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花の乙女は平穏を愛する  作者: 如月雨水
route:カルナード
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6

route:カルナード(全六話)

桜舞う、小さな教会の前で私とギネア、ヴェルナンドが立ち止まった。

森林に囲まれた街外れの教会はこじんまりとし、歴史ある佇まいをしている。ただの古臭い建物だと嗤う者がいるけど、周囲を桜に囲まれ、春を告げる花が咲き乱れて彩られた地面。それが教会の軽やかな音色と合わさると神秘的な程に美しく、見る者を魅了する。

何より今日は雲一つない晴天。

空に桜色が混じり、視界を楽しませる。

ああなんて――――。

「嫌な日ですね、本当」

「・・・ギネア」

「だって本当、わたくしにとって嫌な日なんです。それなのにまるで祝福するように桜が満開で、空も快晴!曇天ぐらい来ても良いと思いませんか?」

「いい加減、素直に弟君を認めたらどうっスか」

ヴェルナンドが溜息をはきつつ、呆れた眼をギネアに向ける。

ギネアが可愛らしく頬を膨らませた。

もう二十歳だって言うのに、そういう仕草が似あうなんて美形って恐ろしい。

「認めたら結婚しちゃうじゃないですか!」

「今日が弟君の誕生日で、婚姻届を出す日なんデショ?いや、出したんでしたっけ?とにかくもう、諦めた方がいいと思いますよ、俺は」

「嫌です!フィリアは私と一緒に独身を楽しむんです!わたくし、そのために健康体になったんですよ?!」

「いや、関係ねぇデショ」

時間の流れとは早いもので、カルナードと婚約してから早三年。

左手に輝く指輪を見て、頬が勝手に綻ぶ。

気持ちだけでも先に結婚をしたあの日から、何か特別変わったこと・・・と、言えば在学中に私に対して嫌がらせや悪質な悪戯等々と言った行為がなくなったことかな。今まで嫌味や悪口を言っていただけの女子生徒も私と視線を合わせず、何か怖いモノから逃げるように去っていったし、近づかなかった。

・・・原因はカルナードかな?

そう思ってそれとなーく聞いてみたら、「トラウマ()飢えてないですよ」と言うだけで詳しく教えてくれない。恐ろしくてそれ以上は聞けなかったよ、私。

あと、何か変わったことと言えば普通学科二年の仲間の一部が聖国で就職したり、聖国の王太女が王様に一目惚れして王国に入り浸るようになったり、帝国の火の乙女が洗脳された様に立派な淑女となってラズベリス様と婚約したことぐらいかな?後はリズが第三師団団長の後継になって、アルトが次期副団長候補になったことだね。

うん、これと言って何も変わってない気がする。

あ、いや、変わったことはある。

親友二人と幼馴染達と婚約者の成長だ。

「ギネアもそろそろ結婚して、親御さんを喜ばせたらどうデスか」

ヴェルナンドもギネアも、二十歳となってより一層魅力的に成長したんだよ。私なんてあんまり変わってないのに!髪がちょっと伸びたかなー?程度なのに!胸も背も大きくならなかったのに・・・。

「その言葉、そのままお返しします」

「残念!俺は後継ぎじゃねぇんで、なーんにも期待されてねぇんスよ!」

ヴェルナンドは童顔のままだが視線一つ、指一本で見る者を魅了する色気を取得した。さらに二十歳になってから煙草を吸い、排他的な雰囲気すら纏い出して・・・「それが良い!」と言う年上の女性だけではなく、悪に憧れる年頃の心まで奪う始末。私がしている中で一番、危険で妖艶な魔性の色気を持っている人物に成長しちゃったよ・・・。

まったく、末恐ろしい悪友だ!その色気、私に分けてくれない?!

「お兄さんがいても、娘には結婚して欲しいものデショ。両親って」

「それが全然!男っ気が一切ない娘に両親も好きに生きろ、と諦めてましたよ」

ギネアは露出の激しい服を着ていないけど、髪を払う仕草、首を傾げる動作、足運び、立ち姿、それら全てが洗礼されてハッとする程の美しさを得た。そこに蠱惑的な魅力が加わり、男女関係なく見る者の眼を奪ってしまう。耐性がなければ数分は使い物にならない程。

それでもルキに比べればまだマシ・・・なんだけど、我が親友ながら恐ろしいなぁ!

