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転生学園  作者: Kuroto
第一章
16/25

魔導学

 教室でディバイスを見ていたら程なくして全員が帰ってきて本格的に授業が始まった。


「今回の訓練はどうでしたか?それぞれが自分の課題を見つけられたと思います」


リリナは、教卓に立ち先生らしい事をしている。実際に教師なのだがこれで同い年なので今一教師というよりも学級委員が話し合いをしているみたいに見えるのは仕方がないだろう。


「とりあえず皆さんが今使える力についてしっかり理解して使いこなせるように頑張っていきましょうね」


「すいません1ついいですか?」


とザ学級委員長キャラことサキが手を上げる。


「はい、サキさん何でしょうか?」


「今さらなのですが私いえ私達は元の世界に戻れるのでしょうか?」


さすがと言うべきかお約束の展開になってきた。

しかしこういう異世界ものではだいたいの場合帰れないのがお約束である。


「はい、帰れますよ」


帰れるの?リリナの発言に全員がざわつく。


「しかし今すぐに帰ることは出来ません。最低でもここで6ヶ月間ここで生活をしてもらい五ヶ月後に対抗戦が終わったあとに帰りたいと報告すれば元の世界に帰ることはできますよ」


なるほど対抗戦が終われば帰るか帰らないか選べれるんだな。つまりそれまでは帰れないということだ。まぁ帰る気なんて無いですけどね。


「しかしその場合は皆さんが手に入れたスキルも今回の記憶も全て失ってから元の世界の元の時間に帰ることができます。つまり無かったことになるということです」


この事で他の人達も帰ることか出来るという安心感からかクラスの雰囲気が明るくなった。それもそうだろう。少し前まで普通に日常を送っていたのに、いきなり転生者と言われてこっちの世界に連れてこられたのだ。前の生活を簡単に諦めれる方が異常だろう。何せまだ子供なのだから。


タツヤとヒビキがどうするのか気になるがそれは彼ら次第だろう。


「他に質問は、ありませんか?無いようなら授業を始めますよ」


そうやって授業が始まった。

勉学は、得意な方じゃないが、好きな分野なら話は別だ。興味のあること好きなことに関しては人一倍、集中力、記憶力は優れていると思っている。


「まずは、魔導適正について確かめてみましょうか」


これまた興味をそられる単語に内心テンションがあがってしまうのはしょうがないだろう。ゲームなんかでも、職業やジョブといったものの適正診断がある場合があるのだがそれが結構好きだったりする。


「昔は貴重なスキルや魔導具を使っていましたが、今ではかなり改善されて簡略化され特別な方法が必要なくなりました。皆さんが手に持っているディバイスで行えます」


そんな便利機能があったのかとディバイスに目をやる。ガジェット等は見たり触ったり弄ったりとするのは好きな方なのだがこっちに来てからは、それ以外のことに目がいっていて詳しくディバイスについて調べていなかった。スマホなんかと一緒で通話とメールといった情報のやり取りしかできないもんだと思っていたからってのもあるのだが。


「では、皆さんディバイスに入っているアプリを起動させて各自行ってください。結果はまとめて私のディバイスに送信されますので」


「えっ…!」


声が出そうになるのを寸前で何とか堪える。

この世界に来てからの違和感街並みや飯に至るまでどこか異世界にいるはずなのに、なんだかむず痒い感じがしていた。その正体が今確信したのだ。

あまりにも似ているのだ、俺自身が住んでいた日本に。

魔法やスキルによって発展したはずの世界が科学技術で発展した世界と似た発展を果たして遂げるのだろうか?


