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花の乙女は平穏を愛する  作者: 如月雨水
選択肢の恐怖
4/30

↑に頭を抱える

リズ達が暮らすヴァイスリッター城は、〈サンドリヨン〉と言う童話に登場する美しく絢爛な城のモデルだ。

白雪の如き城は見る者を畏怖させながら、感嘆の息をつかせる程の秀麗さ。・・・城に秀麗と言うのもおかしいが、私的にこの言葉が一番似合っていると思う。絢爛なだけではなくこの城、四百年前に起こった王族同士の王位争い――〈天狼戦争〉でも各地の城が落とされたと言うのに最後まで落とされず、唯一残った城としても有名な城が・・・。

あ、ちなみに〈天狼戦争〉以前の王都はここではなく、すでに滅んでしまった、今では霊園になった土地にある。王族の墓所は別の場所にあるけど。

さて、そんなヴァイスリッター城に私は今、いるのだけど・・・我が眼を疑い、絶句してしまった。

悲観する城内の空気を読まず、王城にある大時計が十四時を示し、鐘が清浄な音色を奏でた。

ラズベリス様から鎮火した・・・とは聞いたけど、中の有様が酷い。

外観が普段と変わらないからこそ、余計にそう思える程の酷さに開いた口が塞がらない。

幼い頃の記憶が確かなら、歴史的価値のある、値段がつけられない程に貴重な調度品や絵画が廊下を色取っていたはず。なのに今はそれがなく、あったとしても煤に汚れていたり最悪、灰になっている状況。もっと悪いと修正不可能なほどに壊れていた。被害総額はいくらだろうか。

億は超えてると予想する。

文官や財務官が頭を抱え、絶望したように何か呟いてて怖い。

そんな城の有様に言葉を失ったのはどうにも私だけではないようで、私と一緒に早退した・・・と言うか、私はさせられて、三人は自主早退なんだけども。まぁ、一緒に来てくれて安心と言えば安心なんだよね。・・・とにかく、三人とも間抜けに口を開けている。

リズなんて血の気の引いた顔をして、今にも倒れそうだ。

そりゃ、自分の家がこんなありさまなら卒倒してもおかしくないか。哀れんだ眼をリズに向け、頭痛を堪えるようなカルナードや眩暈がしたらしいアルトから眼をそらした。

・・・ラズベリス様は一体、どんな反応をするんだろう?

ちょっとした興味を覚え、一言も口にすることなく私はラズベリス様の背を見た。・・・残念ながら、顔が見れない。ちっ。

ところでラズベリス様。

そんなに手を強く引かれると、痕が残るから嫌なんですけど?どこぞに連れて行くか知らないけど、そろそろ痛いから放してくれません?――言葉にしても放してくれないことは解ってるから、視線で訴えてみた。

まったく効果がない。

っく、女子供に優しい紳士的なラズベリス様はどこに消えた!

注意や苦言を入れてくれそうな三人は、まだ現実に戻れていないから頼れない。役に立たないなぁ。溜息をつけば、無残に破壊された巨大な扉の前についた。あれ、ここって・・・?

「さぁ――――逝ってこい!」

謁見室だったっけ?と思うと同時に、げしっと背中を蹴られた。酷い!

唐突のことに転びそうになるけど、意地と根性で足に力をこめてそれを回避。けど勢いは殺せず、くるくると踊るように回ってしまった。恥ずかしい。

「ちょっ!ラズベリスさ・・・・・・」もういないし。

脱兎の如く速さでこの場から離脱したラズベリス様に、どうか天誅が下りますように。

「――――って、あれ?いない」

荒れた謁見室を掃除するメイド達はいるけれど、私がここに来る原因となった存在がいないとはこれいかに?首を傾げた。

「どうやら父上が強制的に気絶させて、無理矢理国に返したみたい」

「・・・私、来た意味ないよね」

「うん・・・本当、母上も懇願するなら父上にすればよかったのに。まぁ、したらしたらでその後が大変だから出来なかったんだろうけど」

ちょ・・・ちょっとリズ!?なんでそんな遠い眼をしてるの?

カルナードとアルトは察したのか、苦笑してぽんっと労わるようにリズの肩や背中を叩いている。え?察せられないんだけど、私。

「とりあえず、どうする?今更、学園に戻るのもなぁ・・・いっそ、このままサボって遊びに行くか?」

「肩に肘を置かないで、重い!・・・私はもう、帰って寝たいよ。頭が痛い」

「おいおい、大丈夫か?王族専用の医者に診てもらった方がいいんじゃねぇの?」

心配そうに私の顔を覗き込むアルトに、私は――。


▽「そこまでじゃないから、大丈夫」 ↑

 「そんな、畏れ多い」 ×


・・・なにも言うまいと、口を閉ざした。

きっと今、私の眼から光が失われているんだろう。あはは・・・↑の意味が未だに解らないのに、↑以外を選べない選択肢なんて選択する意味すらないよね。

「そこまでじゃないから、大丈夫」

「本当に?」なんで食い下がらない。「顔色が悪いぞ」

「・・・っ!」

がしりと両手で頬を掴まれ、こつりと額がぶつかる。あれ、前にも似たようなことが・・・。イケメンを至近距離から見るのは、流石に幼馴染とは言え照れが入って気まずいんですけど。

