第四章〜告部、結成〜
ここまで読んでくれてる方々、本当にありがとうございます!
ここから物語が更に加速しますのでよろしくお願いしまーす!
「もうみんなわかってると思うけど、最終的な目標は柿沼と樋口さんをカップルにすることではなくて、柿沼が満足のいく告白をすること。その為に俺と俊と浜谷さんで最大限のバックアップをしていく。柿沼はその為にも、本番のイメージを膨らませておいてな。テンパるとロクなことにならないんだから。」
「う、うん。わかった。」
「マジで頼むぞ。お前、俊に話しかけられた時も『待ってたよ!』って言いかけてただろ?」
「ご、ごめん。」
亘さん、あなた最後列の席から最前列の会話聞こえてたんですか。どんだけ地獄耳だよ。
「それもだけど、勉強できるんだからちゃんと考えたほうがいいよ?調理実習の時も頑張るのはいいけど、塩と砂糖間違えるなんて小学生以下だし。それに、樋口さん守ろうとしたのはいいけど多少強引なところもあるから気をつけて。」す
優喜が追い打ちをかける。
「樋口を守ろうとしたって何?」
俺の知らない情報が出てきたので聞いてみた。
「あの調理実習の時にね、佐藤が桜ちゃんにしつこく話しかけてたんだって。で、それに耐えかねた柿沼君がケーキを佐藤の口の中にぶち込んだんだって。黙らせる手段としては悪くは無いけど、暴力的なのは桜ちゃんもドン引きしちゃうでしょ?」
「まあ、そうだな。」
樋口を助けた柿沼を褒めてはあげたいが、結果が結果なだけになんとも言えない。
「あと、桜ちゃんが甘いもの好きって知ったからって砂糖をレシピの3倍入れたんだって。ダメでしょ、塩と砂糖間違えてるから塩3倍ケーキだし。バラエティの罰ゲームじゃん。食べたのが佐藤だったからよかったけど、桜ちゃんがもし食べてたらと思うとゾッとするわ。てか、間違えてなくても砂糖3倍は無いって。」
「優喜、それくらいにしてやれ。柿沼が息してないから。」
「あ、ごめん。」
柿沼は意気消沈してしまってるのか、俯いて動かない。漫画でよく見る「ズゥーン」ってゆう効果音と暗いエフェクトが柿沼に付けられてるイメージができてしまった。
「で、その佐藤なんだけどね。わかってるかもだけど樋口さんを狙ってるんだよね。」
亘が少し険しい顔をしている。佐藤が樋口を狙ってるとゆう話はクラスではよく聞く話だ。塩の乱以前から佐藤がアタックしていて、樋口の性格上なかなか成果を得られず焦っていたらしい。それ故に度を過ぎた事も少なからずあったので、塩の乱の事を「天罰」と呼び柿沼に感謝してる輩もいるとかいないとか。
「別に佐藤は問題ないじゃん。」
優喜が亘に言う。
「ところが、そう簡単な話じゃないんだよ。」
「どゆこと?」
「塩の乱から今日まで樋口さんに告白したやつが3人いるんだけど、樋口さんは全部断ってるんだよ。俊。お前、本人からちょくちょく聞いてるだろ。」
亘が俺に話を振ってきた。
「まあ、なんとなくだけどな。」
バンド練の帰りとかで聞いたような気がしなくもない。
「なんで断ったか聞いたか?」
「確か、恋愛とかまだいいかなって言ってたと思う。」
「そう思わせてる原因が、この死にかけと佐藤にあるんだよ。」
亘が柿沼を指差す。
「え!?」
柿沼はやっと顔を上げて声を発したのに、顔面蒼白で今にも死にそうな顔をしていた。焦りが顔に出過ぎている。
「なんかやらかしたの?」
優喜が柿沼に聞く。
「な、何にもしてないよ!調理実習以降、樋口さんとまともに話せてないんだから!」
それはそれで問題ありなのだが。
「樋口さん、塩の乱のせいで軽度の男子恐怖症になっちゃってるっぽいんだよ。」
「え!?」
俺、柿沼、優喜は思わず驚きの声を発した。
「しつこいチャラ男が口説いてくるから精神的に病みかけてたんだよ。そんな状態の時に目の前で暴力、被害者は悶え苦しんでる。大人しい樋口さんには刺激が強過ぎて、無意識のうちにほとんどの男子を避けようとしちゃってるんだよね。ここ最近は特にな。」
亘の話を聞いて、俺の中で疑問が生まれた。
「いやいや待てよ。佐藤が苦しんでた時だって、樋口は俺のとこに助けを求めてきたし、最近だって部活で普通に話せてるぞ?」
ここ最近の樋口を思い返しても、そんな素振りは全く感じられなかった。
「だからほとんどって言ったろ。心を開いてる相手に対しては今まで通りなんだよ。面識の少ない相手だったり、印象が悪い相手には口数が極端に減るんだよ。性格上、無視するとかはできないみたいだけど、相槌を打ったり愛想笑いで誤魔化してる。」
「なるほど。」
樋口がそんなに辛い思いをしてたと知り、気づけなかった自分が情けなくなった。