他の普通学科の仲間もそれぞれ魅力的になって、平凡な私は彼らが集まると顔面偏差値の違いに泣きたくなる。――そんなの今更だけど、でも泣きたい。

ヴェルナンドが懐から煙草を取り出して煙草を口に加える。煙草と一緒に取り出したライターで火をつけ、紫煙をくゆらせる。

「それよりここに何の用があるんデスか、フィリア?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「聞いてねぇデスよ」

人差し指と中指で煙草をはさみ、吸い込んだ煙を吐き出す。

「偶々、わたくし達がどこかへ行くフィリアを見つけて後をついて来ただけだもの。知らないのは当然ですよね」

「ストーカー発言」

「何か言いましたか?」

「いんや」そっぽを向き、ヴェルナンドが煙草をふかした。

「――――ねぇそれ、身体に悪いから早々に止めることをお勧めするよ」

「これ、煙草に見せた薬だから問題ないデスよ」

「薬?」

「最近、どこかの誰かのせいで胃痛と頭痛が激しくて・・・でも俺、薬って嫌いだから飲みたくないんデスよ。――って月の乙女さんに言ったらコレをくれた」

・・・ルキ、何を作ってんのさ。

あと、どこかの誰かって間違いなく。

「あら、それは大変ですね。けれど忍耐を鍛えるにはいいんじゃないですか?」

ギネアだよね。

いやー、学園時代から思ってたけどこの二人、本当に仲がいいな。卒業した今だって他の仲間と違い頻繁に連絡を取り合って、顔を合わせてるらしいし。・・・っは!もしかしてこの二人。

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・いや、ないな。

過去を振り返ってみても、二人が甘い雰囲気になったことはない。かと言って険悪な空気になったことも・・・あんまりない。

でももしかしたら、と言う可能性もある。

「二人ってお似合いだよね、付き合わないの?」

試しに聞いてみた私が悪かった。

三秒固まった後、互いに向き合い、容赦のない殴り合いに発展するとは・・・予想してなかったよ。そんなに嫌・・・だった?

「――ってああ!!ちょ、ぎ、ギネア?!マウントとってヴェルナンドをタコ殴りしないで!顔を積極的に狙うのはどうかと思うよ!!」

「大丈夫ですよ、フィリア」

聖母の如き笑みを浮かべ、ギネアは殴ったまま振り返った。

こわ・・・っ。

「顔ではなく、頭を狙ってるだけですから」

「余計に駄目だよね!?」

ヴェルナンドがぐったりしてるんだけど!!

「ご、ごめん!本当にごめん!不用意なこと言ってごめんなさい!だからもうやめてー!!」







あの後、聖母の顔を浮かべるギネアをヴェルナンドから何とか離し、説得と懇願と泣き落としによってその怒りを治めた。救出したヴェルナンドの意識は戻らず、結婚を祝いに来た仲間に頼んで自宅に連れて帰ってもらった。頭、何ともないといいけど・・・。

嫌だ嫌だとごねるギネアも、ついでに連れて行ってもらった。

・・・結局、ここに来た目的を話せなかったよ。

まぁ、ただの散歩ってだけだから別に話さなくても良かったんだけどね。でも・・・ちょっとがっかり。折角逢ったんだから惚気を言いたかったなぁ、聞かせたかったなぁ。

溜息を吐きながら、ゆっくりと教会の扉を開ける。

軋む音がしたけどこの扉、壊れない?大丈夫?てか重い。

「・・・っ、ふぅ・・・あれ?神父様がいない」

中は無人だった。

ここには教会関係者が住んでいたはずだけど・・・・・・買い物にでも行ったのかな?だとしても不用心。あ、これ・・・勝手に入って怒られないかな?怒られないよね。扉に鍵、かかってなかったし。

重い扉を押して疲れた腕をほぐし、緩慢に足を動かす。

地母神が描かれたステンドグラスは、様々な場面のかの方が描かれている。特に眼を引いたのは正面にある大きなステンドグラスで、世界樹を抱きしめる姿が描かれていた。

よくよく見れば、地母神の後ろに魂の管理者と名乗った彼がいる。

これを作った人は私同様、神様にあったことがあるのかな?