「近い、近いから!ほら、リズもカルナードも見て・・・見て・・・・・・あの、二人とも、眼が怖い」

「ああ、すいません。姉さんを怖がらせるつもりはなかったんですが・・・・・・アルトさん、ちょっとこちらへ」

「ごめんね、フィリアを怖がらせる気はなかったんだ。アルト、こっちに来てくれるよね」

私に向ける眼差しは柔らかいが、アルトに向ける視線は・・・人を殺しそうな程に鋭い。うわ、これってあれ、嫉妬だよね?解りたくないけど、これだけは解っちゃったよ。

溜息を吐き出し、二人によって私から遠ざけられたアルトを見た。・・・あれ?


その他:幼馴染執着Max、〇〇独占欲LV.4、〇〇狂愛LV.3


その他のレベルが色々とあがっている。うわ、うわぁ・・・〇〇が取れて何に執着しているのか理解しちゃった。うわぁ・・・マジか。てか、幼馴染に執着って何?私達に執着してるの、アルト?・・・冗談でしょ。

しかし・・・LV.5でMaxなのか。

Maxになったら〇〇が消えて、暴露されるんだぁ。・・・やだな、知りたくなかったなぁ。

いや、でもしかし――――。


好感度:■■■■■■■


好感度に変化はなし。これだけは喜んでおこうか。

うんうん、と一人で頷いていたら傍に誰かがいる気配を感じて視線を向け・・・瞬いた。弟が、カルナードが優しい眼で私を見下ろしているから。

そんな眼を向けられるようなこと、した記憶はないんだけど?困惑する私を知らず、驚いたと思ったらしいカルナードが苦笑して謝った。いや、別に謝らなくても大丈夫だよ?

「顔色良くないですね。体調がすぐれないと言って、もう家に帰りましょう。姉さんに何かあったら私は・・・」

イケメンの悲壮な顔って・・・心臓に悪い。


▽「何もないって、もう」 ×

 「心配してくれてありがとう」 ↑


あれだね、慣れるともう「またか、仕方ないな」ぐらいしか思わなくなるんだね。・・・嫌な慣れだ。苦笑し、停止したままのカルナードの頭を撫でようとして・・・やめた。だって、動き出した時にいつの間に?って驚かれても困るし。そのせいでこの変な能力のこともバレるのは避けたい。

「心配してくれてありがとう」

だから、言葉を告げてから、項垂れて低くなったカルナードの頭を撫でた。

身長差が生まれてから、こうして撫でるのは随分と久しぶりな気がする。カルナードが何故か硬直しているが、気にせず撫で続けた。うむ、髪がサラサラで羨ましい。

「あんまり心配すぎると、禿るよ?」

「・・・禿げません」

むっとした声を出し、頭を撫でる私の手を掴んだカルナードが不機嫌です、と解りやすく顔に出している。それに喉を鳴らして笑った。


その他:〇〇純粋 LV.2、〇〇支配欲LV.4、家族偏愛Max


そしてこれである。

家族偏愛、か。ま・・まぁ、うん、たぶん問題ないから良しとしよう。見えたモノから目線を反らし、掴まれたままの手を見た。そろそろ、放してくれない?

あの・・・指と指を絡まないでくれる?額がくっついた!え、なんで?!

あ、え、ちょっと!なんで口元に近づけて・・・っ!人差し指舐めないでくれる!

「はい、そこまで」

リズがすっごく、良い笑顔!

「まったく、僕の前でいい度胸だね」

カルナードの腕を掴み、べりっと音がしそうな程に強く私とカルナードの手を放した。物凄い力ではがされたのか、カルナードが痛そうに手を振っている。大丈夫かな?

「フィリア」硬い声で名前を呼ばれ、背筋が伸びた。

「駄目だよ、弟とは言え男に隙を見せちゃ」

「ご、ごめん・・・?」

「そんなんだと、すぐに食べられるから」

溜息をつくリズに首を傾げた。


▽「そうなの?」 ↑

 「食べるって、何を?」 ×


本能が訴える。

×は絶対にやめろ!・・・と。なので安定に×を避けて↑を選んでおく。そう言えば、アルトはどうしたんだろう?