(いや、今は考えるのはやめよう)


「どうしたの?」


隣にいたハクアが不思議そうに尋ねてくる。


タツヤやヒビキを含めたクラスメイト達も気にしてなさそうなので黙っておく事にする。


「なんでもないよ、それより早く魔導適正調べようぜ」


後でソルにでも聞いてみようと頭の片隅に置いておく。


思考の深みにはまりそうになるのをどうにか堪え目の前の事に意識を向ける。

ディバイスの魔導適正診察というアプリを立ち上げる。画面には薄暗い背景に紫色の生地に金色の装飾と刺繍が施された絨毯を敷いた台座に占いで使われるような水晶がありその中央には薄らと光が灯っている。


画面には『指先に魔力を込めながら水晶に触れて下さい』


「簡単ていうだけあるな」


早速診断しようと指先に魔力を集めようとすると。


「すいませーん魔力を込めるってどうやるんですか?」


タツヤの何気ない質問にドキッとしながらすぐに魔力を散らす。


(あっぶねぇ〜!)


普通は、扱ったことのない魔力をいきなり指先に込めろなんで言われてもできないのが当たり前なはずだ。

しかし、俺はユニークスキル【創造】により生み出したEXスキルである【五感超越】と【身体掌握】そして【万象操作】により自由自在に魔力を操ることができるようになっていた。


これによりスキル創作が楽になっているのだが、自分でもこの力は常軌を逸していると感じている為隠しておく事に決めたのだ。


「ああ、そうでしたね。皆さんは魔力を使った事が無かったんですね」


リリナはあははと笑いながら黒板に何かを描き始める。人型の簡易な絵を描き説明し始めた。


「魔力とは簡単に例えると身体中を巡る血液のようなものです。まぁ本来は全然異なるものですがイメージするなら一番わかりやすいでしょう」


確かにと思いながらリリナの話を聞く。魔力は体の中央ちょうど心臓のあたりから体を不規則に流れているまるで、地面に水を垂れ流しているような感じに流れている物だ。


「まずは体に流れる魔力を感じてそれを指先に集める感じでやってみてください。その時集めたい指先を誰かに摘んでもらったり噛んだりするとわかりやすいですよ」


一斉に魔力を操作しようと奮闘し始めるクラスメイト達、中には「はぁぁぁぁぁ!」確かリリーという名前の小柄の少女に至っては某サイヤ人みたいになってる人もいる。


「できそうか?ハクア」


ハクアも「ん〜!」と可愛く唸っている。その姿に癒される。


「ツキトはできたの?」


「ん?そりゃあもちろんできましたよ?」


「すごい・・・!ちょっと手伝って欲しい・・・な?」


「おう、いいぞ」


指先を摘もうとするがハクアは、顔を赤らめながらも白く細い指を向けてくる、口元にだ。もしや?と思いながらも一応確認してみる。


「えーっともしやハクアさん、指を・・・噛めと?」


「(コクコク)」


不意に唾を飲み込んでしまった。周りは魔力を操作しようと集中していて誰も見ていないのを確認すると、緊張しながらもハクアの人差し指を甘噛みした。

噛むというより咥えるようにしている状況にドキドキしながらも【万象操作】でハクアの魔力を操作する。

先程同意を得たので問題なく操作でき、まとまりなく流れていた魔力を血流のように規則正しく体を巡るように流してやる。

魔力の流れが安定したのを確認すると指から口を離す。操作するのに意識を集中していてハクアの方を見ていなかったので確認すると、顔は惚けており目はとろ〜んと艶かしくなっていた。


