意味はどこにあるんだろうか。

 クール系出来るお姉様感がある。


 そろそろ女装ムリなんじゃと思っていたが、いつまで出来るのか今では楽しみだ。

 リンは1個上なんだが、同時に入学することになった。本当にすまない。


「ほら、リボンが曲がってますよ」


 仕方ありませんねぇと笑ってリンはリボンを直してくれる。近寄られるとなんだか、どきどきするのはなぜだろうか。


 でかいからびびるのか。

 私は、身長は160にようやく届いてストップした。

 それよりも問題があったのは、巨乳だった。

 これは女性、大変と思った。


 母から受け継いだ童顔と父系から受け継いだ巨乳がここに結実。

 ロリ顔巨乳になりましたとさ。


 えふーとか未知の世界。かわいい下着がなくなる世界がここに。オーダーしたともさ。崩れたら大変だと言われて葛藤の末にやったさ。


 そんな感じになるとまあ、制服でも胸だけがぱつんぱつんで、袖や裾が余るという事態に。

 高等部は女子校になるんだが、同じ敷地内に男子校もある。されに言えば大学もある。


 つまりは男の目がない、ということではない。


 顔より先に見られるというのはイヤなもんだと思った。前世の自分がまあ、見るもんだよと慰めてくるが、そーゆー問題じゃねーんだよ。

 性的に見られるムリ。

 前世が男だのと意識は実はあんまりしていなかった。それはまあ、リンのフォローがあったからだと気がついた。


 二人で歩いているときはそっと影にいれてくれていた。

 高等部では選択授業の違うにより常に二人でいるわけにもいかず、こんな目にあっている。


 男たちが集まって猥談しているのを背後から聞いたことがあるが、卒倒するかと思った。


 前世の自分が謝り倒している気がしたが、ショックすぎた。


 婚約者いるけど、結婚とか出来る気がしない。

 同じ敷地内の大学にいるので、相手からの呼び出しに応じては相づち打つだけの仕事だが。

 最近はちょっと雲行きがあやしい。

 リンを必ず、近くに待機させているが、ちょっと不安だ。護身術を習っていても抵抗できるか自信がない。


 初対面から見てたから好みだったんだろうなぁ。


 死にたい。


 それだけではなく、婚約者は高等部の女の子にもてるらしく、ハブられた。


 ぶち切れて食堂で演説かましたら、敵意が反転して好意になりお姉様になった。私も意味がわからない。

 あんな男が好きだと思われるのが癪だから言ったのに。


 そして、かわいい女の子のハーレムが出来上がった。

 正直言えば、天国だと思った。が、リンは白い目で見てきたのでちょっと反省している。 いや、女の子だけで甘い物を食べに行ったり、買い物したり、遊びに行ったりしたのはとても楽しかった。


 ……結果、次のテスト結果が落下し、両親に怒られることになった。


 そこからリンに叱られつつ、勉強に武道に励み、双方上位の端っこにいれるようになった。勉強についてはリン様である。


 リンは、あまり変わらない。最初からずっと手のかかるお嬢様に付き合ってますといった態度。

 部屋でちょっとだらしない格好でベッドに転がっていても。


「ねぇ、マッサージして」


「仰せのままに」


 少しも焦った様子もない。

 時々、本当に男なんだろうかと思う時がある。ごくまれに和装が必要になった場合、ドレス着用の用事などの時に着付けもして貰う。


 全く、一切、性的な視線を向けてこない。


 元男だからか、ちらっと見られただけでもぞわっと感じるのに。


 手のかかる妹、みたいな。


 ……ああ、なんだか、それはイヤだなと思ったのは、なぜだろうか。



 それから五年。

 今は大学も卒業し、親の会社で新入社員をしています。

 さすがに色々自覚しました。


「え、男装しろって?」


 リンは中性的な性別不詳な男に育っておりました。

 未だ女装してますが、それが趣味ではなく、お家の事情なのは承知しています。

 彼はある世界的企業の創業者の愛人の子です。無駄に壮大な設定だなと昔突っ込んだ気がします。


 本妻に命を狙われたので女装してうちで匿っていたということが真相のようです。無事、本妻の子である弟が成人し、後継者に指名されたことでようやく自由になった、はずです。


「そうですね、最後のわがままなら聞いてあげますよ」


 にこりと笑ったのは最初の頃のままで。

 見込みがないことに心が痛みますが、この日のために色々やってきたのです。


 婚約者の家の不正の証拠をたれ込んだり、彼の実家に突撃して了承を貰ったり、両親を説得したり。

 明日は、私の結婚式。もちろん、準備は万端です。


「じゃあ、また明日」


 そう言えば、いつもと変わらないように背を向けるのかと思った。

 ためらってから手を差し出された。握手だろうか?

 妙に思いながらも手を出せば。


「楽しかったですよ。お嬢様」


 そっと、手に口づけをおとされる。


「良くお休みください」


 呆然としている私を放置して去って行きやがりました。

 寝られるか。


 かくして、私は覚悟を決めて、結婚式をぶちこわし、リンを口説いて結婚したのだった。




 一年後。


「……さすがに度肝を抜かれましたねぇ」


 今では女装していたとは思えない男っぷり。これはアレかな、スパダリとか言うのかな。


「おかげで楽しい毎日です」


「そりゃどうも」


 未だに好きだの言ってこないリンにちょっとだけいじけた気持ちがある。でも、楽しいならいいか。


 まだまだ先のなっがーい結婚生活なんですから、一度くらい言ってくれるようになるでしょう。


 ……たぶん。


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