「そうなの?」

「そうなんです」

なんで敬語?瞬き、思わずリズを凝視した。

そして見える文字に・・・・・・ああ、と遠い眼をしてしまったのはご愛敬だろうか。


その他:幼馴染依存 Max、〇〇庇護欲LV.3、〇〇溺愛LV.3


リズもか、リズもMaxか。・・・・・・依存がMaxになっちゃったのか。

幼馴染に依存とか・・・いや、うん、好きな人に依存してないだけマシかな?マシ・・・なのか?どっちにしても駄目な気がしてきた。

「だからフィリア」

あれ、なんか近い。

ぐいっと右肩を掴まれたと思ったら、ぽすんと頭がリズの胸板にあたった。あれ?

「あんまり無防備な姿をさらしちゃ、駄目だよ」

「!?」

頭の天辺に何かが触れた感触が・・・・・・っ。ま、まさか。

恐る恐る視線を上にあげれば、満面の笑みを浮かべるリズの顔が至近距離にあって驚いた。ついでに言えば、頭を動かしたせいで額にリズの唇が振れたことにも驚いた。二重の驚きで眼を見開いて固まっちゃったよ!

「真っ赤で可愛いね」

「っな!」

蕩けるような眼を私に向けないで!

甘い声を耳元で囁かないで!

羞恥心で心臓、破裂しそう・・・。あぅ、顔どころか全身が熱いよ。

うう・・・↑が怖い。

その他のレベルをあげるものらしい↑が、こんな心臓に悪いなんて知らなかったよ。・・・あれ?でも前はそうでもなかったような。うん、そうだ。記憶が確かならその他のレベルはあがってなかった。なのに何で今?ランダム?不規則性?

↑の意味がやっぱり解んないよ!

「俺よりも性質わりぃぞ、リズ」

おおう!リズの身体が急に遠ざかって・・・・・・あ、アルト。今までどこにいたの?聞きたいけれど、リズの腕を引っ張り、私から遠ざけたアルトの顔が鬼も裸足逃げ出す程に怖かったので口をつぐんだ。

「・・・もう少し、気絶しててくれたらよかったのに」

「そりゃ、悪かったな」

二人の声に身体が底冷えして、風邪ひいちゃいそう。

「あれ以上するようなら、私が手を出すつもりだったんですが・・・」

「か、カルナード?何を、するつもりだったのかな?」

「うん?・・・ああ、大丈夫です」見る者を安心させる笑みを浮かべ「証拠は何一つ残しませんから」

まったく安心できない言葉を告げた弟に、私は頭を抱えた。

これが・・・これが、家族偏愛。なんて恐ろしい。さっきは良しとしたけど、駄目だコレ。何一つ良くない。

「と!・・・と、とりあえず、ラインハルト様やリィン様に挨拶だけして帰ろう」

「うん?別に今日、泊まってもいいよ?料理長に頼んで、フィリアが好きな料理出してもらうから。あ!そうだ。どうせなら昔みたいに一緒に寝ようか」

なんて魅力的な提案・・・!

「おい、料理でぐらつくなよ」

「ぐらついてないから!」

失礼だな、アルトは。私はそんなことで揺らぐ、簡単な女じゃないよ。

「・・・へぇ」だからそんな、疑いの眼を向けないでくれるかな?

視線から逃げるように顔を背ければ、苦笑するカルナードとリズが映り込む。うう・・・本当だよ?ぐらついてないから。いくら魅力的な提案でも、心が・・・・・・・・・正直、ちょっとだけぐらつきました。

「姉さん、知らない人に奢ってあげる、と言われてもついて行っては駄目ですよ?」

「しないから!私、そんな子供じゃないよ?!」

だからそんな、仕方ない子を見るような眼を姉に向けるんじゃありません!私、義理とは言え姉なんだよ!年上なんだよ・・・?

「それじゃあ、料理長に頼んでお菓子でも作ってもらうよ」

「それじゃあって何?!ねぇ、リズ!」

「そうだな。どうせ帰るなら、ここの美味い菓子食った方がいいだろう。フィリアも知らない奴について行かなくなるだろうし」

「・・・アルト」

この三人は一体、私を何歳だと思ってるんだ。

ひくりと頬が引きつり、怒りのこもった眼差しを三人に送る。・・・畜生、微笑ましそうに笑って。少しは怖がってよ、馬鹿!

そっぽを向き、頬を膨らませ――――私が不貞腐れたのは言うまでもない。







「フィリアって将来、詐欺とかに引っかかりそうでこぇわ」

リズの部屋にあるソファの肘掛に寄りかかり、頬杖をつくアルトが溜息と共にそう言った。

久しぶりに入ったリズの部屋は奥に寝室があるとは言え、まるで生徒会室のように綺麗に整理整頓されている。昔はもうちょっと物で溢れていたような気もするが、今は本棚にきちんと本が治められ、趣味で集めているアンティークの時計が棚に飾られていた。動かないとは言え・・・時計の数、多くない?

