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告部〜I want to go out with you.〜  作者: 歌うポケモントレーナー
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第ニ章〜お願い〜

第1章読んでくれた皆様ありがとうございます。

初作品で荒々しさしかない作品で、さぞ苦痛だったかもしれませんが読み切ってくれた人は真の勇者です。

その心意気で2章も読んでもらえたら助かります笑笑

「なんで柿沼なんだよ。勉強は確かに頼りになるかもしれないけど、俺あいつと全くと言っていいくらい接点ないぞ?」

亘に何か相談をすれば、完璧に対応してくれる。前回の定期テストの時も、先生の問題の出し方や授業の強調ポイントをしっかり教えてくれた。体育でバスケのミニゲームをする時も、プロのスカウトの如くクラスメイトの経歴を把握していて、現役バスケ部のいるチームに接戦で勝つなどの手腕を見せた。そんな亘が、俺とはクラスメイトってくらいでしか接点がない柿沼を勧めてきたのは、どうにも納得できなかった。

「いや、お前ら同じ哺乳類だし雄だし、何より同じ地球に住んでるじゃん。」

「それはお前もだろ。」

たまに真面目な顔してふざけるから、対処に困るのも亘の特徴である。

「深澤ぁ〜。」

「はい。」

俺とは違い、亘は岩永の点呼を無難にクリアした。心の中で舌打ちしつつも、話を続けた。

「あいつとまともに話したことなんて、数えるくらいしかないぞ?進級初日の軽い挨拶と家庭科の調理実習くらいだって。」

「"佐藤・塩の乱"だろ?あれは傑作だったな。」

佐藤・塩の乱とは、柿沼が起こした事件である。普段は勉強や学級委員の活動以外に目立たない柿沼が、この日はどうゆうわけか積極的に行動して調理実習の課題のパンケーキを作り上げた。クラスのおちゃらけ者の佐藤が、そのケーキを柿沼に大量に食わされたのだが、なんと柿沼は砂糖と塩を間違えてしまってたらしく、それを大量に食わされた佐藤は乱れるように水を飲んでいた。それを見たクラスの一部が「佐藤、塩で乱れる笑笑」とバカにし始めて、最終的に「佐藤・塩の乱」とゆう名の事件でクラス史に刻まれた。

「樋口から救援要請がきて、佐藤の介抱したの今でも覚えてるよ。」

「樋口さんと柿沼、同じくらい顔真っ青だったな。」

同じ軽音部の樋口ひぐち さくらが当時、ものすごい慌てて助けを求めてきたのを覚えている。同じ班の男子が急に悶え出したら、女子なら驚くのが普通だろう。樋口に連れられ現場を見た時、既に佐藤は水道で水をがぶ飲みしていて、柿沼に話を聞いても「ごめん、ごめん。」としか返事がなかった。呆然と立ち尽くしている柿沼は放っておいて、俺は樋口と一緒に佐藤を介抱した。相当塩の量が多かったのだろう。

「別に候補いないの?」

そんなこんなで柿沼には良い印象がない。真面目過ぎて対応力がなさそうなところは目に見えてる。隣の対応力お化けに慣れてしまってる為、おそらくストレスにしかならないだろう。そう思って亘に違う候補を聞いてみた。

「クリスマスライブまでに新しい機材買いたくないのか?」

亘が痛いところを突いてきた。軽音部は他の部活に比べると楽器、エフェクター等で相当な出費になる。バイト可の高校なのでバイトはしてるものの、入部してからずっと初心者用のエレキギターを使っていたので、そろそろ新しいギターとそれに合わせて新しいエフェクターを買おうと思っていた。合わせると金額は6桁近くになる為、バイトの他にも親に頼んで定期テストの結果次第で追加報酬が入ることにしてある。この追加報酬がないと、希望の機材購入がだいぶ遅れてしまう。機材に慣れたり、練習等を考慮しても今回の定期テストは千載一遇で唯一のチャンスだった。亘にも話してはいたが、まさかこんな形で利用されるとは思わなかった。

「べ、別に柿沼じゃなくてもいいだろ。」

「いいや、今回は柿沼じゃないとダメなんだよ。学力は申し分なくて、テストまでの残りの日数を考えれば妥当な人選。お前の希望も叶えるのにこれ以上ない条件だろ。」

「でも、柿沼本人が断るかもだろ?あいつだって俺とは接点全然無いんだから。」

「その点に関しては心配いらない。むしろ、最大の評価点はそこにあるから。」

「どうゆう意味だよ。」

「まあ、詳しい事は本人に頼めばわかると思うぞ。百聞は一見にしかずってやつだ。」

亘の手のひらで踊らされてる気もするが、別に俺にデメリットがあるわけでもない。不安はあるが、亘の推薦だし試しに頼んでみることにした。いつのまにかHRも終わり、岩永が教室から出て行き休み時間になった。

「・・・行ってくる。」

「おう、頑張れ。」

亘が少しニヤニヤしてるのが見えて少しだけ腹が立った。これでテストダメだったら亘に機材を買わせてやる。そんな事を思いながら歩いて、最前の柿沼の席に向かった。隣の席の優喜は今は教室の後ろのほうで女子達と話している。ホッとしつつもさっきの苛立ちを思い出して少し強めの口調になってしまった。

