7.ネコミミ娘の仕事
湖畔のデートは続きます
「それにしても、この広大な湖を一人で調査とはな」
「フィリアの尻尾は千人力なのです」
「九本力じゃないのか?」
「マックス千本なのです」
「……それは、確かに千人力だな」
「にゃっ!?」
唐突に、フィリアが身体をピクンと跳ねさせた。
まるで静電気を受けた時のような反応に、エナは目を丸くする。
「どうした?」
「何かに尻尾を消されたのです」
「消された、だと?」
魔法で動く尻尾が消えるということは、湖の中に魔法を使う何かがいるということ。
二人は同時に警戒を強め、目を細めて湖面を注視する。
しかし、波の揺らぎにも何ら変化はない。
「前々から変だなと思っていた場所なのですが、いよいよ、怪しさ全開なのですよ」
フィリアが引き戻した尻尾は、先端が食いちぎられたように途切れていた。
「肉食の魚でもいるんじゃないのか?」
「お魚だったら、逆に釣り上げて、今日の夕飯の食材行きなのです」
「逞しい限りだ」
「でも、調べる必要はありですよ」
フィリアはエナから離れると、
「ほい、さっと!!」
尻尾を軽く振り回す。
その瞬間、大地に衝撃が走り、尻尾の付けた痕跡は、湖の中央に向け一本線を引く。
まるでレーザーの様に湖面を切り裂いて伸びていく尻尾。
その先に、遺跡が姿を垣間見せる。しかし、いよい遺跡へと届くということろで、尻尾は拒絶されたようにかき消され、次いで湖面がその姿を覆い隠した。
「今のは、ルーン遺跡か!?」
「だと思うのです。結構やばい感じのです」
「どういうことだ?」
「何らかの対魔法の仕掛けがあるということなのですよ」
と、今振るった尻尾を湖から引き上げる。
先ほどと同様に、先端が千切れたようになっていた。
「つまり、あの場まで魔法で到達できても――」
「帰ってこれないかもです。もっとも、フィリアはお姉様と過ごせるのなら、場所も時間も関係ないのですけど」
フィリアはエナの腕にしがみつき直す。
どうやら、自分も連れて行かれるらしい、とエナは何となく感じていた。
ネコミミ娘はちゃんと仕事をしていました