と、怪訝に思うよりも隣に座るアルトの言葉に私は顔を顰めた。

「さっきから私に失礼なんだけど」

「不貞腐れてた癖に、東の大陸の和菓子・・・だったか?それを出された瞬間、一気に上機嫌になったらなぁ。そう思わずにはいられねぇだろう?」

「それは・・・」

両手に持った苺大福を見下ろし、ガラス張りのテーブルに置かれた皿にある、色とりどりの金平糖に視線を映した。一口、口に放り込めば控えめな甘さが広がって甘いのが苦手な私でも楽しめるお菓子。・・・今、手に持っている苺大福と並んで私が好物だと言えるお菓子だ。

好物を前に、不機嫌でいられるはずがない。

「・・・和菓子の前じゃ、機嫌も直るよ。滅多に食べられないし、好きなお菓子だし」

「俺が進めた菓子は一切、食べねぇくせに」

「だって・・・甘くて」

苺大福を手前にある皿に戻し、湯気をくゆらせる、紅茶とは違う味わいの緑茶が入った湯呑に手を伸ばした。じんわりとした温かさが掌に伝わる。

「まぁ、確かに和菓子は美味しいですよね」

私の向こう側のソファに座るカルナードはそう言い、金平糖を摘まむと青色の星を舌にのせた。たったそれだけの仕草なのに、どうしてこう・・・色気を感じるのか。我が弟ながら将来が末恐ろしい。今でこうなら、成人したらどうなることやら。・・・おお、怖い。

ふぅっと湯気に息を吹きかけ、湯呑を傾けて舌で緑茶の水面をなぞる。ちょっと熱い。

「喜んでもらえたなら何よりだよ」

一人掛けのソファに座り、湯呑を両手で持つリズは・・・何と言うか、和が全般的に似合わない。恐ろしい程に似合わない。違和感しかないよ。

やはりリズには紅茶やコーヒーと言った洋が似合うなぁ、としみじみ思いながら少し冷めた緑茶を口に含んだ。う~む、やはり和菓子には緑茶がよく合う。

「・・・それより、良かったの?」

「ん?何が?」

「何がって・・・・・・ラインハルト様達に挨拶」

「しなくていいよ」さらりとリズは言うけれど。

眉を寄せ、困った顔をすればカルナードが肩を竦めた。

「王弟は今、王と共に外交官と話し合いをしているんですよ。そんな中に入って行きたいんですか、姉さん」

「行きたくない」

「王弟妃はラズベリス様を説教中。怒ると王弟よりも怖いと噂されるその方がいる場所に、姉さんは行きたいですか?」

「・・・行きたくない」

「挨拶はまた後日、と言う事で」

にこりと微笑んだカルナードに、私は力なく頷く。

「しっかし、説教だけか」

不満そうにアルトが呟いた。

「フィリアを蹴飛ばした事を告げたら王弟妃、もっと厳しいことしてくれないかな」

「ああ、それなら大丈夫。僕が兄上の教育係とそう言う事に煩いディオ、女尊男卑(じょそんだんび)な某方に告げ口したから。今頃・・・ははっ」

「へぇ、女尊男卑な某方・・・おい、それって」

「ああ、あの方ですか。確か、女性には年齢関係なく常に紳士であれ。がモットーでしたね。女性を軽視したり、暴力を奮う男には容赦がないと有名なあの方なら、前者二名よりも・・・可哀そうに」

「確かに、あの人なら・・・・・・っは」

あの人って誰?

女尊男卑な方って誰!

私の知ってる人・・・?え、誰だろう。

真面目に考えてみたけど、思い当たる人がまったくいないんだけど。本当、誰?

「朝日が見れるといいな、ラズベリス様」

「朝日は見れると思うけど、暫くは動けないんじゃないかな?」

「二か月はまともに動けないでしょうけど、自業自得なので仕方ないですよね」

・・・天誅が下ることを望んだけど、ちょっと、いや、本当に少しだけラズベリス様が可哀そうに思えちゃった。

音をたてて緑茶を飲み、湯呑をテーブルに戻す。

「それで、火の賢者はどうなったの?」

「・・・ん?あー、うん、聞いた話だとまだ意識は戻ってないみたい。父上、鳩尾に強い一発を喰らわせたみたいで」

「子供相手に容赦ない。・・・王弟の一撃を喰らってよく生きてたな、火の賢者」

「躾は大事だよ?それに加減をしたら誰だって生きてるよ。まったく、父上をなんだと思ってるんだよ」

「たった一人で一個師団どころか大軍を壊滅させられる存在。最強最終兵器」

「最強は認めるけど・・・兵器って。まったく、あれは父上も少し本気を出したからだよ」

苺大福美味しいなー。

苺がある部分までかじりつき、甘酸っぱさを口の中で味わう。

「・・・どうやら、火の賢者と言うのは相当タフらしいですね」

「?」いきなり何を言い出すの、カルナード?