「だっだ大丈夫か!?」


「はぁ・・・はぁ、ん・・・だいしょうぶ」


お互いに落ち着いてからようやく適正診察を始める。魔力を集めた指先で水晶を長押しする。

すると、淡く灯っていた光が輝き始めその光は画面全体を白く染め上げた。

少しすると、画面は元の暗くなり水晶には、赤い火と青い水流、黄い稲妻、紫の雲、そして黒い霧の五色が渦を作るように巡っている。

下にスクロールすると結果と書かれたまとめのようなものが書いてあった。


魔導適正結果

・火属性・水属性・雷属性・闇属性・黒属性


分かるものとひとつだけわからないものがあるが思ったより適正が多くてよかった。


ハクアの方を見てみると、表情はあまり変わらないように見えるが、喜んでいるのが何となく分かるので結果は良かったんだろう。


「ツキトはどうだった?」


「ねぇーツキト〜どうやるの〜」


ヒビキとタツヤがやってきた。

ヒビキの方は流石の感の良さでできたようだが、タツヤはできなかったようだ。


「わかったからとりあえず指出せよ」


「はい」


差し出された指を容赦なくつまむ。


「痛い!痛い!痛い!」


「ぷふっ」


「あははは!」


「くっ!」


無事にタツヤも適正結果が出たようだ。

それからすぐに全員の結果がでたようで授業が進んだ。


「皆さんの結果は後で確認しますね。では、適正がわかったところで、まずは魔導基礎学について学んでいきましょう」


やっと魔法について学べると知識欲がかき立てられながら本格的な授業が始まった。


「……えーですから魔導とは空間中の魔力を集めて体内の魔力でイメージ道理に形態と性質を変化させ現象として世界のことわりを書き換える事全般のことを指すものです。ここまでで分からないことはありますか?」


「すみません……その……世界のことわりを書き換えると言われても具体的には、どういう事ですか?」


はじめはこの世界には存在し前の世界では存在しなかったもの、つまり魔法について学んでいた。

正しくは『魔導学』という学問の一種でその中に魔法や魔術、錬金術など様々な分野に別れているらしい。今はこの中でも基礎的なことについて学んでいた。


「そうですね……もっと分かりやすく言うと、マッチを使って火を起こすには、火薬のついたマッチ棒をヤスリで擦ることで火薬が発火して棒に火が着きますよね。そのプロセスを置き換えるんです。空間中の魔力を必要な量を集め、指先に火がある事をイメージします。この時、明確なイメージとして火の温度や大きさ等をイメージするとなお良いでしょう。そうして……《ファイヤ》」


呟いたと同時にパチンと指をならすとリリナの人差し指の上には約三センチ程の火が浮かんでいた。


「今やったのはこの世界でも一般的なもので、『生活魔術』という部類の魔術です。ごく簡単なもので、小学校低学年で学ぶ内容ですね」


魔導という不思議な力を学ぶことができるということに俺は、わくわくしながら授業を受けた。他の人も、なんとしても魔導を習得しようと積極的だ。


「と……では一時間目は終わりです。魔導基礎の授業は、月曜日から金曜まで午前授業として強制します。午後は各自学びたいところを選んで教室を選んでくださいね。では少し休憩です」


休み時間は、特にやることもないのでディバイスで武器に使えそうな鉱石の欄を見る。


その中で気になったのがこの中でも一番値段が高いのがオリハルコンで二番目に高いのがアダマンタイト鉱石だ。

正直どちらがどう優れているのか分からないのでとりあえず一個づつ商品券と交換する。


実際の値段で買うとオリハルコン鉱石が一千万ポイント

アダマンタイト鉱石が九百六十万ポイントするのでこの世界に来て商品券のありがたさが解った。


そうしているうちに、1日の授業も終わった。午後の選択授業は、選択制で受けるのも受けないのも自由らしい。

ヒビキに聞いてみたら

「んーとりあえず自分のスキルを極めたいから気が向いたらやるよ」

と言っていた。タツヤは「じゃ僕も」とヒビキに付いていった。


俺は、とりあえず『魔導学』についての知識が欲しかったので色々あるなかでも

魔法陣によって魔法を発動させる『魔方陣構築型魔法』と触媒に魔法を刻み込むことで効果を付与する『刻印魔導学』を受けるつもりだ。どちらも俺のユニークスキル【創造】にいかせると考えたからだ。


「えっと……ここかな」


地図を頼りに校舎を歩き『魔方陣構築型魔法』の授業を受けるために教室を探していた。

選択授業では、担当の教師がいる研究室の近くの教室でするらしい。

ちなみに、月曜日から火曜日の二日間が『魔方陣構築学』の授業で水曜日を挟んで木曜日から金曜日まで『刻印魔導学』の授業を受ける予定だ。今はとりあえずこのままでいくが気になる事があれば学ぶ内容を増やすのも良いだろう。


