コンビ
朝、ディバイスにセットされたタイマーのアラームで重たいまぶたを開ける。
昨日の練習で全身筋肉痛確定だと思っていたのだが、寝起きの気怠さだけで特に体が痛く無いのに驚きつつ、二度寝の甘い誘惑を振り解き起き上がる。
キッチンに行き自作したティーポットに魔力を注ぐと《刻印魔導》で設定された魔導回路に魔力が通り設定されていた効果が自動的に発動し、熱々のお湯がティーポットを満たす。
《ルナミスヴァルツァー》や《アズリエル》《ウリエル》を作る過程で作られた試作品の一つだ。紅茶やコーヒーなどのドリンクを沢山飲む方なので、お湯を沸かす時間が無駄だと考え、作ってみたのだが上手くいき割と重宝している。
目覚めのコーヒーを飲み少しは起きてきた脳を眠らせないために制服に着替える。
「起きてるか?っと」
ハクアにメッセージを飛ばすとすぐさま「おはやう」と誤字が混じった返信ご届く。
ハクアも朝は、弱い様でその愛らしさに頬が緩むが、「いつもの席で待ってるぞ」と送り
寮の一階にある食堂へ向かう。
途中タツヤとヒビキの2人と合流する。
「おはよーツキトー」
「おはよーす」
「おう。一人で起きれたんだな?タツヤ」
「な訳ないでしょ?俺が起こしに行ってあげたにきまってんじゃん?」
「僕が起こしに行っただろうが!」
何気ない会話を交わしつつ食堂で朝食を選ぶ。
チーズサンドイッチとサラダをタッチパネルで選び、受け取るといつも座る人目につきにくい端っこの席を確保する。
俺の他にハクアはもちろんタツヤとヒビキも人混みは苦手なので必然的に端の方を選んでしまうのだ。
「おっハクアおはよう」
「あっハクアさんおはよう」
「おはよー」
「(ぺこり)」
ハクアがトレイを持ってやってくる。
まだまだ眠いのか半目で船をこいでいる。
ハクアの定位置である隣に座るとみんなで朝食をとり始める。
「体大丈夫だったか?」
「うん。どこも痛くないけどなんだか怠くて眠い」
多分怠いのと眠いのは寝起きだからだろうからハクアの方も大丈夫らしい。
「え?昨日二人で何してたの?」
タツヤがカレーを食べながら質問をする。
「そりゃ2人とも寝不足で体を労ると言ったらナニだよな?」
「え?ナニ?全然わかんない」
「タツヤわからなくていい。お前はいつまでもピュアでいてくれ。あとヒビキ余計なこと言わなくていいからな?」
「冗談だよジョークジョーク!」
「・・・」
顔を赤らめるハクアには気付かない様にしながらも昨日の事をヒビキ達に簡単に説明した。
タツヤは、その年に似合わず良くも悪くも子供ぽっい。ゴリゴリのスポーツマンの癖にそっちの事に関しては学校の保険体育程度の知識しか持たないピュアッピュアな人間なのだ。
告白された事も少なくはないが、そのたびに俺やヒビキに相談し、結局決めれないまま相手が諦めるというとても残念な結果になってしまっているのだ。
本人曰く、
「えーだって女子って怖いじゃん。付き合うとか良くわからないし」
という事らしい。
しかし、高校生にもなっても変わらなかったので逆に心配なのもある。
まぁ恋愛ドラマやその類の番組アニメが好きなので、さすがに大丈夫だとは思っいるが。
本当に大丈夫だよな?
「そういや中間試験まで一週間切ったけどお前ら大丈夫なの?」
大方2人でコンビを組むだろうと予測しているし、2人とも新人戦を見る限りでは他の生徒達よりも全然強いから大丈夫だろうとは思うが、俺たちがいるのはその中でもトップのSクラス。試験の内容がクラスごとに違うらしいので少し心配している。
「ヒビキと組めばもう余裕だよ!」
と元気に言い放つタツヤだが、ヒビキは申し訳なさそうに。
「あっ俺もう組む人決まってる」
「いや、だからタツヤだろ?」
「いや違う」
「は?」
「え?」
その時タツヤの時が止まり、ハクアがトーストを嚙る小気味よい音だけが流れた。