カルナードの視線は部屋の入口に向いており、そこから何かが聞こえることはない。・・・ないよね?確かめるように二人を見れば、アルトが不愉快そうに顔をしかめ、リズが真顔で扉を見つめていた。

と、扉の向こうに何があるの・・・?戦々恐々になるからやめて。

「ここか、花の乙女!!」

ごくり、唾と一緒に飲み込んだ苺大福に咽そうになった。

「ああ、こんな所にいたのか俺の乙女!」

ノックもなしに開けられた扉から現れたのは、煉獄を思わせる苛烈な瞳をした子供だった。

「さぁ、こんな無礼共の住む国を離れ、俺と一緒に行こう。聖国へ!」

「そこまでにしてもらおうか、火の賢者サマ」

にこりと、それはもう美しい笑みを浮かべたリズが制止を告げた。・・・額に浮かぶ青筋は目の錯覚かな。

火の賢者と呼ばれた子供は不愉快だと幼いながらも端正な顔立ちを歪め、肩程の長さがある橙色の髪を左手で払った。その仕草だけどんな子供か大体理解してしまった。――この子、我儘で自己中心的だ。間違いない。

「ノックもなしに人の部屋に入るのは、どうかと思うよ?」

「ふん!入られたくないのならば鍵でもかけておけ。鍵をかけていなかったお前の落ち度だ、俺は悪くない」

うわ、リズのこめかみがぴくぴく痙攣してるよ。珍し。

「子供とは言え、躾はしっかりするべきだよね。ははっ・・・僕も、父上みたいに肉体的言語で語ってみようかな」

「り、リズ・・・!?」地を這うような声に驚き、名を呼べばにこりと微笑まれた。ひぃ。

「お、落ち着こう。ね、落ち着こうよ。相手は子供だよ?肉体的言語は暴力だと思うんだ、うん!やめよう、ね?やめよう?暴力反対!」

震える声で告げたのに、リズの表情はまったく変わらない。笑顔が怖いよぉぉ。

「リズさん、この常識知らずをさっさと追い出しましょう。姉さんに悪影響です」

「だな。フィリアに逢いたいなら、せめて常識を覚えてから来い」

「な、なんだ無礼者!俺に近づくな、触るな!燃やすぞ!」

うわ、駄目だこの子供。空気読めてない!

しかも自分の意にそぐわないとすぐに力を使おうとするなんて・・・ああもう、まったく、コレと同類なんて勘弁してほしいな。

溜息を吐き出し、さて、どうしようかと考えた。

考えたけど・・・残念なことに植物は火に弱いので、私は何もできない。なので、ここは三人に任せることにしよう。下手に手を出して、怪我をするのは私だしね!

「ち、近づくな!男は消えろ!」

・・・?妙に、男を毛嫌いしているような。

同性嫌悪?その年で女好きなの、火の賢者。呆れた眼で火の賢者を見つめていれば、何かに気づいたのかカルナードが動きを止めた。ついでリズが止まり、違和感を覚えたのかアルトも止まった。・・・え?え?

「くっそ!こんなに男に近づかれてしまった!穢れる!男臭に侵されるっ!!ああ、畜生!忌々しい、憎らしい!男の匂いが服についた・・・っ。すぐにシャワーを浴びないとっ!!!」

・・・そこまでか。

「・・・リズさん、外交官って女性ですか」

「僕が知ってる外交官が今日、ここにいるならそうだね」

「そうですか」

思案顔のカルナードは顎に手をあて、口をつぐんでしまった。

「なぁ、もしかしてこいつ」

「確証はないですけど、おそらくは」

「・・・へぇ、そうなんだ」

「実際にいるとは思わなかったよ」

どう言う事だと首を傾げれば、三人の視線が私に向いた。な、何・・・?

リズに手招きされ、恐る恐ると近づいた。

火の賢者はまだぶつぶつと呟いており、どこからか出した香水を身体中に吹きかけていた。・・・薔薇の匂いがきつい。

「ちょっと頼みたいんだけど」

「・・・・・・・・・拒否権は?」

「大丈夫、危険なことじゃないから」

拒否権はないのか。

がくりと項垂れ、息を吐き出して視線をリズに向けた。・・・危険だったら恨むよ。

「何を頼みたいの?」

「ちょっと行ってきて」

「・・・・・・・・・は?」

どう言う事だと聞くより早く、身体を前に押された。あ、これ倒れる。冷静な思考に反し、身体は突然のことにさっきのような意地も根性もみせてくれない。やばい、ぶつかる!

