表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/35

16.続、聖騎士vsネコミミ娘

緊張感があるのは当人達ばかり


「……ちっ、やっぱり通じなかったのです」


 舌打ちしながらヒエロを睨むフィリア。


 対してヒエロは、相変わらず拍手を続けている。


「成る程。闘いながらボクを狙っていたのか。良い作戦だけど、最低でも銀の剣じゃないと霊体には通じないよ」

「聖騎士ギルドがシケたブツを支給しているのが悪いのです」

「あ、あ、あ……」


 剣の消えた先を呆然と見ていたエナだったが、ダメージが嘘のように跳ね起きると、


「何をしてくれた!?」


 フィリアに掴みかかった。


「ぐっほっ!」


 盛大に額同士が激突したが、お構いなし。


「あれは聖騎士に授けられる、大切な銀の剣だぞ!!」

「ゴーストに通じない銀の剣なんて、安物過ぎておへそでお茶が沸かせる次元なのです!」

「ごはっ!?」


 フィリアも負け時と額をぶつけ返す。


「やかましい! とってこい、この外道!」

「ふぎっ! そんなボール遊びみたいな命令は、犬耳キャラに言えってのです!」

「ぐはっ!」


 言い合いながら二人揃ってヘッドバット合戦が展開される。


「あっはっは、本当に君たちは面白いね」


 ヒエロは笑いながら空中を漂っている。


 近くで観戦しようと降りてきたらしい。


 しかし、エナとフィリアはまったく気づかず、両手を組み合わせ、額を合わせた力比べの状態でにらみ合っている。


「ふぬぬ、負けを認めるのです、お姉様。剣がない以上、お姉様がフィリアに勝てる術はないのです!」

「むぐぐ、ヒエロのルーンは私の探し求めていたものだ。絶対に譲れん!!」

「お姉様の意地っ張り!」

「外道に言われる筋合いはない!」

「いいのです……かくなる上は、お姉様の身も心も、全部制圧してあげるのですっ!」


 フィリアの宣言が終わった瞬間、重なっていた二人の手が光の早さで動く。


 エナの後頭部に手を回しムエタイの首相撲のように組み、唇を尖らせるフィリア。対してエナは、フィリアの額と唇を押さえつけて押し戻す。


 フィリアのキスを、エナが力業で防いだのだ。


「ぬぐぐぐぐ、どうしてっ、分かったっ、のですかっ!?」

「お前の、考えなどっ、お見通しだっ!!」


 お互い額に血管が浮かぶほど白熱した力比べ。


 もっとも、争っているのは力ではなく、エナの唇だが。


「あははは、本当に面白い子たちだね! そんなに力の入ったキスは初めて見たよ!」


 たった一人のギャラリーは爆笑中。


 とはいえ、当人たちは大まじめ。


(この間合いなら必殺の拳骨が使える……しかし、僅かでも力負けすれば、フィリアに唇を奪われてしまう……ここは、押し切るしかない!!)


「うおおおおっ!!」


 エナは両手に有らん限りの力を込め、フィリアの顔を押しのけていく


(お姉様の唇、お姉様とキス、お姉様の純血、お姉様と接吻!!!)


「ふんぬぬぬぬ!!」


 と、欲望を直接エネルギーに変換しているフィリアが、再びエナの唇を奪わんと近づいていく。


 実力伯仲の両者の攻防は、なかなか決着をみない。


「んぎぎ、諦めてっ、下さいな、のですっ、お姉様っ!」

「ぐぐっ、絶対に、おこと、わりだっ!」


 汗ばんだ表情に色濃く疲労が浮かぶ。


 長時間全力で押し合い引き合いをしていれば、当然筋肉は消耗し、力が出なくなっていく。


 このままでは、決着どころではなくなる。しかし、引いてしまえば負けが決まる。


 ぎりぎりの駆け引きの中、先に動いたのは、フィリアだった。


「か、かくなる上は……作戦変更なのですっ!!」

「なっ!?」 


 フィリアは身体の力を抜き、エナに押されるがままになる。


 突然抵抗を失ったエナの身体が泳いだ瞬間、フィリアはエナの右腕を掴み、素早く回転。


「外道流投擲愛好術、巻き込み一本背負い!」


 フィリアの小さな身体に、エナの肢体が軽々とはね飛ばされる。


「ぐあっ……」


 背中から叩きつけられ、一瞬エナの呼吸と動きが止まる。


 さらに間髪入れず背中に回り込んだフィリアの腕が、エナの喉元に巻き付く。


「外道流失神愛好術奥義、胴締め同時に裸締め! なのですっ!」

「ぐっ……あっ……」


 頸動脈を完璧に捕らえられ、エナが苦悶の表情を浮かべる。


 喉に巻き付いたフィリアの腕を掴んでみたものの、外れる気配が全くない。


 さらに両足で締め上げられる胴体から空気が絞り出され、呼吸することもままならない。


「無駄なのです! 失神する瞬間の気持ち良い瞬間を求めた外道が編み出した、最上級の絞め技! 外すことは出来ないのです! お姉様の唇は、締め落とした後でゆっくりと頂けば良いのですからね!」

「く、く……外道が……」


 意識が遠のき始めるのを感じ、エナは歯を食いしばる。


 睡魔に誘われるような感覚は、フィリアがエナ自身に降参を促す為に、絶妙な力加減を加えているからだ。


「ぐっ、負けて、たまるかっ……目の前に、私の求めていたルーンが、あるんだっ……」


 エナが力任せにフィリアの腕を振り解こうと足を暴れさせる。


 しかし、ほとんど力は入らず、数度砂を蹴っただけ。


「お姉様……」


 諦めようとしないエナに、フィリアは少し寂しそうな表情を見せ、少しだけ目を伏せ、


「ダメです。ヒエロのルーンは、お姉様には渡しません」


 再び開いた瞳には、決然とした意志が宿っていた。



ネコミミ娘が珍しく真面目になるようです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