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5-10

「ご苦労様です、ユイ騎士団長」


「あら、シルティ副団長。ご機嫌よう」


 冒険者達が退散した後に訓練所から出た私を、緑髪の女性が待ち構えていた。

 私の直属の部下、シルティ・ドットである。

 

「待っていてくださったの? 律儀な人」


「団長の側に控えるのが、副団長の役目です。これからはどうか、私にも行く先を一言いただければ幸いです」


「あらやだ。ってことは今日はつけてきたってことね?」


「申し訳ありません。行く先を聞いておりませんでしたので、側に控えておくため止むなく」


「……まあいいです。私は今機嫌がいいので、今日のところは許します」


「ありがたき幸せ」


 シルティはそう言って頭を下げる。

 彼女は大変私に忠実な部下だ。

 忠実すぎてたまに行き過ぎることもあるが、そんなところも可愛い子。

 

「それにしても、良いのですか?」


「何がです?」


「彼ら冒険者を野放しにして。彼らはいつか騎士団にとっても脅威となるかと。すでに人望に関しては、民と近いが故に騎士団を上回っております」


「別に構いやしませんわ。レイお姉様たちと敵対する気はありませんもの」


「ですが……国の力は騎士団であるべきだと私は考えます。それが脅かされているとなると、由々しき事態だと思えるのですが」


 彼女はだいぶ心配性だ。

 そもそも騎士団と冒険者が敵対する必要がどこにあるというのだろう。

 多くの騎士は魔物の討伐という仕事を冒険者に取られたと主張しているが、それが何だというのだろうか?

 元々大した魔物も討伐できていなかったのだから、彼らに文句を言うのはただの八つ当たりでしかない。


「騎士団の威厳がなくなろうと、私の知ったことではありません。それよりも、私はもっと面白いものを見つけました」


「面白いもの……ですか。それはユイ騎士団長のお姉様ですか?」


「いいえ。お姉様も面白いですが、今は違います」


 元はしがない騎士だった。

 私の部下でありつつも、会話をしたこともなければそもそも私は彼のことを知らなかった。

 そんな男が、今や誰もが憧れるような者たちとともにいる。

 

 テオ――――。


 あの男がなぜレイお姉様に気に入られたのか、そして、どうやってあれほどの人脈を手に入れたのか、それを知りたい。

 

「彼の力は、今後きっと必要になるはずです」


「彼……あの元騎士団の男ですか? お言葉ですが、ブラム程度にしてやられるような男の力が必要になるとは思えません」


「分かってないですわね、シルティ。彼の力は、戦闘力などではありませんよ」


「……?」


「ま、私も具体的には分かりませんが。確信しているのは、彼が強い者を惹きつける何かを持っていると言うことだけ」


 ああ、興味深い。

 この退屈な日々に現れた、新たな刺激。

 いっそのこと、レイお姉様から彼を奪ってしまうのはどうだろうか?

 そうすればお姉様は意気消沈して実家へ帰ってくれるかもしれないし、私は私でおもちゃ(・・・・)が手に入る。  

 我ながらいい考えかもしれない。


「いずれ魔王まで味方にしてしまったり……なんて、考えすぎですわね」


「恐ろしいことを……そもそも魔王は勇者様によって封印され、その封印もいまだ解けておりません」


「――――だと、いいのですけど」


 私はキョトンとした表情を浮かべるシルティへ微笑みかけ、そのまま歩き出す。

 彼が今後何を成し遂げるのか、本当に、本当に、楽しみですわ。

短めですが、これにて一旦一区切りとさせていただきます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

二章は九月上旬に投稿を開始します。

今後とも長く続けていくために応援していただけると幸いです。


これからはテオとレイのいちゃいちゃをガンガン書いていきてぇなぁ……。

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