眼の前にいる火の賢者が驚いた顔をし、私を凝視した。

ごめん、避けて!そう口にするより早く、私は火の賢者を巻き込んで転倒した。火の賢者を押し倒しちゃった。・・・リズ、恨むよ。

「ご、ごめ・・・・・・」

受け身も取れず、腰を痛めたであろう火の賢者に謝ろうと口を開き、瞠目した。

どうして、火の賢者は恍惚とした顔で私を見てるんだろう・・・?意思が強い、と言えば聞こえがいいが、どちらかと言うと頑固さを見せていた赤い瞳が熱を帯びたように潤んでいる。あれ?何か、得体の知れない不気味なモノを感じるんだけど。背筋に嫌な汗が流れるんですけど!

ほぅっと、熱っぽい息をついて火の賢者が私から視線をそらした。その反応何?!

「さ、流石の俺も人目がある場所で襲われるのは」

「ちがっ!」

何を言い出すんだ、この子供は!!


▽「変なこと言わないで!」 ×

 胸板を押す ↑

 頭突きをする ×


わ、私の頭突きが封じられた・・・!仕方がない、胸板を押して逃げてやるっ。


好感度:■■■■■■■


誰かの好感度があがった!・・・が、気にしないでおこう。


その他:友愛≠〇〇 LV.4


誰かのその他のレベルが・・・あがったのかな、コレ?とにかく現れたけど気にしないでおく。それよりも――――。

「お・・・」

咄嗟に胸板を押した手が、柔らかいモノに触れて唖然とした。

この感触を、私は知っている。

「お、女の子・・・?」

胸だ。

小振りながら張りのある胸がある。

思わず何度も揉み、感触を確かめてしまった。

賢者と呼ばれているんだから男だと思っていたが、どうやら違うらしい。驚いて両手で火の賢者・・・いや、火の乙女の胸を鷲づかみした。「あん」と艶っぽい声が聞こえたが、きっと空耳だ。

子供が艶っぽい声を出せるはずがない。

「お・・・俺は」

ふるふると火の乙女が身体を震わせ、がしりと胸を揉む私の右手を掴んだ。・・・あれ?

「俺は!・・・俺は揉まれるよりも揉みたい派だ!揉ませろ、花の乙女っ!」

「んな?!」

「さぁ、その胸を俺に委ねろ!安心しろ、ちっぱいだろうが俺は愛せるっ!!」

「し、失礼な!これでも・・・・・・な、なんでもない」

言えない。

ここに異性が三人もいるのに、私の胸は寄せて上げてもカップの大きさがBにしかならないことは絶対に言えないっ。・・・AAじゃないだけマシだけど、マシだけども。

私の胸を揉もうとする火の乙女の魔の手から何とか逃れ、逃げるようにソファの後ろに隠れた。怖い。血走った眼が怖い!本当に子供で、女の子?!

「何故だ」

心の底から悔しそうな声を出さないで欲しい。

「何故、俺に揉ませない!」

「も、揉ませるか!」

「俺の胸を揉んだ癖に、自分のは揉ませないなんてずるいじゃないか!」

「あれは不可抗力で、ワザとじゃないから!」

両手をワキワキさせて近づくな!

怖い!この火の乙女が怖いっ!い、いやー!!こっちこないでぇぇぇぇぇええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇっ!!!


▽「助けて、アルト!」

 「カルナードっ」

 リズの元に逃げる


ここで選択肢がでるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

これアレだよね?誰を選んでも好感度があがるんでしょ!解ってる、私は解ってるんだよ!でも選ぶしか道がないのが悲しいっ。

ここはこの場で一番、頼りになる彼に助けを求めるのが一番だろう。

ああもう、まだ↑がある方がいいよっ!

「助けて、アルト!」

「おう、任せとけ」

軽く了承したアルトの傍に逃げ、ぴたりとその背にしがみついた。


好感度:■■■■■■■■


これはもう、仕方がない。

諦めを胸中で抱きながら、私は息を吐き出した。

小さい頃、何度も困った事や危険から守ってくれたアルト。その背は幼い頃と違って逞しく成長したけど、頼りがいは昔と何一つ変わっていない。だからあの火の乙女(変態)から私を護ってっ!

「どうして男の背中に隠れるんだ!花の乙女ぇぇぇっ!」

「そりゃ、お前が怖いからだろ」

「俺のどこが怖いんだ!」

全部だよ!

「俺は怖くない!俺は至って普通の――女が好きな同性愛者だ!」

「私はノーマル!普通なの!!」

ひぃ、こっちくんな!

アルトの服を握りしめ、じりじりとこちらに近づいてくる火の乙女に恐怖しか覚えない。

「・・・・・・・・・・・・・・・これ以上は不愉快だから、早々に退場を願おうかな」

「羨ましいんだろう」

どうにかこちらに近づこうとする火の乙女の手は、まだワキワキと動いている。そろそろ諦めない?!