日本と曜日感覚が同じなのは、不思議に思ったが分かりやすいので良かったと思っている。こういうことは考えすぎるのは良くない。思考のノイズだ。


やっとの事で教室と研究室であろう場所にたどり着く。周りには人の気配がなく本当に使われているのかも不明だ。


「とりあえず入ってみるか」


教室ではなく、教師がいるであろう『魔方陣構築型魔法研究室』と書かれた扉を叩く。


「誰もいないのか?」


何度叩いても返事がなく扉に手をかけると鍵がかかっていないことが分かった。

いつまでもまっていても仕方がないので、「失礼しまーす」と扉を開ける。


「これは……すごいな」


扉を開けた先にあったのは、壁一面に並んだ本棚とそれでも足りないと言わんばかりに部屋を分断するかのようにそびえ立つ本棚の壁。部屋は窓さえも本棚で遮られているのか、天井に付けられたライトが昼間なのにも関わらず点いている。


作業台では白衣を着た人物が寝ていた。


「誰だ?人の研究室に無断で入ってくる奴は」


入ってきたのに気づいたのか、ガリガリと乱暴に頭をかきながら重そうに腰を上げたのは百八十センチほどの痩せた男だ。外見は三十代ほどだろうか、目の下にできた深い隈が目付きの悪さを引き立てている。


「えっと1のSのツキトです。選択授業で『魔方陣構築型魔法』の授業を受けたくて来ました。何度か扉を叩いたのですが返事が無かったので、勝手ながら入らせていただきました」


「へーわざわざ魔方陣を選んで来るとは、なかなか面白いなお前?」


「そっそうですか?」


「俺は、ソル・フラシスだ。一応『魔方陣構築型魔法』を教えてはいるが魔導に関して言えば何でも教えてやるよ」


「何でもですか?」


「ククっああ、魔導学に関して言えばこの学園で俺と同じレベルの教師はいねぇよ」


冗談のようで本気で言っているということが、伝わってくる。

多少不安ではあるが、多分大丈夫だろう。


「それじゃあ、例えば『刻印魔導学』とかも学びたいんですが」


「ほぉう?全く問題はないが、魔方陣と刻印ねぇ……クククっおい、おもしれぇじゃねぇか!気に入った!Sクラスだと言ったな?ならお前のユニークスキルについて、分かる範囲で良い詳しく聞かせろ!」


「えっと……何故ユニークスキルについて?」


質問の意図がわからずに聞き返してしまった。

『魔方陣構築型魔法』について学びに来たのに、何故関係の無いスキルの話になるのだろうか?


「あ?何故ってお前……」


返された質問に対して首をかしげた男は、キョトンとしながら答える。

そんなにおかしかっただろうか?