「とんでもなくまずいのは、柿沼がその元凶で未だに怖がられてるって事なんだよ。」
確かに樋口が柿沼とすれ違う時、表情がほんの少し強張ってた気がする。
「だから最初は、樋口さんの中の柿沼像を改善するところから始めるから。」
「いや、口で言うのは簡単だけどどうするんだよ。樋口は柿沼を怖がってるし、当の柿沼はまともに樋口と話せてないんだろ。」
「何言ってんだよ。その為に色々仕込んでお前をこの場に呼んだんじゃんか。」
「は?」
急に言われて驚いてしまった。柿沼より何かできるかもしれないが、俺に亘が求めてるような手腕は無い。
「樋口と話せるっちゃ話せるけど、俺に人間の印象を変える話術なんか無いからな?」
どんなに亘が作戦を考えても、実行するのは俺である。ましてや作戦に関わってまだほんの数十分で大役を任せられても、上手くやれる自信なんて全く無い。
「いや、お前はいつも通り樋口さんと接してくれればそれでいいよ。頼みたいのは、バンド練の後にメンバーで集まって勉強会してる時とかあるだろ?」
「あぁ、たまにするやつな。」
「その勉強会の時に、柿沼が作ったテスト対策プリントを持ってってほしいんだよ。で、その場でプリントをみんなで使って勉強してほしい」
「え?それだけでいいのか?」
問題に対して、作戦が簡単だったので少し拍子抜けした。
「で、浜谷さんも柿沼のプリントもらって。」
「え?あたし?」
優喜は急に言われてビクッとしていた。
「数教科だけ席が出席番号順で決まる授業があるでしょ?浜谷さんは樋口さんの隣になるから、そこで柿沼のプリント使って一緒に勉強してほしい。」
「別に大丈夫だけど。それだけで何か変わるの?」
優喜も俺と同じ疑問を持ったらしく、頭の上にはてなマークが見えた気がした。
「この作戦で大事なのは、柿沼が頼れる存在だってアピールする事と現時点で樋口さんが柿沼をどうゆう風に思ってるのかを知り少しずつ改善していく事。柿沼はテンパるとポンコツだけど、集中して作業をすれば教科書の倍レベルのわかりやすいプリント作れるから。」
「え、えへへ。」
柿沼の顔に生気が若干戻ったが、笑い方が気持ち悪かった。
「今度のテストは10教科で大変だと思うだけど、全教科の対策プリント用意しておいてな。」
1人で全教科。柿沼も地獄の恋愛だなぁと俺は思った。
「任せて!勉強は得意分野だから!何より、こうやって僕の身勝手な頼みを聞いてくれるみんなや樋口さんの為にも最高のプリントを用意するよ!」
俺の思いとは裏腹に、どうやら勉強の話題は柿沼に生きる力を与えたらしい。この会議の時間で1番イキイキしている。
「俺の予想だと、俊のほうはプリント見せるだけでバンドメンバーの誰かが柿沼を話題にするだろうから、樋口さんに柿沼の印象を簡単に聞けると思う。浜谷さんは俊よりスムーズにいかないだろうから、後で樋口さんの苦手教科とか教えるので最初はその教科のプリントとか見せるようにして。で、その時に樋口さんから聞けた話は一言一句忘れずに俺に教えて。」
「は、はい。」
凄すぎて俺と優喜はそれしか言えなかった。交換条件の勉強まで作戦に組み込むとはさすがに予想できなかった。亘が人工知能か何かに思えてきた。
「あ、そうだ。メンバーも多分これで確定でしょ?LINEグループ作るね。」
優喜がスマフォを取り出した。
「グループ名何にする?」
優喜がどうでもいい質問をしてきた。
「柿沼に決めてもらえば?柿沼の為のグループなんだし。」
亘が柿沼のほうを見て言う。
「え?僕!?え、どうしよう。」
本当にこいつは対応力が皆無なようで、急な展開に弱い。こんなんで告白なんかできるのだろうか。
「こ、告部なんてどうかな!」
「こくぶ?あ、なるほど。」
俺はグループ名の由来がわかった。
「え?なに、こくぶ?」
優喜が混乱している。
樋口は告白クラブとゆう恋愛ソング中心のバンドが好きで、部活でよく聴いている。告クラだったり告部って愛称で呼ばれてることもある。
「あれだよ。告白クラブの略称だよ。良いと思うよ。」
告白クラブは同年代の女子から人気で、部活でもよくカバーするバンドは多い。
無論、俺も好きなバンドである。今の状況と合っていると思うし、柿沼にしては良いネーミングな気がする。
「じゃあ、これから告部として活動していくから改めてよろしくお願いしまーす!」
さっきの真面目な雰囲気から一転して、亘がふざけた口調で宣言した。今のところ不安要素しかないが、なんとなく楽しいと思っている自分がいた。
第五章に続く。
書いてて、亘怖いなぁと思いつつこんな友達欲しいって思いました。(小並感)
さて、告部はこれからどうなるのか!?
これからの展開にご期待ください!