「ははっ・・・アルトも一緒に退場する?」

「んじゃ、フィリアも一緒に連れて行くわ」

「姉さんは連れて行かないでくれませんか?私と一緒に家に帰るので」

顔を紅潮させ、鼻息荒くゆらゆらと不気味に身体を揺らす火の乙女。ああ・・・夢に出てきそうで凄く嫌。悪夢だ。絶対、今日の夢は悪夢になる。

「フィリア」

「?!・・・な、なに?」いきなり話しかけないでよ。

「俺と離れたいか?」

「やだ」

そんなことされたら私、火の乙女の餌食になっちゃうっ。

盾のアルトがいないと駄目なんだよ!

首を左右に振り、拒否を示す私に何故か上機嫌に笑うアルト。笑い事じゃないよ。私の貞操がかかってるんだよ!盾になっててよ!

「――それじゃあ、これでもうアルトにくっつく必要もないよね」

「へ・・・?あ、いない」

「火の乙女はもう連れて行ってもらったから、安心していいよ」

「本当・・・本当に?」

「うん、本当。僕はフィリアに嘘はつかないよ。今までだってフィリアに嘘、ついたことないでしょ?」

「・・・うん」

昔からリズは、私にだけは嘘をつかなかった。

代わりに冗談やはぐらかすことはあっても、嘘をついて騙すことだけはしなかった。だから信用できる。できるんだけど・・・・・・()に連れて行かれたんだろう。


▽「誰が連れて行ったの?」 ×

 「ありがとう」


はいはい、聞くなってことですか。頼まれたって聞かないよ。ふん。

「ありがとう」

「どういたしまして。じゃ、アルトから離れようか。すぐに離れよう」

とか言いつつ、リズはアルトの身体を突き飛ばして私から遠ざけた。やりすぎじゃない?


好感度:■■■■■■■■


予想していたけど、実際に眼にするとこう・・・・・・複雑な心境です。やっぱり×を選んで好感度をさげるべきだったかな。いや、でも貞操の危機は避けたいし。うう、頭を抱える案件だ。

「あっぶねぇな。何すんだよ、いきなり」

「あ、ごめんね。イラっとして」

「本音が出たよ、こいつ。なぁ、酷いと思わねぇ、カルナ?」

「姉さんからすぐに離れないアルトさんが悪いと思います」

「悪いって・・・俺の服をフィリアが握ってたんだから、すぐには無理だって」

「外せばよかったじゃないですか」

ここは恥とか色々捨てて、×を選ぶべきかもしれない。

「姉さんも、どうしてアルトさんに頼ったんですか」

「へ?」いきなり何?

「確かに私はアルトさんやリズさんに比べれば武術の腕は劣ります。それでも私は!・・・私が姉さんを護りたかったのに」

え?何の話?

まって、私、解んない。


「なんのこと?」 ×

▽「そんなことないよ」 


いや、良く解ってないのに「そんなことないよ」って言える?でも、「なんのこと?」って聞いたら間違いなく、カルナードは怒る。激怒する弟の姿が容易に想像でき、何とも言えない気分になった。

「そんなことないよ」

「実際、アルトさんを頼ったじゃないですか。アルトさんがいなければリズさん。リズさんがいなかったら私。私では姉さんに頼ってもらえないんですよ」

まぁ、確かに三人がいる時に何か困った事があったらアルトを真っ先に頼るけど、別にアルトだけに頼る訳じゃないよ?場合によってはリズを真っ先に頼るし、カルナードを頼る時だってあるのに。カルナードは何が不満なんだろう。

まぁでも、何の話かは解ったよ。


好感度:■■■■■■■■


見なかったことにしよう。

「本当に、そんなことないよ?今回はたまたまアルトを頼っただけだし」

「アルトさんを頼る回数が多いのに、たまたまですか」

「・・・拗ねてる?」

「ええ、姉さんのせいで拗ねてます」

素直に認める弟は可愛いけれど、行動は意味が判らなくて可愛くない。

どうして私を抱きしめる必要があるの?ちょっと、そのことについて向き合って話し合おうか。

「姉さんには私だけを頼りにして欲しいんです」

・・・〇〇支配欲のせいかな、これって。

と、すると〇〇に当てはまるのはもしかして・・・・・・か、考えるのは止めよう。うん、きっと気のせい。まったく違う文字が入る可能性はまだあるよね!どうしよう、身体の震えが止まらない。

