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21.魔道者の困惑

集束のルーンによって魔力が集まっているようです


「む……?」


 翌朝。


 まばゆい光を感じ、エナは顔を顰める。


 昨晩から世話になっている奥の部屋は日の光の当たらない悪条件の部屋。


 朝日が差し込むにしても、些か眩しすぎるように思い、エナはゆっくりと瞳を開く。


「な、なんだ、これは!?」


 光の元は、エナ自身の身体だった。


 まるで光り輝く黄金のような光が、全身から溢れている。


「そうか、これが魔力が過剰になった状態なのっ、かっ……」


 理解して起き上がった瞬間、内蔵全てをかき回されたかのような吐き気がエナを襲う。


「まるで、食中りだな。目眩も酷い。それに、こんなに光った状態で外に出たら、何事かと思われてしまう」


 エナは持っていたマントで身体全体を覆う。


 それでもあふれ出る光は暗がりの室内を明るく照らしてしまう。


「やれやれ、こんな状態になるとは、思いもしなかったな」


 エナは軽くため息をつき、部屋を出る。


 ふらついた足で踏みしめた木造の床が軋んだ。


「うん? 昨日の夜はこんなに痛んでいなかったと思うが……」


 妙な違和感を感じつつ、エナは宿の玄関口に向かう。


「ご主人、世話になった。……ご主人?」


 手すりに身体を預けながら階段を降り、カウンターをのぞき込む。


「ヒッ!?」


 思わず息を飲んでしまう。


 カウンターの中には、もがき苦しみ力尽きた、男のミイラしかいなかったからだ。


 そして、彼が昨晩エナを迎え入れてくれた宿屋の主人であろうことは、容易にうかがい知れた。


「こ、これは……まるで、精気を吸われ、干からびたような……」


 自分で口に出している内に、エナは何が起こったのか――最悪の現実に思い至る。


「そうか……私が集束のルーンで、魔力を吸い尽くしたのが、このミイラの姿……」


 自身の手を見つめる。


 黄金色の光に包まれた自分の身体が、宿屋の主人の……おそらく、この宿の客全ての命を吸い取った結果の産物であることに、今更恐怖を覚え、震え始める。


 それでも、頭の片隅に残っている理性が警報を鳴らす。


「……早く、立ち去らねば……」


 自分の許容量を超える魔力を集めながら、集束のルーンの発動は続いている。


 簡単に言えば、破裂寸前の風船に、更に空気を送り込んでいるようなものだ。


 破裂した魔力が、どのような形で発動してしまうか、想像に難くない。


「急がねばっ……ぐっうっ!?」


 宿の外へ向かおうとした足がぴたりと止まる。


 エナ自身が初めて味わう感覚。


 嘔吐とも、悪寒ともつかない、まるで身体中の細胞が破裂するかのような感覚。


 それはまるで、核分裂が連鎖するかのようなエネルギーとなり、エナの中から吹き出そうとする。


「魔力が抑えきれ、ないっ!! これでは、暴走をっ……うあああっ!!!」


 エナの悲鳴は、魔力の爆発に飲まれて消えた。





集束のルーンの影響で暴発したようです

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