それとも想像?だとしたら凄い想像力。

祭壇前で足を止め、ぼんやりと見上げる。

この教会に来たのは本音を言えば、私の意志じゃない。

例によって例の如く、選択肢のせいだ。

今日の朝、学園に行くカルナードを見送ってから現れた選択肢。

三年ぶりに現れた!もう見ないと思ったのに!?と愕然とする私の前に見えたのは。


▽街外れの教会に行く ★

 街外れの教会で行く ★

 街外れの教会で行く ★


バグ?と首を傾げたこれだった。

少し時間をおいてみたけど他に選択肢が現れることもなく、何の冗談だろうと思いながら事実上一択しかない選択をした。

とくに変わったこともなく、止まっていた時も戻って私はカルナードの背が見えなくなってから街外れの教会へ足を向けた――と言う訳だ。

ここで何があるんだろう?

好感度はMaxだし、その他もMaxだし、これ以上、何が起きるの?

若干、怖いんだけど。

長椅子に腰を下ろし、恐怖からソワソワと落ち着きなく身体を揺らす。

王城の鐘の音が鳴った。

合わせるように教会の鐘も鳴り響く。まるで協奏曲のように聞こえ、美しい旋律に恐怖を忘れた。

「・・・フィリア?」

聞きなれた、愛しい人の声に夢心地から覚めた。

「こんな所でどうしたんですか?」

十八歳になったカルナードは魅力を強化させた。

涼やかな顔に書類仕事が多くて悪化した視力を補うため、かけられたシンプルな眼鏡。背丈はリズより高く、アルトより低いが身体付きは三人の中で一番平均的。贅肉はないが鍛えられた筋肉もあんまりない。少し伸びた髪を、私があげた紐で簡単に括っている。だけなのに、眼鏡姿と相まって余計に格好よく、大人びて見える。

私に眼鏡属性があることに驚いたけど、一番好きなカルナードの顔にあると余計に駄目。見惚れて他に眼が向かないもん。思考を他のことに働かせないと、意識が奪われるレベルで危険!

現に今も、近づいてきたカルナードの足音で漸く、意識が戻ったくらいだしね!

思考を他に巡らせるためにはえっと、えっと・・・とりあえず喋るべし!

「こんなって・・・それは私の台詞だと思うんだけど。カルナード、授業はどうしたの?」

「今日の授業は二限まで・・・って、昨日言ったはずですけど」

「あれ?そう・・・だったね。うん、思い出した」

視線を斜め下に向けたら、腰をかがめて顔を覗き込まれそうになった。やめてってば!

くぅ、不覚ながら・・・三年と言う月日で私はカルナードに、自分の顔に弱い。と言う弱点を知られてしまった。さらに眼鏡属性と言うことも見抜かれ、こうしてわざと私を追い詰める。これもある意味、不安支配欲が原因なんだろうな。

婚約もして、結婚もするのに不安が消えないってなんなのさ!もう。

「それで、フィリアはどうしてここに?」

「私は・・・ちょっと散歩に」

顎を掴まれ、強制的に眼が合わさる。

うう・・・この魔性!双眸だけで人の心を魅了しないでよ。カルナードの眼鏡姿、大好きだけど!似合っててすっごく、格好いいけども!

三年経って多少の耐性はついたけど、たまにぐらっと来るから怖いんだよね。あ、これはただの惚れた弱みか。

「か、カルナードはどうしてここに?」

「あー・・・我ながら、成人した事実が嬉しすぎたんでしょうね。気が付いたらここにいました」

照れたように微笑み、空いた手で頭を掻く。

何気ないその仕草に私の胸がきゅーんと締め付けられた。頬に熱が宿り、逃げるように両手でカルナードの身体を押して一歩、後退する。

心臓が絞殺されるところだった・・・っ。

「慣れられても困るけど、慣れなすぎるのも困りますね」

「や、だって、あの!」

「それじゃあこの先、フィリアが困りますよ?」

「何にどう困るの?!・・・お、面白がってるでしょ!」

「いいえ」真顔で首を横に振られた。「真剣に心配してます」

「これじゃあキス以上のことはなかなか出来そうにないな・・・と」

「!?」

「顔真っ赤ですけど、大丈夫ですか?」

元凶が笑顔で何を言う!

毛を逆立ってて威嚇する猫のようにカルナードを睨み、赤くなった頬を冷まそうと両手で風を送る。うう・・・熱が全然下がってくれないよ。

「ああ、そうだ」

「・・・何、この手?」

長椅子に座る私の前に膝をつき、私の左手に触れるカルナードに首を傾げた。

握手?なんで?

