2,聖騎士の憂鬱
ネコミミ少女に蹂躙される日々
「ふぅ!」
満面の笑顔で額に滴る汗を爽やかに拭うフィリア。
背後には、ぐったりと倒れ伏したエナの姿。
太陽もすっかり傾き、峰の頂に差し掛かっている。
「今日もいっぱいお姉様を愛して差し上げたのです!」
「……お前は、絶対に、愛を勘違いしている……」
「えー?」
「自由を奪った人の身体を、延々とくすぐり舐め回すことのどこが愛だ!?」
エナの抗議に、フィリアは明るく笑い返し、
「別の形がお好みなのですね! もっと官能的な束縛が良いのですか? それとも足で踏まれる方ですか? でもお姉様は、きっと縛ったり、踏んだりする方がきっと好き……フィリアは、お姉様だったら蹂躙されても……きゃん、恥ずかしい♪」
「私の性癖を勝手に妄想するな! 一人で盛り上がって勝手に恥じらうな!!」
「もー、お姉様ってば、本当にツンデレなのですから」
「デレてない!!」
「でも、ツンツンと言うより、いつもお姉様は怒っているのですし……はっ!! これはまさしく新しいジャンル! そう、キレデレなのです!」
「私を訳の分からないジャンル分けに巻き込むな!」
力説を否定されたフィリアはエナを見つめ、不思議そうに首を傾け、
「……ツッコミデレ?」
「だから、デレから離れろ! 敵にデレるバカが何処にいる!」
「はーい」
「目の前にいたな、そういえば!!」
嵐のツッコミを浴びせ終わったエナは、脱力しきった様子で立ち上がる。
「お帰りなのですか?」
「……ここにいて何になる」
「フィリアを朝まで愛を語らうのです」
「ふざけるな! いいか、明日こそは絶対にお前を倒す! 覚えていろ!」
「お待ちしているのです~!」
苛立たしげに立ち去るエナを、フィリアは手を振って見送る。
どこまでもすれ違い続ける二人だった。
…………
「おお、聖騎士様、今お帰りで?」
「ああ」
麓の村では、フィリア討伐の依頼の為に二ヶ月以上滞在しているエナは、すっかり顔馴染みだ。
これだけ長期滞在をすれば、何度挑んでも外道に勝てない役立たずの聖騎士、という烙印を押されてもおかしくない。
ところが、村人は笑顔でエナに挨拶をしていく。
聞けば、フィリアが山間の湖畔に住み着く前に、周辺モンスターの駆逐、村の開墾に治水の手伝い等をしたそうで、麓の村人たちからは、ネコミミ様という相性で親しまれる生き神扱いになっている。
つまり、村人にとって、エナは「神様に挑みレベルアップを試みている勤勉な聖騎士」という評価になっているのだ。
「今日も派手な魔法をぶっ放すたようで」
「……まぁ、な」
セクハラされそうになり、つい魔法を使った、とは口が裂けても言えない。
「それにすても、聖騎士様でも勝てないとは、ネコミミ様は強いんですなぁ」
「……」
強いかと問われれば返答が難しい。
むしろ、戦闘力敵な強さより、欲望の強さの方が極だっている気がする。
「んじゃ、明日も頑張ってくだせいよ」
「ああ、ありがとう」
村人は笑顔で会釈して、農作業からの帰路に戻る。
エナは複雑な表情でその後ろ姿を見送った。
ちょっと短めでも続けます