12.湖の底の遺跡
今回は短めです
「あれ、か……」
結界の維持に脂汗を浮かべながら、エナが呟く。
水質がよいことが幸いし、件の遺跡は、程なく視界にとらえることが出来た。
「変な形なのです……」
フィリアが珍しく呆れたような声を出す。
二人の前にあるのは、おそらく三十メートルはあろうかというピラミッド型の遺跡の上に、円柱が寄りかかっている姿。
「まるで、出来損ないの砲台だな……」
「もしかして、失敗作を廃棄したのでしょうか?」
「誰もたどり着けない、湖の底に沈めた、か。しかし、そうなると結界で守っている理屈が分からなくなるな」
「お姉様の仰るとおりなのです。だから、もうひと頑張りなのですよ!」
フィリアの尻尾が的確に湖底の水草などを掴み、遺跡へと近づいていく。
近づくにつれ、遺跡全体を光の幕のようなものが覆っているのが目視で確認できる。
そして、遺跡に入ろうと接近。エナの展開している風の結界と光の幕が触れた瞬間、
「なにっ!?」
魔法が自分の意志とは無関係に掻き消された。
遮蔽物がなくなり、周囲の水が一瞬で二人を押しつぶす。
「ぶんぬっ!」
とっさにフィリアは尻尾の力で湖面を蹴り、強引に遺跡の中へと転がり込み、事なきを得た。
「げほっ、げほっ! い、いったい何が起こった!?」
「分からないのです。お姉様の風の結界が、いきなり消えたように見えたのですけど」
フィリアは自分たちが通り抜けた場所を見つめる。
遺跡を包む結界は、何事も無かったかのように静かに揺らめいている。
「この遺跡の周辺に張られていた光の幕の力、なのか?」
「だとするなら、湖の水を塞ぎ続ける説明が出来ないのです」
「確かに、そうだが……」
物質を遮断する力と想定するなら、自分たちが通れるはずがない。
この遺跡に封印されているルーンの得体の知れなさに、エナは緊張した面もちで帯剣していたクロスソードを抜いた。
魔法が使えなくなる遺跡のようです