「私は今日、成人しました」

「うん?そうだね。帰ったらまず家族でお祝いして、それから夜会を開いてのお祝いになって、後・・・結婚までいろいろあり過ぎてよく解んないや」

予定が詰め込まれすぎてて本当、私の頭では半分も理解できなかったよ。

とりあえずカルナードの生誕を祝って、結婚式まで衣装や宝石、式場に招待客への案内状とかその他諸々があるらしいことは理解してるけど。あ、カルナードが当主になるための儀式もやるんだっけ?

「え?」

意識をそらしていたのがいけないのか、指からするりと指輪を外された。

「なん・・・で?」

私との結婚、嫌になった?

他に好きな人でもできたの?

指輪を外されたショックからぐるぐると思考は悪い方へと向かい、視界がぼやけてきた。私、何かしたっけ?些細なことで喧嘩はするけど、こんな、指輪を外されるようなことはしてないのに。どうして。

頬を何かが伝った。ああ、やだ。泣いちゃ駄目。

「フィリア」やめて、優しい声で呼ばないで。

「この指輪に刻まれた文字を、覚えてますか?」

なんで・・・そんなこと聞くんだろう?

「・・・・・・・・・・・・〈貴女を一生護る〉」

不思議に思いながら告げれば、空いた手が私の頬にそえられる。

「そして私の指輪には、〈唯一人の最愛〉」

頬を流れる涙を舐めとられ、カルナードが額を合わせた。

「結婚してください、フィリア」

それは、三年前に告げられた台詞。

返事はもう、決まってる。

「うん・・・うん!」

私の不安は杞憂だったことに安堵し、涙が次から次へとこぼれていく。それを隠すようにカルナードに抱き着き、首元にすり寄る。

「指輪はず、外すから、私との結婚、い、いや、嫌になったのかと思ったよ」

「それは絶対にありえませんから」

力強く否定してくれたカルナ―ドは私の背を優しく摩ってくれた。

「じゃあどうして指輪、外したの・・・?」

気持ちも落ち着き、カルナードからゆっくりと身体を放しながら尋ねる。・・・なんで頬を赤くさせてるの?照れる要素がどこにあったの?

驚きで涙もひっこんだよ。

「その、成人したので・・・あの日のやり直し、と言うか、改めて告げたかった、と言うか、えっと、つまり」

「うん、つまり」

教会(ここ)でもう一度、言いたかったんです」

そのために指輪を外して、私を泣かせたのか。

「いひゃ・・・いひゃいふぇす」

「煩い、馬鹿」

両手でカルナードの頬を引っ張れば、あら、美形が台無しの顔。この顔を見たらカルナードに恋する乙女の熱も冷めるだろう。・・・この顔、紙に書いてばらまこうかな。

「今度、こんなことしたら別居するから。ルキの・・・ううん、ギネアの家に行くから迎えに来ないでよね!」

「もうしませんからそれだけは絶対に止めてください」

真面目な顔で懇願された。

確かにギネアの元へ行ったら・・・何かと理由をつけて戻れない可能性が高いね。何故だか私に執着されてるし、私と独身を謳歌って言ってたし。迂闊にギネアのとこへ逃げたら、そのまま国外へ連れ出される予感すらするよ。

「私も嫌だから、絶対にしないでね」

「はい、肝に命じます」

互いに苦笑して、カルナードは私の隣に腰を下ろした。

触れあった手を重ね、指を絡める。

ただ何も言わず、じっと祭壇を――その奥にあるステンドグラスを見つめた。


▽Congratulation!△


頭の中でファンファーレが鳴り響き、頭上で色とりどりの花弁が舞い踊るのが見えた。

視界を彩る光景に驚くが、それよりも現れた文字だ。あれは選択肢と似た何かなのかもしれない。そう思うと警戒心を抱き、絡めた指に力をこめてしまった。

「カルナード」

隣を見れば、眼を瞑っているカルナードの姿がある。

時が止まったのかと思ったけど、先程まで確かにカルナードは眼を開けていた。眠ってる・・・?どうして?

訝し気に顔を歪める私の耳元で、聞いたことのない男の声が届いた。

『なかなかに楽しい劇だったぞ』

妙に色気を含んだ声に、意識が囚われた。

『だが、及第点だ。我を満足させる劇ではなかった』

何かが眼の前に移動した。声の主?

