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【9月30日非公開予定】復讐への道



 異世界への復讐、それを決めた私の行動は、早かった。


 まずは異世界に行く方法だが、実はこれが一番簡単なのだ。私は向こうで、召喚魔法を覚えている。それも、単なる使い魔召喚などの小さなものではない。


 それこそ、世界と世界を越えるほどの大規模なほどの魔法を。



「準備するもの、は……」



 そして召喚に必要なもの、これはウィルから聞いたものだ。召喚には大それたものは必要なく、一番必要なものは召喚主の血……むしろ、必要なものはそれだけとも言える。


 無論、それはあの世界が私を選んだことで、あの世界自体が召喚の大部分を補っているからに他ならない。ウィルは、言うなれば形だけの召喚者。


 対して私は、私自身を向こうの世界に召喚する。となれば、勝手も違う。だが、『英雄』となった私にとって、世界を渡る召喚は造作もないことだ。


 ドラゴンの肉とか、エルフの耳のような、向こうの世界にしかないものが必要ならばどうしようもなかったかもしれない。だけど、そんなものは必要ない。


 必要なのは、私の魔力と、肉と、そしてなにか、大きな対価……向こうの世界自体が召喚を助けてくれるのならそんなものは必要ないけど、そういうわけにもいかない。


 だから、なにか対価が必要だ。明確なこれというものはないが、世界を渡るに値するなにかが……



「……なんでもいい。なんでも、もっていきなよ」



 今の私にとって、なにを対価に持っていかれたところでたいした問題はない。贅沢を言うならば、復讐を執行するための目と手と足は残しておいてほしい。


 私に、奪われて困るものなど、もうないのだから。



「家族も、友だちも、もういない。私を待ってると思ってた人は、もういないんだから」



 家族は知っての通り。友だちはいた。けど、正直な話一年も音沙汰がない私を待ってくれているほどに付き合いの深い友だちはいない。


 付き合ってた彼氏はいた。けど彼も、もういない。母の現状を聞き、彼は自殺したのだと聞いた。彼とは喧嘩して、直後に私は異世界に召喚された。私がいなくなった理由が自分にあると思い込み、彼は……


 異世界で得た聴力スキルは、聞きたくないものも聞こえてきてしまう。



「だから、もう……この世界にも、未練はない」



 頬を流れる涙は、果たしてなんの涙だろう。私を待つ人がいなくなった悲しみだろうか。


 私は、もうなにを目的に生きていけばいいのか、わからない。向こうの世界で復讐を成し遂げたら、そのあとはどうなるんだろう。そもそも、復讐とはなにをすればいいんだろう。


 ……考える必要はない。私は、私から日常を奪ったあの世界に、恨みしか持っていないのだから。



「絶対、許さない……!」



 こんな憎しみの感情、勇者パーティーの仲間が死んだときだって、抱かなかった。それほどまでに、この気持ちは大きい。


 床に描いた魔方陣が光り出し、私の体を包み込んでいく。視界が、白く包まれる。この視界が開けたとき、そこは私が、復讐すべき世界だ。


 ………………光が、晴れる。



「ん……」



 まばゆい光が晴れ、目を開く。そこにあったのは、見渡す限りの大草原。少し歩くと、切り立った崖の先に大きな村が見えた。


 辺りには、本来ならば見たこともないような生物がたくさん。一年で私は見慣れてしまったけど、本来ならば元の世界では見ることのできない生き物だ。


 そう……ここは、異世界。異世界パルコガラス。残念ながら召喚者であるウィルのいるマルゴニア王国ではないようだけど……構わない。


 ……どうせ、全部壊すんだから。

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