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10.聖騎士のトラウマ

聖騎士は常に貶められていたようです


「何をしている! さっさと撃たんか!!」


 いつもの教官の怒声が響く。


 落ちこぼれの私を、少しでも鍛えようとして下さる声だ。


 私はいつものように前方に意識を集中し、身体に刻まれたルーンを発動。


 火の玉を一つ放ち、的を打ち抜く。


「二発目!」


 教官の怒声がむなしく響く。


 まただ。


 意識を集中しようが、力を込めようが、振り回そうが、何の魔法も放てない。


 間髪入れず放たなければならない追撃魔法。


 外道と闘わなければならい聖騎士にとって当たり前のことが、私だけは出来ない。


「シングルヒッターが……」


 教官の口から、蔑んだ愚痴が零れる。


 そうだ。私さえしっかりしていれば、こんなに迷惑などかけずに済むというのに。


「全てのルーンを刻んだ、未来のSランク候補が聞いて呆れる」

「おいおい、才能のない人間に、過度な期待はしてはいけないよ」

「ああ、才覚がないからこそ、ルーンが刻めたのか」

「一日一度しかた使えない魔法が役に立つわけがないだろうに」


 周囲の軽蔑に満ちた蔑みも、当然だろう。


 全ては、私が一日に一度しか魔法を使えない責任だ。


「何故他の者が出来ることを、貴様だけが出来ないか、考えたことはあるか!?」


 私が聞きたい。


 物心付いたときから、一回しか使えない身体だったんだ。


 そもそも、他に全ての魔法を使えて、何度も魔法を使える聖騎士がいるのか。


 前提が違うというのに、同列で私を語るな。


 しかし、反論は許されない。


 全ては、私の不徳の為すところの問題なのだから。


「なら、使いっぱなしにしちゃえば良いのですよ」


 目の前で、少女のネコミミと尻尾が揺れる。


「お主の魔法は、外道と同じである」


 腕組みをした全裸の男が断言する。


「じゃあ、お姉様とフィリアは同じなんですね!」


 ちょっと待て、だから私は外道じゃなくて……。


 反論したいのに、声が出ない。


 私が声を出さないのを良いことに、フィリアは私を押し倒し、その上にのし掛かる。


「やっぱり、お姉様とフィリアは、運命の赤い糸で結ばれているのです」


 瞳を潤ませ、顔を近づけてくるフィリア。


 まずい。このままでは唇を奪われる。逃げたいのに身体がフィリアの尻尾に絡みつかれて動けない。


「愛しています、お姉様……」


 待て待て待て待て、頼むから、ちょっと待て!!




「……はっ!?」


 エナの両目が開き、意識が一気に覚醒する。


 目の前には、朝日に照らされ、唇を尖らせているフィリアの顔。


 うなされていた夢の続きのように。


「……何をしている?」

「お目覚めのキッスを」


 うなされていた原因はこれか、とエナは妙に納得してしまった。



 この朝、エナは魔法以外に、拳骨という新たな必殺技を開眼した。



肉体言語に勝る魔法無し

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