霊使いティーチャー怨川
「おい!聞いたか!」
ここはとある専門学校、学校に着くなり顔が不細工すぎて直視することをためらってしまうことで有名な「熊沢 悠斗」に話しかけられた。
「お前、もう俺に関わるなって言ったよな?」
顔があまりにもキモ過ぎてコンビニで買い物しようとして断られた僕「星 有為」は学校で唯一話しかけてくれる彼にいつも冷たい態度を取る。
いつものお約束ともとれるそんなやり取り、いつまでもこんな日常が続くと思ってた・・・
そう、この時までは・・・
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「で?何があるんだよ?」
「今日、この学校に新しい先生がくるんだけど、その先生見えるらしいんだよ。」
見える?霊とか言うオチだったらつまらないにもほどがあるぞこいつ・・・
「・・・何が見えるんだ?」
「霊だよ!霊!」
・・・やっぱりか。こいつは聞いたことを何でも信じる、こいつはよく言えば不細工、悪く言えば馬鹿だからな・・・
「まあ、とりあえず教室行こうぜ!遅刻したくはないし。」
「そうだな!今日の最初の授業はその新しい先生が補助に付くらしいから楽しみだぜ!」
何でこいつはそんなことに詳しいのか?何でこいつはこんなに顔が不細工なのか?そんなことを考えていたら気づけば僕たちは教室に着いていた
「もう先生着くから、席座ってるわー」
「おう!後でな!」
席に着き少しすると俺たちの担任「上沢 達也」と一緒に見慣れないとてもこの場にふさわしくないスキーウェア姿にサングラスという変な奴が入ってきた。これがあいつの言ってた、新しい先生か・・・?
「みんなー、今日は新しい先生を紹介するぞー」
教室に達也の間の抜けた声が広がると教室にいた人間は自然と前を向く。やはりあのスキーウェア姿の男が気になるのだろう・・・
「とりあえず、最初はこの授業の補助についてくれる新しい先生を紹介使用と思います。・・・怨川先生、お願いします」
達也に促され怨川と呼ばれた男は口を開く
「ええ、今日からこの授業の補助につかせてもらう「怨川 和久」といいます。よろしく!」
あっさりとした自己紹介だったので、少し補足させようということなのか達也が続けて言う。
「ええ、みんな、何か質問とかあるかー?」
すると一人だけすごい勢いで手を上げる生徒がいた。熊沢だ・・・!だが、不細工すぎるせいで彼を直視できている人間が僕しかいないためか彼が手を上げていることに気づいているのは先生を含めても、やはり僕しかいない・・・。結局誰も質問をせずに終わる・・・そう思ったころに、一人意を決したような表情で手を上げる。
「それじゃあ、伊具字!」
手を上げたのは「伊具字 広志」このクラスでも一目おかれる存在だった。
「怨川先生は、霊が見えるって本当ですか?」
ついに、聞いた・・・!聞いたところで別に見えようが見えまいがどうでもいいというのがみんなの本音だろうが、それでも伊具持さんはあえて聞いた・・・!やっぱりあの人変だ!
「見えるぞ。それどころか戦える。俺はこの学校に来る前はトラックに乗りながら霊と戦っていた。」
こいつも変だ。意味が分からない、霊が見えるならまだしも霊と戦っていた、それもトラックに乗りながら?頭がおかしいとしか思えない。
「ひとつ、昔話をしよう・・・あれはかなり昔のことだが俺のばあさんが死んでな、それで俺の親や親戚が遺産をめぐって互いをののしりあったり・・・まあ、醜い争いがあったんだ・・・」
怨川は一拍おき再び話し始める・・・
「その時!俺に何かが降りたんだ!そんな争いを見ようが、ばあさんが死のうが、どうでもいいと思っていた俺に!不意に涙がツイーっと流れたとこまでは覚えているんだがその後みんなにやめろ!私の遺産のために争うなって!言ってたらしいんだよ・・・それからだ・・・俺が霊能力に目覚めたのは。」
とんでもねえやつだ。やばすぎる。早くこの学校を卒業したくなった。
「お前!そこの不細工!」
おいおい、こいつもしかして熊沢を視界に入れることができるのか?呼ばれてるぞ熊沢!とニヤニヤしていると・・・
「何、ニヤニヤしてんだよこの不細工が!お前だよ、お前!」
どうやら呼ばれていたのは熊沢ではなく僕だったらしい・・・
「はっはい!何ですか?」
「お前、不細工だけどなかなか霊能力の才能あるぞ!できれば一緒にいたくは無いがその才能眠らせておくにはもったいなさ過ぎる!今日の夜一緒に霊退治に行くぞ!」
何を言っているんだこいつは?だが気弱な僕が断れるはずも無く結局行くことになり、その時間の授業は終わってしまった・・・
