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転生学園  作者: Kuroto
第一章
13/25

授業

「こんなんやってられっかよ……!」


荒い呼吸が肩を上下させ、流れる汗が顎から滴り落ちそれを乱暴に拭う。目の前には、2メートルはありそうな通常では考えられない大きさの狼が低く唸っており、ゆっくりと間合いを確めるように周りを歩いている。前足と後ろ足には鎌の刃のような形のブレードを付け口からは、炎をぶっ放ってくる。


そんな怪物とツキトは戦わされていた。


(こんなんだったら武器でも造っとけば良かった)


対してこちらと来たら素手と来た。リーチでかなり負けているのにさらにその図体からは考えられないほど素早っこい。


「グルルル……ガァァ!」


「おいおい!まじでなんでもありかよ!?」


狼は口をありえないぐらい開けるとそこに火炎ができ、徐々に大きくなりついには直径1メートル位の火の球が出来上がった。その炎の塊を躊躇なくいっそ無慈悲にツキトに向けて放つ。


「はっはは……」


さかのぼること約1時間前。


「Sクラスを担当する事になりました咲希ノ《さきの》リリナです」


そう言って教卓に現れたのは、燃えるような赤い髪の毛を腰まで伸ばし、顔は整っているがまだ幼さが残るからか見た目が18才位のとても先生と思えない女性だった。


「何か質問でもありますか?」


「はーい」


リリナが問いかけると、真っ先に手を上げたのは金髪に青色の目の男だ。

絵に描いたような整った顔は、まるでアニメの勇者のようであり、容姿だけでいえばまるで主人公のようだ。ただ、異世界転生と言う現象が現実に起きているだけあって笑えない。


「リリナさんは、何歳ですか?あまり僕たちと変わらない様に見えますが」


馬鹿?とつい思ってしまう様な直球な質問に思えたが、確かに気になることではある。この男以外にもこのクラスの生徒には見に覚えの無い人がちらほらいる。

それもそうだろう。何せ俺を含めハクア、タツヤ、ヒビキ、サキ、リリィの名前の分かっている6人以外にも名前の知らない初対面の6人がいる。

Sクラスの人数は12人。入れ替わりがあるらしいがしばらくはこのメンバーだろう。


個人的には他のクラスメイトのスキルなんかも気になるところだ。


そして、女性に対してはタブーな質問にもリリナは嫌な表情すら浮かべずに淡々と答える。


「はいそうですよ」


あらびっくり何と同い年だそうです。16歳でしかも教師どれだけ頭が良いのだろうか。


「私は、皆さんとは違いこの世界の産まれです。今では、ここの教師を任されています。ですが産まれなどの違いは関係のないことなので皆さんも気にしないでくださいね」


その後好きな食べ物等まあテンプレな質問が始まる。まぁ主に金髪の勇者君(仮)とリリィの二人が殆ど質問していて他の人達はただ聞いているだけだったが。


その間ハクアは興味がないのか目が半目になりうとうとしている。


席は自由なので一番窓際で後ろの席にツキトその隣がハクアだ。

もとの世界では、学校の授業はもちろんのこと集会や話し合いは興味がなく、

暇なので寝ていた記憶しかない。本当なら参加しないといけないが、自分の意見が無視されるか聞いてもらえないので諦めている。


適当に話を聞いていたら質問が終わり授業が始まる。


「ではまず、皆さんの実力を知るためにとりあえず実戦をしてもらいます。武器等は、持参しても構いませんが死なないよう頑張ってくださいね」


「え……」


「「死ぬの!?」」


衝撃的な発言に唖然とするツキト達をリリナは眩しい程の笑顔で答えるのだった。


それから各実戦訓練場に移動することになった。全部で二十個程度あるらしく、この学園の凄さが増していく。


訓練所の大きさは大きな体育館位で、バスケットコート四つ分程の広さで地面は

コンクリートのように硬く動きやすくなっている。


「では、ツキトさん入ったら直ぐに始まるので気お付けてくださいね」


最初の授業にしては、実戦形式なんてどんなスパルタな授業だよと心のなかで愚痴をこぼしつつも言われた通りに準備をする。


「死ぬかもしれない授業って大丈夫なのか……」


不安しかないが緊張しても仕方がないと深呼吸をして落ち着かせる。


このころは、あの巨大狼と戦わされるなんて思っても見なかった。







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