意識が囚われたせいか、視界がぼやける。かすむ双眸で見えたのは黒髪黒目の、この世ならざる者の気配をまとう長身痩躯の美丈夫。

まともに機能しない眼球のせいで姿をはっきり確認できないけれど、私の知る中の誰よりも強者で覇者。逆らうことが許されない、絶対的の王者だと囚われた意識の中でもすぐに解った。

――ああ、眼の前にいるのが神々の王。

私にスキル擬きを与えた元凶――。

『だがまぁ、我らに愛される奇特な人間の中で一番、我を愉快にさせてくれた。まったく、ただの人間にしておくのが惜しいくらいだ』

勝手なことを言ってくれる。私は神々の王を楽しませる玩具じゃない。変なスキル擬きを与えて遊ばないで欲しい。

眼の前の相手が誰か解っても、怒りは抱く。

『ああ、やはり面白い。・・・せめてもの慈悲だ、人間として生は全うさせてやろう』

待って、それはどう言う意味?

『さて、これからの人生に選択肢は現れない。何をしても自らの責任で進むしかない。故に――後は好きに、己が心のままに生きるがいい』

言うだけ言って、風に溶けるように姿が消えた。

私が気に入られた理由も、あの言葉の真意も聞くことも出来ずに・・・。勝手に現れて、勝手に消えた。頭が痛い。

私は頭痛をこらえながらステンドグラスを見上げた。


もしもし、地母神様。

もしもし、魂の管理者様。

神々の王をどうにかしてくれませんか?私、死後になにされるの?


心の中で問いかけてみたけど、当然ながら返答はない。

頭上で舞っていた花弁もいつの間にか消え、あれは神々の王が現れるための演出かと溜息を吐き出した。

隣を見る。

カルナードは眠っているようだ。

神々の王が何かしたのかもしれない。また出そうになる溜息をぐっと耐え、カルナードの肩に頭を乗せる。安定感が・・・。

起こさないようにそっと安定する場所を探し、空いた手も繋いだ手にそっとそえた。

木漏れ日の優しさに欠伸が出た。

カルナードも寝てるし、私も寝ようかな。のんきに考えて、眼を閉じた。



▽Goodend△


まぶたの裏に現れた文字に眉を寄せ、眼を開ける。

現実の視界には文字はない。

神々の王は選択肢はもう現れないと言った。

ならばアレは何だったんだろう?再度、眼を閉じても文字は現れなかった。

「・・・及第点」

ふと気になった及第点の言葉。それと先程現れた文字の意味を考えてみた。

もしかして・・・神々の王にとって、私とカルナードが歩んだこれまでの人生がGoodend――及第点、なのかもしれない。

「違うよ、まったく違う」

GoodではなくHappyの間違いだよ。

不機嫌を表情に出さず、私はカルナードを見上げた。

私はカルナードと幸せになるんだから。

私がカルナードを幸せにして、カルナードが私を幸せにする。

あの時告げられた言葉通りに、二人で一緒に・・・。

だから私は三年前のあの日、あの時に――――。



私は自信を持って、カルナードの傍にいようと決めたんだから。







・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

「――――ところでカルナード」

「何ですか?」

「もしもだよ、もしも私が選んでなかったらどうしてた?」

「そうですね。分家から優秀な男児を跡取りとして引き取り、ある程度まで育てたら全てから足を洗って湖畔にある別荘に隠居してました」

「・・・わぁ、具体的」

「選ばれない可能性も高かったので」

「うん、まぁ、そう言うルートもあるよね」

「ルート?」

「ううん、何でもない」

route:カルナード、これにて完結です。続きを書く気はいっさい、ありません。カルナードとの話はこれで終了。あっさりしてるかもしれませんが、乙女ゲーム的に一番簡単に攻略出来て、特に障害もなく選択肢を間違わなければとんとん拍子にendを迎えられるキャラクター。と言うイメージで書いたので、内容は濃くなりません。

そもそも悪役やライバルをさっと登場させ、速攻で退場させたので長くなるはずがない!(断言)

次のrouteでもそんな感じで書く予定なので、だいたい六話で終わる予定です。

乙女ゲームが数分で終わったら笑いものですけど、これは小説で、乙女ゲーム風なので問題はありません!・・・たぶん(;'∀')

さて(;´∀`)、次はどっちを書こうかな。

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