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告部〜I want to go out with you.〜  作者: 歌うポケモントレーナー
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第七章〜苦境〜

間空いてしまってごめんなさい!

「今度、修学旅行の班決めするだろ?

佐藤がお前のこと是が非でも班に入れようと奮起してるらしい。」

照準が急に自分に合わされて、頭の整理が追いつかない。

「いやいや、俺あいつと仲良いわけでもないし。それに、そもそも俺が断ればいい話だろ?」

どんなに佐藤が俺を説得しても、あいつと修学旅行を過ごすのはごめんだ。

「今回の佐藤はたぶんガチだぞ。」

亘の顔が今までで1番真剣で驚いた。しかし、どう考えても佐藤が危険だと思うことができなかった。

「佐藤がガチだとどうなるんだよ。」

「予想できるのは、お前のところに修学旅行の班への勧誘とクリスマスライブの時の樋口さんの位置とかセットリストとかの聞き込みとか樋口さんのプロフィール探りだな。ここまではわかるだろ?」

「俺を班に誘って、樋口に関する情報得ながら修学旅行で距離を縮めたいって考えてるんだろ?」

「そう、あいつは現時点ではスタートラインにすら立ててない。その点では、やっとスタートラインに立てた柿沼のほうが何倍も有利なんだよ。」

「えへへ。」

柿沼がニヤける。

「柿沼君、キモい。」

優喜が柿沼に言い放つ。柿沼の顔から笑顔が消えてしょんぼりしてしまった。

「・・ここからが本題。じゃあ、もし佐藤がすべての作戦を失敗した場合どうしてくると思う?」

亘の急な問いに誰も即答することはできなかった。ただ、全員この問いの答えに不穏な空気を感じたのか真剣に考えてる。最初に口を開いたのは柿沼だった。

「ま、また樋口さんにしつこくするとか?」

「大大大大・・」

亘が焦らす。

「やっぱり・・」

焦らされてるのに気づかず、柿沼が自己完結する。

「大不正解!」

「ええ!?」

柿沼が驚いている。亘の言い回しが独特ではあるが、柿沼は先走りやすい性格なので最後まで話を聞いてほしいと改めて思った。

「じゃあ、ヒントね。班決めのやり方思い出してみて。」

うちのクラスは岩永が放任主義なのか、基本的には自分達でクラスのことは決めている。

「まだ決まってないだろ?」

「正解。じゃあ、決め方何になると思う?」

亘が何を言ってるかわからなかった。

「それをこれから決めるんだろ?クラスで少しはそうゆう話になるけど、みんな流れに合わせるって感じで・・・」

「くじ引き・・・」

優喜が急に口を開いた。

「女子達の中で、悪ふざけでくじ引きでいいって話が出てたよ。」

「単なる悪ふざけだろ?そんなのクラス全体が許すわけないだろ。」

「ところがそれがそうでもないんだよ。」

予想してなかった亘の言葉に戸惑いを隠せなかった。

「いやいやいやいや、修学旅行だぞ?授業のグループ活動じゃないんだから。」

「一見適当に見える決め方に、佐藤は大博打しようとしてるんだよ。」

なんとなくだが、亘の言っている意味が理解できた。

「まさか、普通に誘ってもダメだからくじ引きで同じ班になろうとするってことか?」

「大大大大大正解。」

信じられなかったが、佐藤ならやりかねないと思ってしまう。だとしても、疑問は消えなかった。

「もし佐藤が本気でそんなこと考えてたとしても、あいつが樋口と一緒の班になれる確率はものすごく低いだろ?何の問題もないじゃん。」

「それだけならな。問題なのは、その低確率よりも俺たちのやりたいことがもっと低確率になることなんだよ。」

今になってやっと事の重要さに気づいた。つまり、佐藤は樋口と一緒の班になる為にまず俺に近づく。そこで、樋口の情報入手と班への勧誘を成功させる。もしダメなら、班決めの方法をくじ引きにして低確率のチャンスに大博打を打とうとしている。一見、ダメージがあるのは佐藤だけに見えるがその何倍も大ダメージを受けているのが俺達告部である。柿沼と樋口の距離を縮めるには、告部+樋口の5人班を作るのが理想的。樋口と柿沼が2人で過ごせる時間を作るにあたって、事情を知らない他のクラスメイトがいるのは極力避けたい。しかし、くじ引きになってしまえば理想的なメンバーで班を組むなど夢物語もいいところだ。佐藤が樋口と同じ班になる確率と比べたら、どちらが実現するかは火を見るよりも明らかだ。

「くじ引きの案に真っ向から反対して、阻止するのは無理なのか?」

「やれなくはないけど、こっちの動機を知られちゃいけない以上確実に拒否できると言えない。逆に佐藤が、ハブを出さない為の案とか正論で殴ってきたら、完膚なきまでにやられる。」

確かに、こっちが確実に勝てる保証がないし説得材料も無いから勝率は低い。

「お前の見立てではくじ引きになる確率はどれくらいなんだ?」

亘がここまで言うからにはくじ引きになる確率は相当なのだろう。

「40〜60%の間。」

「なんかふわっとしてるね。」

珍しく曖昧な亘に、優喜が言う。

「佐藤がクラス内でおもしろキャラとして男女問わずそこそこ好かれてる点と、佐藤がいつも一緒の男女グループが1つの班に収まらない点、最近冗談っぽくくじ引き支持してくれた男子は女子の部屋連れてってやるみたいな宣言してるのがどう転ぶか読めない。」

樋口にこそ避けられ気味ではあるが、佐藤はクラスでは出川哲朗的な人気がある。男女共に友達も少なくはない。修学旅行の女子部屋に、誰が先陣切って行けるか聞かれたら佐藤と言われても納得できてしまう。

「何か作戦はあるのか?」

予想以上に佐藤の害がこちらに及んでいたので、対策を聞かずにはいられなかった。

「考え中。」

亘でも苦戦を強いられてる状況に、俺を含めたメンバー全員が不安に駆られた。


八章に続く

山場1つ目。

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