「姉さん?どうかしましたか?」

「な、なにも」ヤバい、笑顔が引きつってる。

「何でもないけど、そろそろ離れようか?ね?」

「・・・そうですね。これ以上は身の危険を感じますし、名残惜しいですがそうします」

ゆっくりと身体を放したカルナードに胸を押さえ、息を吐き出した。

「もう私、帰っていいかな・・・?」

火の乙女のせいで疲労感が蓄積され、どっと疲れた。

今日はもう、夕食を食べずに寝よう。はぁ・・・ベッドにダイブしたらそのまま寝ちゃいそうだなぁ。そうなる前にお風呂に入らないと。

「疲れたなら泊ってもいいよ?無論、二人もね」

「遠慮する」

私はゆるりと首を横に振った。

「火の乙女がいる間は、ここには近づきたくない」

「えー」

不満そうに頬を膨らませたって、可愛くないから。

イケメンがやっても可愛くはならないから。ちょっときゅん、とはしたけど。


 「いなくなったら、いいよ」

▽「子供みたいに拗ねないでよ」 ×


「いなくなったら、いいよ」

特に何も考えずに口に出せば、リズがきょとんと瞬いた。

私、変なこと言った?

「・・・そっか。じゃ、手早く片そうかな」

何を?疑問符を浮かべる私に、一歩、リズが近づいた。

柔らかな笑みを浮かべる口元とは真逆に、瞳はどこか不敵で拒否を許さない。

「火の乙女をこの城から、国から追い出したら――泊りに来てよ、フィリア」

「その時は俺達も一緒だからな、リズ」

「ええ、姉さん一人で泊まらせたりはしませんから」

「えー」本心から残念そうな声だ。

「ま、仕方ないか。今はそれでもいいよ。でも、将来的には・・・ね?」

何が「ね?」なんだろう。「ね?」の意味を私は理解できないなぁ。

とりあえず、両肩に置かれたリズの手を退かし、溜息を吐き出す。泊まると言っても、部屋は別々なんだから何も問題はないと思うんだけど。アルトもカルナードも、何をそんなに怒ってるんだろう。

小さい頃のように同じ部屋で、同じベッドに寝る訳でもないのに。

「姉さん。まさかとは思いますが異性の家に泊まること自体、何も問題ない。・・・なんて、思ってませんよね?」


▽「幼馴染の家だよ?」

 首を傾げる ×


「幼馴染の家だよ?」

呆れた顔のカルナードを不思議に思いつつ、思ったことを口にする。

「問題なんて何もないと思・・・・・・・・・・・・わなくはないか。うん、幼馴染とは言え異性だもんね。私、女。リズ、男。問題あるね、うん」

鋭い眼光で凝視され、視線をそらしてしまった。

あわわ、嫌な汗が額から滝のように流れて来た。軽く考えていた私が悪かったから、そんな眼で見ないでよ。ごめんってば。

「馬鹿だろ」

反論できない。

「知らない奴はともかく、知ってる相手なら、どこに行くかも聞かないでほいほいとついて行くだろ。絶対」

「さっきも言ったけど、そう簡単について行かないよ!子供か、私は!」

疑われてる。

物凄い疑いの眼で見られてる。

あ、もしかしてこれは独占欲によるものかも。・・・だとしたらいい迷惑だ。


▽殴る

 「ねぇ、信じて」 ×


よぉし!殴ろう!

きっと私は今、物凄くいい笑顔をしてるんだろうな!

「っい!・・・何すんだよ」

「疑うアルトが悪い」

そっぽを向き、私は足を動かした。

「あ、おい!どこに行くんだよ」

「煩い、ばぁか!三人とも嫌い!ついて来ないでよね!」

駆け足で扉を開け、逃げるようにリズの部屋から飛び出した。

スタートダッシュでしくじると、簡単にあの三人に捕獲されてしまう。運動は苦手だけど、今はあの三人から逃げるために頑張る。明日、筋肉痛になるだろうけど・・・はぁ。ルキの薬でも買いに行こう。

ついでに、今日あったことも愚痴りに行こう!

よし、そうと決まれば絶対に掴まる訳には行かない。背後から三人が追ってくる様子はないけれど、油断は出来ない。ここは時間短縮で行こう!そう決め、私は迷うことなく廊下の窓に足をかけた。はしたない?自由を得るのに恥なんて必要ないんだよ!近くを通りかかった侍女の叱責を笑顔で躱し、勢いよく窓から飛び降りた。悲鳴が聞こえるけど、今は気にしない。

あ・・・私、窓から侵入したアルトやリズと似たことしてる。あれはあれ、これはこれ!だね!うん、気にしない。

力を使って落下の勢いを殺し、無事に地面に着地。そのまま猛ダッシュで王城を去る。

よし、これで三人からは無事に逃げられた。家に帰ったらカルナードの説教があるだろうけど、自由のためだから仕方がない。

しかし、困った。

三人の好感度をあげてしまった。どうしよう。本当にどうしよう。


好感度:■■■■■■■■■


×を選んでも、あんまり意味がないような気がしてきたよ。

その辺りも含め、ルキに相談しよう。

解決できるとはまったく思えないけど。・・・はぁ、憂鬱だ。

私の平穏って、どこに消えたんだろう。


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