「いいなー有為君。」
休み時間になり俺に近寄ってきた熊沢が言う。
「怨川先生と霊退治とか面白そう!」
殺すぞ
「どこがだよ・・・」
「僕も行ってもいいかな?怨川先生に聞いて見てよ。」
「まあ、一人で行くよりかはお前がいたほうがましか・・・怨川先生には言っておくからちゃんと来いよ!」
熊沢のことはあまり好きではなかったがそれでも自分の唯一の友達と呼べる存在。結局は一緒にいたいだけなのかもしれない・・・
「というか今暇だし、今言ってくるわ!職員室に行けば多分いるだろ!」
熊沢は不細工な顔をうれしそうに歪ませながら僕を見送る。そんな表情を見るのが気持ち悪いのか、恥ずかしいのか自分でも分からず僕は駆け足で職員室に向かった・・・
「怨川先生!」
職員室に着いた僕は怨川先生に声をかける。
「どうした?やっぱり行きたくないなんて言うんじゃないよな?」
行かなくていいなら行きたくないけどとても断れる雰囲気じゃなさそうだ・・・
「いえ、一緒に友達も連れて行っていいか聞こうと思って。」
「・・・友達?」
「そうです!熊沢って奴なんですけど・・・」
そういうと怨川はしばらく目を閉じ何かを決めたかの表情をした後言った。
「・・・別にかまわないが、呼ぶのはそいつだけにしろ。」
「はい!ありがとうございます!」
僕は礼を伝えた後職員室を去り、熊沢に報告した。熊沢はうれしそうに笑い、僕はその不細工な顔を見て笑う。そうして学校も終わり時間が経ち夜になった・・・
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「・・・来たか。」
「怨川先生!霊退治って何やるんですか?後、こいつが僕の友達の熊沢です!不細工すぎて僕しか直視できてないんですけどね!いまだにこいつ僕以外には名前も覚えられてないんですよ!」
怨川先生は僕の話を聞き思いつめたような表情で口を開く・・・
「星、そいつは霊だ」
それを聞いた瞬間、僕は何がなんだか分からなくなった
「おっおい!うそだよな!熊沢!」
「本当だよ」
熊沢はここに来る前から決めていたのだろう、自分が霊だといわれて驚く様子も無く、いつに無く真剣な表情だ
「お前が成仏させるんだ、星」
「俺がお前に霊能力の才能があるといったのは、お前だけがそいつを見ることができていたからだ。おかしいと思わなかったのか?お前とそいつはどっちも同じレベルの不細工だ、だがお前が認識されてそいつが認識されない、そんなわけが無い!そいつは他の人間からしたら最初から存在しないんだよ!見えないんだ!」
どこかで引っかかっていた、だけど熊沢が霊だと言われ振り返ると思い当たる節はたくさんある・・・
「君に祓われるなら本望さ!僕が成仏できずに彷徨っているとき顔が不細工で友達のいない君を見て僕と同じだ、僕は自殺してしまったけど同じ境遇の君まで自殺してしまわないようにって・・・そう思って、僕は霊だから気づかれない、それでも何かは伝わるかもしれない!そう思って話しかけたんだ。でも君は僕に気がついてくれた。」
あの時、専門学校に進学して今度こそ友達を作ろう、そう考えて、でも結局できなくて。落ち込んでどうしようもなくなったときに話しかけてきたのがお前だったんだ。
「有為君!それからは楽しかった!僕は君にとっての始めての友達かもしれない!でも君は僕にとっても始めての友達だったんだ!でももう終わりだ!僕は死人、いつまでもここにい続けるわけには行かない!だから僕が怨川先生を呼んだんだ!」
熊沢君を僕が成仏させる。友達がいなくなる。でもやらなくちゃいけない!熊沢君がここまで僕を考えてくれてる、なら僕はそれに答えなくちゃいけない!
「怨川先生!」
僕が怨川先生を呼びかけると怨川先生は何か用意していたものをを差し出す。
「呪札だ。これを熊沢に貼れば成仏する」
「ありがとうございます。熊沢君!さよならだ!今まで言えなかったけど君のおかげで毎日が楽しかった!」
これで終わる。熊沢君とはもう会えなくなってしまうけど、それでも思い出は消えない。
「有為君!今の君なら大丈夫だ!僕がいなくなってもきっと大切な友達ができるはずだ!今までありがとう!」
「さようなら・・・熊沢君・・・」
有為が熊沢に呪札を貼ると熊沢はもだえ苦しみながらこの世を去って行った・・・
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「僕とよければ友達になってくれませんか?」
「やだよ、お前、顔不細工だし、何も無いとこに話しかけててきもいし。」
~fin~