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あと一話の予定!今月中には書き終えるぞ!----と言う決意表明
放課後を告げる鐘の音色が聞こえる中、秘密の花園で私はぼんやりと空を眺めていた。
存在を消された、と言えばいいのかな?書類上では死んだことになった帝国の第三王女はあの後、糸の切れた人形のようにぴくりとも動かなかった。騒がしかったのは従者で、自分は関係ないとか、命令に逆らえなかったとか、ごちゃごちゃ叫んでいた。忠誠心の欠片もない従者を虚ろな眼で見ていた彼女は、いったいどんな気持ちだったんだろう。
裏切られた?
捨てられた?
当事者ではない私では想像することしか出来ない。
微塵も動かない彼女を無理矢理立たせたグランドール先輩が、笑顔で「聖国の方に引き渡しますので」と言い、従者共々連れて行った。どこに、と聞けなかったけど第三王女が幽閉されることは決定事項だろう。
・・・どこからが、カルナードの計画だったんだろう。
私が解ることと言えば、普通学科二年が計画に関わっていた――と言うことだけ。
まぁ、ギネアが「計画に乗らなければ」と呟いていた声が聞こえたから判っただけなんだけどね。ギネアが乗ったなら、普通学科二年も乗ったはずだ。本当にもう、仲間意識が高いよね!・・・たぶん、他の人から見たら異常だと思われるぐらいには。
「――――それで、第三王女はどうなるの?」
「あ、漸く私を見てくれましたね」
ぼんやりと空を眺めている時から、ずっと隣に座っていたカルナードに尋ねた。
苦笑するカルナードに、そんなに放置していたかな?と首を傾げる。・・・確かに、授業を終えてから普通学科の校舎に何故かいたカルナードの右手を掴み、ここ、秘密の花園へ連れて来てから・・・・・・・・・ああうん、連れてくるまで一言も話してないや。
何を聞かれても無言を貫き、ベンチに座ってぼんやりと空を眺めてた。
うん、ごめん。
悪かったから泣きそうな顔で私を見ないで。
「そうですね。聖国に連れていかれたので戒律の厳しい修道院で一生、陽の目を見ることなく神に仕えるためだけに過ごすことになるでしょうね」
そっと右頬に触れ、カルナードがさらりと言った。
「ま、そのおかげで帝国が無事なんですからよかった。と思うべきでしょう」
「ふぅん。で――――どこから計画だったの?」
「フィリアを害する所は計画にはありません。あれは私ではなく、グランドール先輩の計画でしょう」
「どういうこと?」
なんでグランドール先輩が出てくるの?
「アレを確実に帝国から排除するために、フィリアを利用したってことですよ」
「・・・グランドール先輩、帝国と関係してたの?」
「母親が先々代の皇女の血筋を引いてるんですよ。知らなかったんですか?」
知らないと首を横に振り、唖然と開いたままの口から間の抜けた声が出た。いや、だって・・・吃驚して、ね?法を司る家の母親が、帝国の高貴な血筋を引いているとは思わないし。
「先々代ってことは、血は薄いし繋がりも希薄なんじゃ?」
「母親が才女と呼ばれるほどに優れた女性らしいので、未だに繋がりはありますよ。王国に来てからは表立って行動せず、帝国内の問題を相談されたら解決策を教える――程度らしいですけど」
「程度って・・・・・・その情報、どこで調べたの?」
「企業秘密ですので」
お得意のそれ、ですか。そうですか。じゃあ聞きませんよ。どうせ何一つ教えてくれないんだし。長い付き合いで解ってるよ。ケチ!
不貞腐れた私の頬を楽し気につつくカルナードの右手を払いのけ、睨むように見つめた。
「で、カルナードの計画は?」
「さぁ、どこからでしょうね」
肩を竦め、朗笑する姿に話す気がないことを悟った。
秘密の多い婚約者だなぁ、もう。
「あんまりそう言うこと多いと、カルナードのこと疑って信じられなくなるよ」
「それは困りますね」
まったく困ってない顔をするカルナードは、叩かれて若干赤くなった右手で私の頭に触れた。と、思えばぐっと頭を押され、身体が前のめりになり、ぽすん、と軽い音をたててカルナードの腕の中へ・・・。突然のことに、状況を理解するまで一分かかってしまった。
「っな、何して・・・?!」
甘く、左耳が食まれた。
痛くはないけど、熱い舌が耳を舐めて背筋が震える。あと、コリコリと耳を噛む音がダイレクトに聞こえて居心地が悪い。やめて、本当にやめて!変な声が出そうになるからやめて!
もう、私の許可なく変なこと?




