第一章〜作戦開始〜
初作品で、わからないことがたくさんあるので教えてくれると助かります。
あと、筆者は恋愛経験がギターの弦の本数くらいしか無いのでご了承ください。
いつものように通学路を歩いていた。もうすぐ10月になるのに、今年は9月下旬でも夏服は活躍できるらしい。木々も緑ではないが秋とは言えない、困った葉の色をしていた。同じ制服を着て歩いている前の男子二人組が袖の長さの話で盛り上がってるのを見て、平和だなぁっと思いながら欠伸をした。背中に背負っているエレキギターのせいで運動量が増える為、半袖のワイシャツを着ていたので、長袖をしつこく推奨してる左側の男子を後ろから睨めつけながら歩いていた。
「おはよう、ギター男!」
聞き覚えのある声が後ろからしたので、長袖派男子を睨むのをやめて振り返った。
「あ、おはです。バス女さん。」
同じクラスで、小学校からの幼馴染の浜谷 優喜が小走りで隣に来た。
「バス女って何?バス好き女子みたいになるから、ケを付けてよ。」
優喜は笑いながら言った。
「めんどいのでいいです。」
真顔でそう言った。
優喜とは何度かクラスが違くなることもあったが、初めて出会った小学校3年生から今までずっと一緒と言っていいレベルの幼馴染である。付き合いが長くなるにつれて、俺の態度は素っ気なくなっていったが、高校2年生になった今でも変わらず接してくれる優喜に、家族に近い感情を持っていた。それを知られると優喜に何を言われるかわからないので、なるべく表情に出さないように心掛けてもいた。長年の付き合いで優喜の性格を把握している俺は、同じ半袖を着ている優喜を見て、ある悪戯を思いついた。
「バスケ女子さん、今日は半袖なんですね。」
優喜は不思議そうに俺を見て
「いや、あんたも半袖じゃん。エレキ背負ってるからそうなんだろうけどさ。でも、まだ25度超えそうなのに長袖着てる人って勇者だと思うけ・・あっ。」
最初は俺を見ながら話してた優喜は、視線を前に戻した瞬間に言葉を止めた。
「周りを見てから喋ろうね。」
俺は笑いを堪えながら言った。優喜は夢中になると周りが見えなくなり、余計な事を言ったりする。それを利用し、先程睨みつけてた長袖派を沈黙させ、優喜をからかうことに成功した。長袖派は隣の半袖男子に笑われ、優喜は俺の肩を軽く叩いていてる。厳密には、優喜は軽く叩いているつもりだが、思いの外痛い。そんないつもの通学路を優喜と一緒に歩き、校舎へと入っていった。
「はい、じゃあ出席を取ります。」
いつものように担任が出席を取っている。2年A組担任の岩永が自分の名前を呼ぶまで暇なので、教室を見渡した。こうゆう時、一番後ろの席は何かと都合がいい。欠席者は0、優喜と学級委員の柿沼がプリントを交換している。宿題でも忘れたんだろうか。
俺は心の奥底でほんの少しだけ苛ついていた。
「田中。ん?田中ぁ?いないのかぁ?」
担任が呼ぶ声が聞こえた。たまに、「か」に軽くビブラートをかける癖があるので、岩永はよく笑われてる。自分が笑われてるみたいで嫌だったので、いつもはすぐ返事をするように気をつけていたのだが今日はしくじった。
「あ、はい。田中います。」
普段は笑われない返事でも、岩永ブーストのせいで教室に笑いが起きた。心の奥底の苛立ちが優喜と柿沼と岩永のせいで、少し膨らんだ。
「田中います。ってなんだよ。」
隣から亘が笑いを堪えながら話しかけてきた。今朝の自分を見ている気分になり、優喜への苛立ちは治った。
「う、うるさい。たまたまだよ。」
焦りもあり、亘への返事が少し挙動不審気味になってしまった。
「岩永ビブラート第6代被害者就任おめでとうございます。」
と、亘は言った。隣の席の深澤 亘とは仲が良い。とても頭が良くてクラスでの成績は柿沼に次いで二番目。しかし、俺は一番賢いと思っている。夏休み前の定期テストで、亘はわざと満点を取らなかった科目が数教科ある。一緒に勉強した時に、細かく解説してくれたところを間違えてたので、何で間違えたのか聞いたら
「たぶん柿沼も満点取るだろ?ある程度間違えないと柿沼も面倒だし、次のテスト難易度上がるだろうから嫌だ。」
と言っていた。賢いのもそうだが、観察眼も鋭い。柿沼は勝手にライバル認定してくる根っからの負けず嫌いで、満点を取らなかった教科は、週一のミニテストで亘と柿沼が満点を取る度に難易度が上がった教科だけである。抜け目ないし、俺は怖いとも思った。
極め付けは、亘が趣味で作っているランキングノートである。観察眼を活かして、二年担当の各先生の特徴、趣味、好み、嫌いなタイプなどを分析してノートに記している。その正確さと凡庸性を評価され、クラス内でそのノートと亘は神格化されており、今では学年中の伝説になりつつある。噂では、三年生からノートの三年生版の依頼もあるらしいが、亘はあまり詳しく教えてくれない。少しノートを見たことがあるが、岩永のページには岩永ビブラート被害者とゆう項目があり、世代分けに加え、名前付きで記されていた。さっきの亘の言葉から察するに、俺はノートに六番目の被害者として名が刻まれるんだろう。不名誉この上ない。
「名前載せるのやめてくれない?」
ダメ元で亘に聞いてみた。
「じゃあ、2年A組 匿名 軽音部男子で書いとく。」
「それ特定されるだろ。」
亘とはこんな漫才に近いやりとりをして、一学期から楽しんでいる。
「そういえばさ、来月定期テストじゃん。また数学教えてくれない?」
大丈夫だろうと思い聞いてみた。しかし、返事は予想と違った。
「あ、悪い。今回はちょっと無理だ。」
「え?何で?」
「3年からの依頼の試作ノート作らないと。」
「マジでそれ来てたのかよ。」
「いや、嘘だけど。」
「嘘かよ。」
「B組から学年女子可愛い子ランキングの依頼が来てるんだよね。」
「は?」
3年生よりタチの悪い依頼で唖然とした。
「代わりの目星は付けてるから、そいつに頼めば?」
俺から頼まれることも予想してたのか、用意周到過ぎる。だけど、亘だから納得してしまう。
「で、誰だよ。」
少し不安だったが、亘が勧めるなら間違いないと思い聞いてみた。
「柿沼。」
「は?」
俺は耳を疑った。
第2章へ続く。
特に衝撃のオチだったりがするわけもなく第1章が終わりました笑笑
まあ、1番の衝撃は亘くんのスペックくらいですかね?一応モデルになった友達はいますが、その彼は亘くんのようなハイスペックでは無くてただのゲスの極みでしたけどね笑笑
いろんな感想お待ちしておりますので、コメントよろしくお願いします!