「自分の力に活かせるって思ったからわざわざ選んできたんだろ?」


息を飲むしかなかった。この短いやり取りで、俺の意図を読み取ったのだ。

最初に感じた不安はとっくに消えていて、この人から得られるであろうものに期待が膨らむ。


「さて時間は限られてる。さっさとしな」


「はい!」


好奇心をくすぐられて、自然と笑みを浮かべていた。この人とは似たような雰囲気を感じる。好奇心を押さえられない、そういうタイプの人種だ。


「【創造】か……なるほどな、確かにとんでもねースキルだなこりゃ」


「ただ創造力と明確なイメージがないと、成功しないし予想と違うものができたりするんですよ」


「んーその喋り方どうにかなんねーのか?」


「え?」


「上下間系とか俺はめんどくさくて嫌いなんだ。いいか?俺とツキト君は、今から対等だ分かったな?その方が効率的だ」


「ええっと……わかった」


「それじゃあ、早速……」


キーンコーンカーンコーン


チャイムが授業時間の終了が告げられる。


「もうそんな時間だったか。まぁ焦っても良いことわねぇしな。おいディバイスを出しな」


「ディバイスを?……はい」


ポケットからディバイスを取り出しソルに差し出す。


「一応、俺の連絡先を送っておく。後で日程とかを送るから目を通しておけよ」


「ああ。ありがとう」


「それと気になったことがあれば、いつでも連絡してこい。アドバイスぐらいはしてやる」


「本当か!?それは助かる!じゃあ今日は終わりか?」


「ああ。俺もこの後は予定があってな。まぁ、まだこれからいくらでも時間はある。焦る必要はねぇよ」


「それじゃ」とソルは研究室を出て行った。取り残された俺は特にやることもないので、教室に荷物をとりにもどって部屋に戻ろうとすると、ハクアが早足で向かってくる。


「ん?一緒に帰るか?」


「(こくこく)」


相変わらず人が居るところでは、一言もしゃべらないハクアだった。


部屋に戻ると部屋の中に四角い箱が置いてあり中には、二キロづつの鉱石が入っていた。


「それは?」


ハクアが興味しんしんに訪ねてくる。


「ああ、武器を創ってみようと思ってな♪」


ツキトは、無邪気な笑みを浮かべながら答えた。


学園長室にて。


「で?そろそろ俺を読んだ理由を聞いてもいいか?」


「まぁまぁそう急かすなって、最近暇そうにしてたくせに何か面白いことでもあったのか?」


学園長室には『魔方陣構築学』の担当教師であるソル・フランシスとこの学園の学園長であるグラフスタフ・オルベインの二人だけがいた。

ソルは、用意された紅茶には手をつけず早く帰りたそうにしている。

それをグラフスタフがなだめている感じだ。


「ああ、なかなか見所のある奴を見つけてな。ツキトっていう奴だ。リョウも知ってるんじゃないか?」


「ツキト?ああ、確か今回の新入生だったかな。君がそこまで評価するとはな、もしかして彼が三人の内の一人なのかもしれないな。それとその名前は捨てたって言ったろ?」


グラフスタフは、少なからずソルを批難する。

そんな態度にソルも悪いと思ってるのかバツの悪そうな顔をする。


「あーすまん。まだなれなくてな、一応ここには結界も張ってあるから許してくれ」


「くれぐれも他の人の前では止めてくれよ。特に生徒たちの前ではな?」


「わかってるよ。でだ、三人てのはいったいなんの事だ?」


話題を逸らすように、ソルは先ほどグラフスタフが呟いた事について聞く。


「ああ、言ってなかったな。今回召喚した中に二人あるいは三人も世界規模の変革まぁつまり、【超越者】足り得る素質を持つ子達がいるってわけだ」


ソルは言葉がでなかった。

これまで幾人もの転生者を見てきたが、彼らは自分が深層心理で求めた願いをユニークスキルとして発現させる。

そのなかには、とりわけ強力無比な能力を持つものもいたが、それでも全体から見ればほんの僅かだった。

それが一度にしかも三人も現れるのは前代未聞だったのだ。

すぐにソルの頭の中では、幾数もの可能性を考え始めていた。


(偶然か?それとも何かの予兆なのか?)


「でだ、私はしばらく留守にするよ」


グラフスタフが話始めたことで、一旦思考を切り替える。


「もしかして、外に行くのか?」


一見するとこの学園が存在するこの場所は、海に浮かぶ巨大な大陸に見える。

だが、真実はそうではない。

なぜなら、この星には大陸が存在しないからである。


いや、存在はするがそれはとても生物が住める環境ではないのだ。

神々の怨念や呪い等で汚染されており、それは陸だけにとどまらず海も空にも及んでいる。


そこに結界で島を覆うことで人類はなんとか生き延びてきたのだ。


「ああ……ここも大分安定してきたし、そろそろ次の仕事も始めなきゃならないしな」


「そうか、まぁここは俺に任せとけ。何かあったとしても何とかしてやるよどんな手を使ってもな」


「頼りにしているぞ賢神」


そういうとグラフスタフとソルは軽く乾杯をした後すっかりぬるくなってしまった紅茶を飲み干した。







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