「柿沼、ちょっとお願いがあるんだけど。」

「待っ・・お願いって何?」

なんだよ「まっ・・」って。挙動不審なところが気になったが、普段話してもない相手からお願いされたらびっくりもするか。

「今度の定期テストのポイントとか、簡単でいいから勉強教えてくれない?」

冷静に考えても、仲も良くない相手と勉強とかどうなんだろう。ましてや男と男。ガリ勉と軽音部の異色コンビ。絵面が良くないのはなんとなく察しがついた。心のどこかで断ってほしいとも思った。

「いいよ。何教科?」

心の中の小さな願いは儚く消えた。

「えっと、4教科くらい。プリントとかで要所まとめて渡してくれたら助かる。」

なるべく関わらない最善の手段を咄嗟に思いついた自分を褒めたくなった。

「わかった。用意しておく。」

なんとも言えない気持ちになったけど、とりあえず機材は用意できそうなので及第点。

「じゃあよろしく。」

足早に去ろうとした時、柿沼が声をかけてきた。

「待って、僕からもお願いがあるんだけど。」

「え?」

人生で一番の不意打ちを食らった瞬間だった。

「ちょっと外で話したいから来てもらってもいい?」

「う、うん。」

1メートルくらい距離を取って、柿沼の後ろを歩いた。自分から頼み事をしておいてこんな事を思うのもどうかと思うが、そんなに接点ない人間に頼み事するか?ましてや、廊下に連れ出して。柿沼に対して、わずかな恐怖が生まれた。柿沼はどんどん歩いていき、人気が少ない廊下の端のほうまで連れていかれた。柿沼は何やら緊張気味のようで、口を開く気配はない。この場を早く離れたかったので、俺から口を開いた。

「お、お願いって何?」

シチュエーションだけなら告白なのだが、相手は男。人気が少ないといっても全くいないわけではないので、内心ヒヤヒヤしていた。柿沼はようやく口を開いた。

「ぼ、僕と・・」

おいおい、本当に告白みたいじゃないかよ。やめてくれよ、そんな趣味は無い。

「いや、僕の・・」

僕「の」。!?付き合ってくださいがお嫁さんになってくださいに変換され、頭の中が真っ白になりかけた。

「僕の告白を手伝ってください!」

「え、えっと・・ん、んんんん!?」

柿沼の言葉を全部聞き取れるくらいには落ち着けてたはずだが、それでも耳を疑った。告白を手伝うってなんで俺なんだよ。もっと仲良い友達に頼めよ。友達いるのかどうか知らないけど。

「な、なんで俺なのかな?その相手の事知ってるかどうかも怪しいし、もっと他に頼める人いるんじゃない?」

とりあえず他の誰かに聞かれてないか心配になったが、振り返って確認しても20メートルくらい先から女子1人がこっちに歩いてくる以外は誰もこっちを気にせずにいるようなので安心した。周りに気を使ってる俺を気にも止めず、柿沼は話しだした。

「いや、君以外には考えられないんだよ。だってその人と君は結構仲良いし、きっと力になってくれる。あ、その人っていうのは・・」

「柿沼君、声大き過ぎ。」

柿沼の話を遮って俺の後ろから聞き慣れた女子の声がした。振り返ってみると優喜がいた。

「優喜!?」

さっきの歩いてきた女子。なんとなく優喜だと思ってはいたが、柿沼が話を続けるからしっかり確認できなかった。

「おまえ、もしかして聞いちゃった?」

相談の内容がプロポーズじゃなかったので柿沼への恐怖は和らいだが、柿沼のプライベートが流出してないか心配になった。

「最初のほうは聞いてなかったけど、後半は柿沼君が声大きくなったのと私が近づいてたのもあって聞こえたね。てゆうか、聞こえてなくても事情全部知ってるし問題ないけどね。」

「え?」

優喜の言葉に驚いて、状況が理解できなかった。

「私、実は柿沼君の恋を応援してあげてるの。」

「は?」

ますます混乱した。

「あと、深澤君も協力してくれてるよ。」

「はい?」

もう何が何だかわからなくなった。

「俊が混乱してるみたいだから、柿沼君説明してあげて。大丈夫、落ち着いて話せば誰よりも説明上手いんだから。」

「う、うん。」

柿沼は、ぽかんと口を開けていた俺に話し始めた。

事の始まりは、柿沼がその好きな相手にラブレターを書いて下駄箱に入れたところから始まる。どうゆうわけか、そのラブレターを間違えて隣の優喜の下駄箱に入れてしまったらしい。ラブレター投函してからはそのことに気づかなかったらしく、5分ぐらいして不安になり確認しに行ったところで優喜と遭遇。律儀にも相手の名前と自分の名前を書いていたので、優喜に全てを知られてしまったそうだ。更にその場面を亘も見てしまい、3人は協力して柿沼の恋を成就させる同盟を結んだらしい。情報通の亘と女子の優喜の協力を得ても、目覚ましい進歩を得られなかった3人は新しい協力者を探すことにして、俺に白羽の矢が立ったらしい。

「話はわかったけど、俺が協力できる相手って誰なんだ?」

状況を理解できたものの、柿沼の想い人が誰なのかはわからなかった。いや、正確にはなんとなく想像は付いていたが、確認の為聞いてみた。


第3章へ続く

荒々しさに更に荒々しい設定を盛り込んでみました。傷口に塩とバターを塗りに塗り込んだ状態です。


とはいえ、やっと物語が動きだしました。展開を予想しながら読んでくれると嬉しいです。

では、また3章で!

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