15.聖騎士vsネコミミ娘
お姉様、ご乱心継続中
「ここは魔族が闘い、自分の魔力を示す決闘場さ。今の君たちにはピッタリの場所だろう?」
ヒエロは天井の縁に座り、文字通り高みの見物を気取っている。
「お姉様、あんな奴の挑発に乗っちゃダメなのです!」
「悪いな。罠だろうと何だろう、私はヒエロのルーンを手に入れることが出来れば、それでいい!」
エナはフィリアに切っ先を向け、今すぐにでも切りかかろうとしている。
「ちょ、ちょっと待ったなのです! ヒエロ! お姉様だけ剣を使うとか、ありなのですか!?」
「決闘だから、戦い方は自由だよ?」
「お姉様、フィリアは尻尾が使えないのです、ずるいのです、ここはフェアに、レスリングで組んずほぐれつ闘うのが良いの思うのですよ!」
「それはお前の欲望のままだろうが!!」
エナが砂地を蹴り、一気に間合いを詰める。
顔をひきつらせて構えをとっていないフィリアに、情け容赦なく剣を横凪ぎに一閃する。
空気を切り裂く斬撃に、一瞬早く我に返ったフィリアは、大きく後ろに飛びバック宙して四つん這いに着地した。
「逃がすか!」
エナは走り込み、追撃を仕掛ける。
「逃げるに決まっているのです!」
相応の広さの闘技場の地形を利用し、フィリアは後ろに飛ぶことでエナの剣閃から逃れている。ならばと、エナはフェイントを交え、徐々にフィリアの逃げ場を潰す作戦に転じる。
虎の子の尻尾が使えないフィリアのスピードはエナと大差ない。
フィリアは徐々に壁際に追い込まれていく。
「ああ、もう! 尻尾さえ使えれば!!」
つい尻尾を使おうとしてしまうフィリアの動きは、明らかに鈍い。
立て続けの斬撃を繰り出すエナが、ついにフィリアを壁際に追い込む。
「そこだっ!!」
「甘いのですっ!」
エナの突きをフィリアが三角跳びで避けて、エナの背後に着地。
素早く羽交い締めを仕掛け、エナの動きを封じる。
「くっ、なんのつもりだ!?」
肩の自由を奪われたエナは、身を捩って脱出を試みるが、想像以上に身動きが取れず、もがいただけ。肩と視界を封じるこの態勢では、剣は何の役にも立たない。
「外道流束縛愛好術秘技、飛龍締め!」
「ぐっ、ああああっ!!」
フィリアが力を込めた瞬間、肩と首に負荷がかかり、エナの顔が苦悶に歪む。
握力が入らなくなり、剣を落としてしまう。
「さらに!! 外道流投げ技愛好術奥義、飛龍原爆投げ!!」
「なっ!? ぐはっ!!」
羽交い締めを仕掛けたままフィリアが鋭くブリッジ。
投げられるとは予想もしていなかった投げに、エナは後頭部から砂地に突き刺さり、エビのように丸くなったまま動けなくなってしまう。
さらに、フィリアはエナのダメージが残っている内に素早く起きあがり、剣を奪い取る。
「し、しまったっ……」
後頭部を強打し、軽い脳しんとう状態のエナは立ち上がることが出来ない。
フィリアはクロスソードを逆手に持ち変える。
「おお~、凄い凄い。人間は面白いことを考えるなぁ」
遠巻きに見ているヒエロが、拍手の動作をしている。
「やかましいのです、この悪霊!!」
言い様、フィリアは迷わずヒエロに向かってクロスソードを投げつける。
しかし、剣はヒエロの身体を素通りして、乾いた音を残して転がっていった。
肉体言語に優る魔法無し。